松島寛直氏×峨家望対談 DXを加速させる「あり方の再構築」 ~次世代型押印システムIohanが実現するアナログとデジタルの共生論~

松島寛直氏×峨家望対談 DXを加速させる「あり方の再構築」 ~次世代型押印システムIohanが実現するアナログとデジタルの共生論~

松島寛直氏×峨家望対談
DXを加速させる「あり方の再構築」~次世代型押印システムIohanが実現するアナログとデジタルの共生論~

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各企業はリモートワークやワーケーションの導入が活発化し、在宅勤務下でもこれまで通りの業務を進めるために、テレビ会議のビデオツール、ビジネスチャットツール、クラウドサービス等あらゆるデジタルツールが必要となりました。

さらに今後のアフターコロナ、Withコロナへの備えとしてアナログだった業務フローの見直しとデジタル化が各所で必要とされています。特に、2020年5月からはデジタル上で契約を完結することができる電子契約サービスや電子印鑑サービスの利用者が急増しています。

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今回、ハンコとブロックチェーンが融合した次世代の押印記録システムIohanを共同開発した株式会社松島清光堂の代表取締役社長松島氏と、株式会社CryptoPieブロックチェーンコンサルティング事業部部長峨家から、次世代の電子押印システムIohanの開発についてのストーリーや現在の行政手続きにおける押印の見直し、デジタルトランスフォーメーション推奨の社会的な流れについてお話をお伺いします。

 

印章業界における新型コロナウイルスの影響について

現在新型コロナウイルスの感染拡大による影響が各所で顕在化しています。影響範囲は飲食店や宿泊施設などのサービス業だけではなく、2020年11月13日の日本経済新聞では、印刷・情報用紙の需要が大幅に減少したことにより製紙企業大手の5社が営業減益で赤字であることを明らかにしており、回復が見込めないとされている印刷用紙からの撤退を検討している製紙企業もありました。印章業界においては、コロナ禍による影響はどのようなご状況でしょうか。また、アフターコロナにおける今後についてはどのようにご検討されておりますでしょうか。

 

松島氏


印章業界においては、実はコロナ禍よりも前の2018年初頭にデジタルガバメント実行計画(後のデジタル手続法)を政府が発表した時点から暗雲が立ち込めていました。

理由としては、デジタルガバメント実行計画の中に、「行政手続きにおける本人確認の押印の見直し」、「法人設立における印鑑届け出の義務の廃止」、「民間同士の商習慣で行われる押印と書面による取引について、政府が書面によらないデジタル取引を促す」という大きな押印に関する3つの見直し案が含まれていたことにあります。

さらに現在ではコロナ禍において、テレワークの阻害要因がハンコであったり、菅政権が誕生し、デジタル庁の新設や、河野行政改革担当大臣の不要な行政手続きにおける押印の廃止という、これまでに無い危機を業界は迎えております。

アフターコロナについては、各店舗、会社によって考えられているとは思いますが、ハンコはこれまで通りの「意思の担保」「本人証明」という役割は変わらないと思います。

ただ、これまでは紙であることに対して押印が存在していましたが、これからデジタル化の中では、紙以外に、押印のやり方の有効性がどのように発揮できるかということを考えていかなければいけないと思っております。

行政手続きにおける押印の見直しについて

7月には政府が全自治体に押印の規制に対する見直しを促す通知を出し、9月頃からは河野太郎行政改革・規制改革相がデジタル化を推進する一環として、行政手続きにおいて押印の必要性を検討するよう各府省庁に要請しています。さらに、10月の規制改革推進会議では、菅首相も同様に押印廃止など行政手続きの抜本的な見直しを全省庁に指示しています。行政手続きのオンライン化による押印の必要性が議論されていますが、今の状況をお二人はどのように捉えていますでしょうか。

 

峨家


前向きに捉えています。
現在霞ヶ関深夜閉庁要求運動をはじめとした、官僚の方々も内包した働き方改革が推進される流れの中で、無駄な業務の削減というものをどんどん進めるべきだと考えていますし、これは押印文化も同様だと考えています。ただ、私はこれを押印そのものというよりは、体質の問題と捉えています。

