2008年にサトシ・ナカモトと名乗る匿名の人物がインターネット上に発表した論文から開発されたビットコインから始まり、近年まで様々な暗号資産が生み出されています。
暗号資産という言葉を聞くと、使い道は資産として保有するだけと思われる方もいるかもしれませんが、資産以外にも様々な使い道が存在します。
この記事では、暗号資産の使い道やメリット、デメリットについて紹介します。
この記事を読むことで、暗号資産の使い方などが理解でき、ビジネスのDX化などを進めるきっかけとなるかもしれません。
※本記事内では、暗号資産を仮想通貨と呼んで説明を行います。
令和2年5月1日(資金決済法の改正)、金融庁が正式名称を「仮想通貨」から「暗号資産」に変更する通知があったため、法令上は暗号資産と呼称変更されました。
https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency/20210407_seidogaiyou.pdf
株式会社リッカ
<<あわせて読みたい>>
【ブロックチェーンのトークンとは?】種類や違いをわかりやすく解説
暗号資産(仮想通貨)の使い道
はじめに、仮想通貨の使い道で代表となるものを8つ紹介します
送金手段
仮想通貨の使い道の中で一番効果を発揮すると期待されているのが、送金手段として使うことです。
私たちが普段使用している日本円とは異なり、仮想通貨は特定の金融機関を介さずに相手に送金をすることが可能です。
金融機関を介さないことによって、暗号資産を管理するウォレットさえ持っていれば複雑な工程を踏まずとも、容易に世界中の誰とでも送金できます。
また、銀行を介した場合、振り込み処理を行った銀行から他銀行を経由して送金を行うという都合上、時間がかかったり、手数料が高くなったりします。
これに対して、暗号資産であれば経由する銀行も存在しないため、送金時間も手数料も抑えることができます。
決算手段
日本では2017年4月1日に施行された改正資金決済法によって、仮想通貨が正式な決済手段として認められ、ビックカメラやHISなどでビットコインを活用した決済が可能となりました。
仮想通貨で決済してもらうことにより、店舗側はクレジットカードでの決済と比較して手数料が安く済むことや入金が素早くされるなどのメリットがあります。
クレジットカード決済の場合 | 仮想通貨決済の場合 | |
手数料 | 決済額の5%程度 | 決済額の1%程度 |
入金までの期間 | 1ヶ月 | 即日 |
また、利用者側も為替手数料を気にすることなく世界中のサイトなどで決済できるというメリットがあります。
公共料金の支払い
国内では、CoinCheckでガスと電気の料金をビットコインで決済できるサービスを展開しています。
- 電気料金の支払い:CoinCheckでんき
沖縄電力の送電範囲と離島を除き、日本全国で利用可能
- ガス料金の支払い:CoinCheckガス
東京や神奈川県で、東京ガス(都市ガス)を利用している家庭限定
CoinCheckは、金融庁登録済の暗号資産交換業者であるコインチェック株式会社が運営する暗号資産取引所であり、ビットコインをはじめとする仮想通貨の売買や送金などをすることができます。
また、仮想通貨の取引以外にも最大年率5%で仮想通貨の貸し付けや、積み立てサービスなども展開しており、様々な面で利用ができます。
寄付
こちらは使い道として意外と思われる方もいるかもしれないのですが、寄付手段として仮想通貨を使うこともできます。
お金や電子マネーを寄付に活用した場合、以下のような問題点があります。
- 寄付金が正しく使われているかわからない
- 少額の寄付の場合、手数料のほうが高くなる
このような問題は仮想通貨を利用することで解決できると期待されています。
仮想通貨で送金をした場合、ブロックチェーン上に送金履歴が記録されるため、誰が誰に対して寄付金を渡したかという情報を追うことができます。
また、仲介者の手や銀行を挟まないことによって手数料も安く抑えることも可能です。
資金調達
仮想通貨は資金調達の手段として使うこともできます。
仮想通貨での資金調達には、ICO(Initial Coin Offering)やIEO(Initial Exchange Offering)という方法があります。
- ICO:企業が暗号資産を発行し、それを購入してもらうことで資金調達を行う方法。「クラウドセール」「トークンオークション」などと呼ばれることもある。
