共助トラストフレームワークとは?メリットや重要性、最新事例をわかりやすく解説

共助トラストフレームワークとは、地域やコミュニティ、インターネット社会において、お互いに助け合ったり、社会貢献したりするために必要な『信頼を担保するフレームワーク』です。

現在、共助を目的としたさまざまなアプリやサービスが提供されていますが、ユーザー同士の信頼性を担保することが難しい状況となっています。ユーザーのなりすましや虚偽情報の登録などのリスクがあるからです。そのため、誰もが安心して共助しあえる社会にするためには、お互いを簡単に信頼できる仕組み作りが必要となります。

そこで今回は、共助トラストフレームワークの概要やメリット、今後について解説していきます。

この記事を読めば、共助トラストフレームワークの必要性や重要性がわかります。

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目次

共助トラストフレームワークとは?

共助トラストフレームワークとは、共に助け合える社会を構築していくために必要なユーザー同士の信頼性を担保するための仕組みです。

共助とは?

共助とは、人々がお互いに助け合い、支えあいながら生活をしていくことです。

これからの日本は、人口減少と過疎化がますます進んでいきます。若い働き手が減り、高齢者が増えることによって、自治体や企業のサービスが従来のように行き渡らなくなる可能性があります。

例えば、過疎地域の高齢者の生活に必要な買い物は、移動販売車やヘルパーによる買い物代行などで支援する必要があります。しかし、人手不足や赤字が続いてしまうと、こうしたサービスを継続できなくなる可能性があります。今後の日本では、こうした『公助』の不足が懸念されます。

そのため、自分のことはできるだけ自分でやる『自助』が重要になっていきますが、自分だけでは解決できない問題も多数あります。買い物に行きたくても、運転免許証を持っていない方や、歩いて買い物に行くことができない方も多いからです。しかし、人口減少や過疎化によって、『公助』ばかりを期待することは難しくなっていきます。

そこで大切になってくるのが『共助』です。共助とは、地域やコミュニティ、インターネット社会も含めた多くの人たちと共に助け合い、困りごとを解決しあうことをいいます。現在では、さまざまな自治体や企業が共助を推進する『共助アプリ』を開発し、運用を行っています。

しかし、共助を促進するアプリやサービスにも多くの課題が存在し、共助の輪を広げるのが難しいという実情があります。

共助アプリとは?共助アプリの課題

共助アプリは、さまざまな自治体や企業が開発・運用を行っているユーザー同士の相互支援を推進するコミュニケーションツールです。困りごとがあるユーザーや人手を募りたいユーザーと、困っている人を助けたいユーザーや社会貢献に参加したいユーザーを繋げるマッチングアプリです。

共助アプリの課題

共助アプリは大小さまざまな規模のものがありますが、サービスの認知拡大やユーザーの確保は、それぞれのサービスの集客力や認知度に左右されます。そのため、広告予算やマーケティング手法の違いによって、ユーザーの獲得が不十分なサービスも多いです。十分なユーザーが獲得できなければ、共助の輪を広げることができません。

また、ユーザー認証の方法、ユーザー情報の管理、行動履歴などはそれぞれのアプリに依存するため、共助を希望するユーザーによっては、いくつものアプリに登録する必要があります。Aというアプリの情報とBというアプリの情報は基本的に連携しないため、あるユーザーの情報はアプリごとにバラバラに存在することになります。

例えば、田中太郎さんという方が、地元の自治体でボランティア活動に参加したという履歴は共助に関する貴重な情報です。しかし、この情報はアプリごとに管理されますので、他のアプリではその履歴を参照できません。田中太郎さん自身が自分の活動として他のアプリに登録することは可能ですが、自己申告となってしまうため信頼性が低下してしまいます。本当にボランティア活動をしたかどうかが証明できないからです。

アプリごとに共助の情報が散在してしまうと、本当に支援を必要としている人に情報が届かない可能性があります。また、支援者の情報があったとしても、その情報の信頼性が低いため、本当に頼って良いのかが判断できません、