年々、様々な法案によって業務内容や手続きが複雑化する中で、形骸化した押印フローをそのまま継続していく、この体質に問題があると思います。

今このような体質の改善が急がれており、その一つが今回の行政手続きのオンライン化だと思います。他の様々なフローと同様に、必要な押印、不必要な押印を切り分けて業務改善を行っていくことが国民の利益に寄与するのではないかと考えられます。

また、官庁の場合にはデジタル化に向けて発生する費用は国が出しますから導入ハードルは業務フローの再編だけですし、これも国として一律で行っていくわけなので、問題にならないと思います。

一方でこれは民間にはなかなか通りにくい意見であることも否めません。
現在の業務フローを電子化するために、契約や受発注においては、有償の電子契約サービスの導入や、ランニングコスト。保管では電子帳簿保存法などに代表されるような法律に準拠した保管設備の用意や維持、一連の業務フローを電子化に即した再編を行わなければなりません。また、電子契約サービスが現在乱立する中で、取引先に応じた保管や業務フローを全て整えなければなりません。この辺り一律で全て電子化というのは現実的ではなく、行政の押印廃止と民間の押印廃止は分けて考える必要があるというのが私の意見です。

 

松島氏


業界内でも、行政手続きにおける必要のない押印を見直すということは反対はしておりません。

例えば役所に行き、サインを行う書類に印がある場合、ハンコを忘れてしまうと役所では受け取ってもらえません。そのため、近くの文房具店で既製品の認印を買い、押すということはあり得ることですが、本人証明ということにおいては、あまり意味のない行為であると考えています。

そのため、形式だけの三文判で済むような書類にそもそも押印が必須なのか疑問を持っており、公益社団法人全日本印章業協会も同様の見解を示しています。

便利な世の中に変革する中で、決してハンコを全てに適応して欲しいとは思っていませんが、峨家部長が仰っていた通り、行政改革で問題となっているのは「業務フロー」のはずですが、昨今では「ハンコを無くすこと」が全面に押し出されています。

実際に、河野行政改革担当大臣の発言において、すべての認印や銀行印、実印があたかも無くなってしまうような印象に捉えられるような言い回しがされており、このことによる風評被害は実際に起こっています。

というのも、世間では「どうせハンコなくなるから、高いのではなく、安いので良い」という考えからか、高いものが売れにくくなっているという話しが耳に入って来ています。
業界内では、一業態潰しのように受け止めている人は多くなっています。

Iohanの誕生について

昨今の押印の必要性や廃止などの見直し対する、議論が白熱しているため、第三の選択肢として存在感を放ち、唯一無二の存在として注目されている「Iohan」は、ただデジタル化するだけではなく、アナログだからこその歴史的背景や文化の良さをデジタルの最新技術で後押しし、一つ上の次元に昇華させています。
この「Iohan」の根幹となる印章とブロックチェーンの組み合わせの発想は、いつ頃から考えられていたのでしょうか。

 

峨家


きっかけは2019年3月12日のYahoo!ニュースです。
「2018年7月に策定された『デジタル・ガバメント実行計画』をもとに国会にデジタル手続き法案が提出される予定だったが、印章業界団体の反発で見送りになった。」という内容でした。その内容ももちろん興味を惹かれましたが、それよりもコメント欄の投稿が気になりました。みなさんものすごく攻撃的なんですね。

それで興味を持ちまして、どうしてこんなに攻撃されていて、それに対してどうしてこんなに反発しているんだろうと。

調べてみると、印章業界というのは卸や小売合わせて10万人くらいの雇用を支えていて、年間1700億円の売上高をほこる業界でした。

1700億円を支えるには、素材となる木材や石などを供給する業者さん、物流業者さんやイベント業者さん、広告系の業者さんECサイトなどを構築する業者さんなどが必要で、経済効果としてはかなりのものであることが予想されますし、それは確かにそうそうなくなるわけにはいかないなと思いました。

