慢性的な人手不足が続く医療業界では、業務の効率化が課題となっています。
医療現場におけるさまざまな問題の解決策の一つとして期待されているのがAIの活用です。AIを活用すれば、雑務や二度手間、手作業などが削減され、医師の負担軽減や医療スタッフの離職率低下などが実現できる可能性があります。
今回は、医療現場におけるAI活用の最新事例をまとめました。
この記事を読めば、医療現場が抱える課題をAIがどう解決するのかがイメージできるようになります。
株式会社リッカ
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政府が医師の診療を支援する医療用の国産生成AIを開発
医師不足が深刻化する日本では、膨大な事務負担を軽減することや、重要な所見の見落しを防ぐことが課題となっています。
そこで期待されるのがAIの活用ですが、海外製のAIは日本の医療実態を反映しにくく、個人情報の流出も懸念されます。また、事実に基づかない回答をAIが作成するハルシネーションも、間違いが絶対に許されない医療現場では大きな問題となります。
そこで政府は、医師の診察を支援する医療用の国産生成AIの開発に着手しました。国内の情報元から利用許諾を得た医療論文や画像データなどを国産生成AIに学習させ、重要所見の見落とし防止や事務作業の軽減を支援します。また、ハルシネーションの仕組みや対策も研究します。
学習規模を示すパラメーターは1720億程度となり、医療用の生成AIとしては世界最大規模となります。なお、個人情報や技術情報の流出を避けるため、医療用の国産生成AIのデータセンターは国内に置かれます。
参考:https://www.yomiuri.co.jp/national/20250110-OYT1T50183
東京大病院が30秒の動画撮影で糖尿病や高血圧を高精度に判定するAIシステムを開発中
東京大学医学部附属病院の内田亮子特任研究員のチームでは、顔や手の映像データから糖尿病の兆候や高血圧の有無を検出するAIシステムを開発しています。
わずか30秒の動画を撮影するだけで、顔と手の血流の変化から血管のダメージを推定し、糖尿病の兆候や高血圧の有無を検出します。患者ら約200人を対象にした臨床研究では、糖尿病を約75%、高血圧は約90%という高精度で判定できることがわかっています。
こうしたAIシステムが進化すれば、毎朝の歯磨きや化粧のついでに健康チェックができ、異変の早期発見が期待できます。
参考:https://www.yomiuri.co.jp/science/20250104-OYT1T50009
AIによる高精度なシフト自動作成システムが医療・介護DXを支援
医療や介護の現場では、人手不足によってシフトを作ることが難しくなっています。曜日ごとに必要な職員数や職種、チーム体制、職員の休暇希望などの多岐にわたる条件を考慮する必要があるため、シフトを作成するために膨大な時間が必要となっています。また、作成されたシフトのチェックにも手間がかかる上、ヒューマンエラーのリスクも高まるため、貴重な人的リソースをシフト作成のために消耗している実態があります。
そこで株式会社プラスアルファ・コンサルティングでは、AIによる高精度なシフト自動作成システムを開発しました。これまでシフトの作成やチェックには複雑な条件を考慮する必要があるため膨大な時間を要していましたが、AIを搭載したシフト自動作成機能により、月間シフト表を最短1分で作成できます。
作成したシフトは変更や修正が容易にできるので、シフト作成の作業時間を大幅に削減できます。また、作成したシフトの良し悪しを自動的に診断して数値化できるので、手作業でのシフト作成時には見えなかった改善点を発見でき、より良いシフトが組めるようにもなります。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000191.000023180.html
内視鏡の画像診断支援AIが「2024年日経優秀製品・サービス賞 スタートアップ部門賞」を受賞
内視鏡検査では、胃がんを早期に発見できるというメリットがあります。しかし、胃炎に似た胃がんは専門医でも見逃してしまう可能性があるほど診断が難しいという課題もあります。
そこで株式会社AIメディカルサービスでは、「内視鏡画像診断支援ソフトウェア gastroAI-model G」を開発し、医師とAIがともに内視鏡検査を行うことで、病気の見逃しや医師の負担を減らす研究を行っています。このシステムは、「2024年日経優秀製品・サービス賞 スタートアップ部門賞」を受賞し、早期がんの発見に寄与する技術であることが評価されました。
今後は、さらにAIの性能を向上することによって、がんの見逃し低減や内視鏡検査の医療技術等の格差の是正に貢献していく予定です。また、診断対象となる器官の拡大に向けた研究開発も加速していく予定となっています。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000049025.html