- IEO:暗号資産交換業者が企業やプロジェクトなどを調査し、トークン発行を通じた資金調達を援助する方法。
日本では法規制などの要因で盛んに行われていませんが、2023年9月15日に政府から仮想通貨のスタートアップ企業が資金調達するときの規制を緩和する方針が発表されました。
こちらは2024年にも国会に提出し、LPS法の改正を行う予定です。
投資や投機
仮想通貨といえば、投資や投機のイメージが強いかもしれません。
2017年に仮想通貨で莫大な利益を得た人が「億り人」と呼ばれ、世間を騒がせたことがあります。
仮想通貨も株や不動産と同様に、価格が安いうちに購入しておくことで将来的に大きな利益を得ることもできます。
仮想通貨は2023年10月時点で20,000種類以上が存在しており、価格も安いものから高いものまで様々なものがあります。この中からビットコインのように価値があがるものが生まれる可能性はありますが、将来的に価値がなくなってしまう可能性もあります。
仮想通貨も他の投資や投機と同様にリスクがあることは覚えておきましょう。
プラットフォーム
仮想通貨は、その基盤となるブロックチェーンプラットフォーム内での取引及び価値の交換の媒体として利用されます。
例えば、Ethereum(イーサリアム)プラットフォームで使用される「イーサリアム(ETH)」は、スマートコントラクトの実行やDApps内でのトランザクションに使用されます。
<<あわせて読みたい>>
【ブロックチェーンプラットフォームとは?】種類やメリット、活用事例を紹介
DeFi
仮想通貨とDeFiは密接な関係にあります。
DeFiは、ブロックチェーン(分断型台帳技術)を活用した中央管理者が存在しない非中央集権型金融サービスであることから、DeFiを利用するためには、そのブロックチェーンの仮想通貨が必要となります。
DeFiを利用することで、地理的な利用制限が撤廃され、仲介業者による不正のない取引を実現することができます。
<<あわせて読みたい>>
【Web3とは?】ブロックチェーンが何を実現するのか?徹底解説
暗号資産(仮想通貨)のメリット
これまで紹介したように仮想通貨が様々な用途に利用される理由として、以下の主要なメリットが挙げられます。
世界中と取引ができる
仮想通貨は国や中央銀行で発行されるような法定通貨とは異なり、世界共通の通貨としてデジタル上に存在します。また、ブロックチェーンを基盤に発行されることにより、銀行や仲介業者などを介することなくユーザー間で取引を行うことができます。
この特徴により、地理的な制約を受けることなく瞬時に取引ができ、銀行口座を持たないユーザーでもスマートフォンやパソコンを持っていればいつでも取引ができるなどのメリットがあります。
また、銀行などの金融機関を介さないため、営業時間の制約もなくなり24時間365日いつでも取引が可能です。
手数料が安く取引スピードが速い
国や中央銀行が発行した法定通貨で取引を行う場合、銀行などの金融機関を通じてやり取りをするため、金融機関に応じて手数料が発生したり、取引の完了まで時間がかかったりする問題があります。
これに対して仮想通貨は金融機関を介さないことにより、取引を完了するまでのフローが短縮され、スピーディーで手数料が比較的安価な決済が可能となります。
これにより、これまでは少額な取引をした際には手数料のほうが高くなるということもありましたが、仮想通貨ではこのような課題にも対応が可能です。
価格が上昇する場合がある
こちらは後述するデメリットにも結び付く内容となるのですが、仮想通貨は需要によって価値が大きく変動します。法定通貨と異なり需要に応じて価値が変動するという特徴を持つことから、価値が低いときに購入することによって、2017年に起きたビットコインバブルのように将来的に大きな利益を得ることができます。
中南米に位置するエルサルバドル共和国では、法定通貨としてビットコインが選定されるという実例もあり、価値の変動によっては国の財政にも関わる可能性があります。
高い改ざん耐性と透明性がある
仮想通貨はブロックチェーンを基盤に発行されるものであるため、高い改ざん耐性を持っています。本記事では詳しい仕組みについては割愛しますが、ブロックチェーンに記録されたデータは改ざんすることが非常に困難なものとなるため、悪意のあるユーザーが取引情報を書き換え、送金金額などを変更される可能性が0に等しいです。