さらに深掘りしてみると、どうやら印鑑そのものについても議論の的になっているようで、印鑑が持つ効力としてあげられる、本人性の担保、耐改ざん性、意思の表明証拠能力がある一方で、盗難された際の観点や、押印のための移動、ペーパレスとの相違などが批判の的になっていました。

その代替案として挙げられるデジタル化プロダクトですが、場所にとらわれない生産性の向上や、印紙税の節約、ペーパレス推進といった効力がある一方で、先ほど挙げた導入ハードルやビジネスの断絶、税務管理の煩雑化などの課題もあることがわかりました。
また、この二つをよくよく比較してみると、目指している方向というのは別に相反していないことも分かりました。

そのため、それぞれが持つ良さを活かし、且つ足りない部分を補うことができれば、多くの人に喜んでいただけるのではないかと思いました。
要はみなさん便利にしたいわけですよね。

なので、この二つを弊社の得意分野であるブロックチェーンで接続するアイディアが生まれました。
ただ接続するだけではなく、ブロックチェーンが持つタイムスタンプや耐改ざん性などで補助するとともに、スマートフォンなどの生体認証と合わせることで、セキュリティーもプラスすることができます。これはプロダクトになるなと思いました。

それに加えて私の想いとして、ふたつ。
まず、「ビジネスを犠牲にさせない」という想い。
電子だろうがアナログだろうがビジネスのためにどちらかの選択を迫るのではなく、どちらでも良いからビジネスを犠牲にさせるべきではないという想いです。

次に、「ものづくりを守りたい」という思い。
日本は伝統的なものづくりで産業を拡大してきた国です。
世の中を便利にすることは、とても大切なことですが、別に排除しなくても便利にできるのであれば、手から、指先から生み出される技術の継承というものを大切にしたいと弊社は考えています。

 

松島清光堂にて手彫りの様子
(松島清光堂にて実際の手彫りを見学させていただきました。)

重要なのはできる限り世の中を便利にし、技術発展を支えることであって、デジタルを最優先することでもアナログを切り捨てることではないからです。
そういうわけでIohanのアイディアは生まれました。

ブロックチェーンはあまり親しみ深い技術とは言えないかと思いますが、初めて印章とブロックチェーンを融合して開発された「Iohan」を知った時はどのような印象を持ちましたでしょうか。

松島氏


当社は、大正時代から印鑑登録制度を支えるために、印鑑の製造や販売を行ってきました。今回のコロナ禍におけるハンコ弊害議論については、何かいい案は無いかと考えていました。

以前より様々なテクノロジー保有企業の方々がハンコの電子化についての提案を持ってきてくださっていて、中には日本を代表するような大手企業もあったのですが、そもそも印章そのものではなくデジタルだけでいいのでは無いかという観点が常にあり、しっくりきていませんでした。

私たちはハンコ屋なので、同じものは作らず、唯一無二であることを最重要として、工程に手仕上げや手彫りをして人の手によって二つとないものを作り、セキュリティ、真正性の担保を行っています。この点については譲れないところでもあります。

しかし、印影を使い、真正性や本人性を証明することは、厳しい段階にきていると感じています。

公開鍵や暗号鍵の組み合わせや、IDとパスワードの組み合わせの存在と比べると、印影で本人性の証明をすることは、遅れを取っているという印象がありました。

そんなことを考えている時に、峨家部長と話す機会がありIohanの提案を受けました。

Iohanは、「印影で真正性や本人性を見極めるものではなく、押印行為に関連する時間や場所等を記録することで押印事実を証明するもの」でした。

正直、衝撃的で、「そういうことか!」と目からうろこでした。

当時峨家部長が、モノづくりや伝統を大変大切に思ってくれており、「ハンコを何とか残す方法はないかと考えているんです」と言ってくれた時に、ただのITベンチャーではないのかなと思い、一緒にできるのかなという風に思いました。