AI搭載感染症検査機器が新型コロナウイルス検出機能を薬事承認申請
アイリス株式会社が開発したAI搭載感染症検査機器「nodoca」は、インフルエンザウイルス感染症に特徴的な咽頭所見や症状等を検出できる機器です。咽頭(のど)の画像と問診情報等をAIが解析することで、インフルエンザの診断をスムーズに行い、患者と医療従事者の双方の負担を軽減できます。
このたび「nodoca」に搭載され、薬事承認申請された新AI機能は、新型コロナウイルスの検出を実現するものです。実際の医療現場で利用されている「nodoca」によって新型コロナウイルスに関する咽頭画像と臨床に関するデータを収集し、製品化に向けて研究開発を行ってきました。
「nodoca」に新型コロナウイルスの検出機能が搭載されることで、医師によるインフルエンザと新型コロナウイルスの診断がスムーズになり、医療現場のさらなる円滑化や効率化が図られます。また、限りある医療資源を効率的に活用できるようになることで、持続可能な医療経済の実現を目指せます。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000078.000035813.html
AI カルテ作成支援サービスで医療現場の効率化を実現
限りある時間の中、できるだけ多くの患者を診察しなければならない医師にとって、手書きのカルテ作成はとても負担が大きいものでした。手書きする時間が診察時間を圧迫するだけでなく、情報の共有や活用にも大きな弊害があります。
こうした課題を解決するために電子カルテの導入が進み、情報の共有や活用は進みつつあります。しかし、医師と患者が対話する問診によって得られる情報の重要性は高いため、医師による一定のカルテ入力作業が必要なことには変わりがありませんでした。
そこで医療DXを推進する株式会社レイヤードは、電子カルテ入力のさらなる省力化を支援するために、株式会社piponが開発提供するAI カルテ作成支援サービス「ボイスチャート」の販売取り扱いを開始しました。「ボイスチャート」は、医師と患者の診察時の会話を録音し、最新の AI 技術を用いて自動的に SOAP 形式のカルテテキストを生成できます。
これにより、医師のカルテ作成の時間を削減し、患者と向き合う時間が確保できるようになります。また、AI導入によって医療事務が効率化することで、医療クラークを雇用するコストも削減することも可能です。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000057.000004524.html
富士通と帝京大学がXRや空間コンピューティング、生成AIを活用した健康促進UXプラットフォームの共同研究を開始
富士通株式会社と学校法人帝京大学 冲永総合研究所は、生活習慣の改善に向けた意識向上やヘルスケアリテラシー向上をサポートするUXプラットフォームの共同研究を2024年10月18日から本格的に開始しました。
この研究では、XRや空間コンピューティング、生成AIなどのデジタルテクノロジーを活用し、健康診断の受診者が自身の体内の状態を深く理解することで、健康意識と行動変容にどのような影響を与えるかを検証します。また、生成AI を搭載したAI ヘルスケアサポーターのアバターが、生活習慣の改善に向けたフォローアップを行います。
生活習慣病は増加傾向にあり、医療費負担の増加や労働生産性の低下、生活の質の低下などのさまざまなデメリットがあります。しかし、個人が健康に対する興味・関心を持つことや、自らの意思で生活習慣を変えていくことは難しいのが実情です。
こうしたUXプラットフォームが実用化されれば、ヘルスケアリテラシーが向上したり、生活習慣の改善が促進されたりして、医療費の負担軽減や労働生産性の向上、生活の質向上などが期待できます。
参考:https://pr.fujitsu.com/jp/news/2024/10/18.html
まとめ 医療におけるAI活用について
今回は、医療現場で進むAI活用の最新事例についてご紹介しました。
人手不足が深刻な医療現場では、AI活用による業務効率化やコスト削減が進みつつあります。早期に病気を発見できたり、生活習慣の改善が促進できたりすれば、限りある医療資源を有効に活用できるようになります。
医療現場におけるAI活用がさらに発展すれば、人々が安心して暮らせる社会が持続可能な状態に近づくことができます。少子高齢化が進む日本では、医療現場におけるAI活用がますます欠かせない取り組みとなっていくことでしょう。
株式会社リッカ
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