また、取引情報はパブリックなブロックチェーンであれば誰でも閲覧することができるため、透明性の取引を行えます。
<<あわせて読みたい>>
【ブロックチェーンの仕組みとは?】特徴や基礎をわかりやすく解説
暗号資産(仮想通貨)のデメリット
ここまでの説明で仮想通貨は様々な場面で活用でき、メリットもあることも知っていただけたかと思います。しかし、仮想通貨にはデメリットもあります。その中で代表的な3つのデメリットについて紹介します。
誤送金や詐欺のリスクがある
仮想通貨はその仕組み上、一度実行した取引を取り消すことができないものとなっています。送金してしまった仮想通貨を取り戻すには、送金相手に協力してもらい、送り返してもらう必要があります。
友人間での誤送金であれば、送り返してもらうことも容易にできると思いますが、これが詐欺相手だった場合、送金した仮想通貨が返却されることはないでしょう。
そのため仮想通貨を送金する際には、送金相手が意図した相手であること、送金金額が正しいこと、詐欺による送金を求められていないかなど多くのことを考慮したうえで取引を行う必要があります。
使用できるシーンに限りがある
本記事で紹介したように、仮想通貨には様々な使い道がありますが、以下の要因から使用できるシーンに限りがあるというのが現状です。
- 法的規制
仮想通貨は世界中で取引を自由に行える特徴を持っていますが、国によっては規制を厳しくしており、仮想通貨の使用や取引を禁じられている場合があります。
- 価格の不安定性
仮想通貨の価値は需要によって大きく左右されます。そのため、長期の契約や支払いを考えたときに仮想通貨を活用しての決済はリスクを伴うことになります。
- 取引の不可逆性
ブロックチェーンの性質上、一度実行された取引を取り消すことは難しいです。そのため、誤送金や詐欺の被害が発生した際に仮想通貨を取り返すことができない場合があります。
- 受け入れ先の限定性
一部の小売業者やサービスプロバイダーにて仮想通貨での決済は受け入れられていますが、国内だけに注目しても受け入れ先はまだまだ少ないのが現状です。その背景には、前述したような課題があり、法定通貨と同様に扱うことは難しいということが挙げられます。
価格が急落するリスクがある
2017年12月にビットコインバブルが発生した際には、最高価格が2,350,517円となりましたが、翌年2018年1月には最高値の40%以下にまで暴落した歴史があります。
これはビットコインに限らず、他の仮想通貨でも起こりえる現象です。仮想通貨は大きな利益を得られる可能性を持っている一方で、大きな損失も発生する可能性もあります。仮想通貨を購入する際にはリスクを十分に考慮する必要があります。
セキュリティ管理は自己責任である
仮想通貨は金融機関を介さない都合上、保有する仮想通貨を管理するウォレット(口座)、公開鍵、秘密鍵などは自己責任で管理する必要があります。
もしこれらの情報が他人に知られた場合、知らぬ間に仮想通貨を誰かに送金される恐れがあります。
- ウォレット:仮想通貨を管理する場所(銀行口座でいう預金口座)
- 公開鍵、秘密鍵:ウォレットにアクセスするためのパスワードの役割を持つ
暗号資産(仮想通貨)の使い方|使うために必要な準備とは
仮想通貨を使うための準備として、以下の手順を踏む必要があります。
- 仮想通貨取引所に登録して、ウォレットを取得する
- 仮想通貨を購入する
上記の手順を完了することで、仮想通貨を保有することができます。その後は必要に応じて、決済相手に送金を行います。
- 送金相手の受信アドレスをQRコードなどから取得する
- 対象のアドレスに対して送金する額を入力し、送金を行う
以上が仮想通貨を使うための基本的な流れです。
一部の仮想通貨では手順が異なる可能性があるので、仮想通貨のガイドラインや取引所の案内などを確認し、適切な対応を行ってください。
また、仮想通貨のデメリットにも記載をしましたが、ウォレットの管理は細心の注意が必要です。
まとめ 暗号資産(仮想通貨)の使い方について
今回は、仮想通貨の使い道について紹介をしました。世界的に注目されている仮想通貨ですが、まだまだ法的規制や価格が安定しないなどの要因によって使用できるシーンは限られるものとなっています。しかし、仮想通貨のメリットは法的通貨では解決が難しい課題に対して、1つの解決方法となり得るものでもあります。
国内でも法改正によって仮想通貨を利用できる場が増えることが考えられるので、今後の活躍が期待されます。
コメント