業界内ではIohanに関して異を唱える人もいるかも知れません。
ですが、Iohanの提案は、ハンコと押印自体は従来のアナログな手段のままは残すことができるため、今ではこれしかないのではないか、とも思っています。

現状のデジタルトランスフォーメーションについて

最後に、今日の日本の政府、行政をはじめとしてあらゆる手続きのデジタルトランスフォーメーション化が推奨されており、各企業も事業のデジタルトランスフォーメーション化を模索しています。
今後日本企業がデジタルトランスフォーメーションを検討する上で必要なことや、お二人が考えるデジタルトランスフォーメーションの在り方について教えてください。

 

峨家


私は、デジタル庁による様々な改革が行われる際の、「デジタルという考え方」がミソであると考えています。

2018年にデジタルトランスフォーメーションの推進をするためのガイドラインで、経済産業省が定義しているデジタルトランスフォーメーションを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

「顧客や社会のニーズを基に」というところは非常に重要であると言えます。

これは別に行政に限った話ではありませんが、現状デジタル化を急ぐあまりにこの「顧客や社会のニーズを基に」の意識が弱くなっている印象です。どうしても技術先行のプロダクトアウト型に傾いているため、DXというよりは、デジタル化で足踏みしている印象です。

 

松島氏


まさにそうですよね。DXの意味とは、ただアナログのものをデジタル化するだけなのか、本当のDXとは何かという話しをきちんと整理する必要があると思います。

峨家


そもそも、「デジタル化」とは何かというと、「アナログをデジタルに変換すること」です。例えば、紙の本がネット上で読めるだけ、等は確かにデジタル化ですが、新しい価値を創出しているかどうかというとそうではありません。

松島氏


峨家部長がおっしゃる通り、デジタル化をしたその先が本当に便利になっているかという観点で見ることが重要で、今回のハンコも、「ハンコをただ無くすだけ」をデジタル化とは言えません。DXと言えど曖昧なところが多い印象です。

峨家


アナログの延長線上でデジタル化することをDXと捉え始めている風潮が強いがために、単純に印鑑を全部デジタルにしましょうなど方法論が先にきてしまって、プロダクトアウト型の形となってしまい、ニーズを拾ってアイディアを育てていくマーケットインの考え方が失われてしまっているわけです。

本当のDX化とは、アナログを使う人、デジタルを使う人双方が便利になる方法をテクノロジーによって見つけ出すことだと思います。

ただのデジタル化だけでは、必要に迫られてアナログ業務を行っている人が今のデジタル化によって取り残されてしまうことについてはどうするのか、という問題が発生します。
今後改革を進めるにあたっては、このような方向性の見直しが必要になると考えています。

株式会社松島清光堂の代表取締役社長松島氏と株式会社CryptoPieブロックチェーンコンサルティング事業部峨家

株式会社 松島清光堂 代表取締役社長 松島 寛直

所在地:東京都千代田区神田小川町3-10-2(新駿河台ビルヂング)
創業98年の老舗印章店。大正11年3月に千代田区神田司町に松島二郎個人商店として発足し、取引先企業は1000社以上。オフィス用ゴム印類、実印等の印章類から動物をモチーフにしたハンコやペットタグや趣味印、表札・看板類等、品目を幅広く取り扱う。

https://www.m-seikodo.co.jp/

 

株式会社CryptoPie ブロックチェーンコンサルティング事業部 部長 峨家 望

東京藝術大学大学院修了後、教育・美術分野における新規事業開発や組織運営、メーカーでの新商品開発でキャリアを築き、2016年よりブロックチェーン産業参入。国内外20を超えるブロックチェーンプロジェクトにビジネスビルドやホワイトペーパー設計、アドバイザー業務などで携わり、ブロックチェーンプロジェクト評価プラットフォームにおいて170を超えるプロジェクトの監査を担当。
https://blockchain-biz-consulting.com/

 

Iohanについて詳しくは、こちらからご確認いただけます。

株式会社CryptoPieはブロックチェーンと印鑑を融合した特許技術で、新しいプロダクトを開発

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