こうした課題を解決するのが、共助トラストフレームワークなのです。

共助トラストフレームワークの事例

共助アプリの課題を解決し、共助の輪を広げるために実際に行われている取り組みが、大日本印刷株式会社(DNP)による『共助トラストフレームワーク』の構築です。

DNPが推進する共助トラストフレームワークは、デジタル庁の「令和4年度補正 Trusted Webの実現に向けたユースケース実証事業」に参加し、「共助アプリにおけるプラットフォームを超えたユーザートラストの共有」をテーマとする形で、2023年6月~2024年3月に実証実験が行われました。

https://www.dnp.co.jp/news/detail/20173680_1587.html

DNPでは、デジタル証明書(Verifiable Credentials:VC)を活用して、共助アプリ利用者のプロフィールや利用実績などを保管する「Digital Identity Wallet(DIW)」のプロトタイプを開発しました。複数の共助アプリで共通して使えるデジタル証明書となっているため、共助の実績をシームレスに連動させることができます。

https://www.dnp.co.jp/news/detail/20173680_1587.html

複数の企業が参画する場合を想定し、VCのデータフォーマットとして構造や検証の仕組みがシンプルなSD-JWT(選択的開示「Selective Disclosure」を実現するためのフォーマットの一つ。)を採用しました。これにより台湾との国際的な相互運用テストも実現しました。

詳しくは下記のリリースを参照ください。

大日本印刷株式会社:「Trusted Web」の社会実装に向けた汎用的なトラストフレームワークを策定

https://www.dnp.co.jp/news/detail/20173680_1587.html

大日本印刷株式会社:「共助アプリを横断したトラスト形成エコシステム」

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/digitalmarket/trusted_web/2023seika/files/02_dnp_report_agenda.pdf

共助トラストフレームワークが実現する5つのメリット

共助トラストフレームワークが実現できる主なメリットは以下の5つがあります。

  • ユーザーの信頼性を担保できる
  • アプリを超えた相互運用が可能になる
  • なりすましや詐欺を防止できる
  • 安心して共助の輪を広げられる
  • 自身のアイデンティティを確実に証明できる

それぞれを解説します。

ユーザーの信頼性を担保できる

共助トラストフレームワークでは、ユーザー認証が厳密に行われます。そのうえで、複数の共助アプリを共通して利用できるため、一意のユーザーに複数のアプリでの行動履歴を紐づけることができます。

これにより、どのユーザーがどんな支援活動をしてきたのかが証明できるため、支援を必要とする方は安心して共助アプリを利用することができるようになります。

アプリを超えた相互運用が可能になる

DNPの共助トラストフレームワークでは、データフォーマットや運用方法などを整理し、複数のアプリでの活動を1つのIDに集約できます。これにより、ユーザーは1つのアカウントで複数のアプリを利用できるようになり、さまざまな支援の可能性を広げることができます。

また、支援に関する情報がバラバラにならず、より多くの情報の中から自分にあった支援を選んだり、自分にできる支援を必要とする人を見つけやすくなったりします。

なりすましや詐欺を防止できる

共助トラストフレームワークによって、氏名や住所、支援に関する情報が厳密に管理され、1つのIDに集約できれば、なりすましや情報の不正操作を防げます。悪質なユーザーや詐欺などがあっても対象者をすぐに特定できるため、犯罪を抑止する効果も期待できます。

また、ユーザー情報の修正や管理も簡単になります。共助アプリを運用する自治体や企業の運用コストの削減にもつながり、サービスの質向上が期待できます。

安心して共助の輪を広げられる

共助トラストフレームワークによって、共助アプリ内のユーザー情報や支援に関する情報の信頼性を高めることができれば、支援を必要とする人や支援をしたい人が安心してサービスを利用できます。必要とする人のところに、必要な支援が届きやすくなるため、共助の輪を広げやすくなります。

ユーザー同士が適切にマッチングされるため、より良いコミュニティや交流が形成されます。信頼が簡単に担保できる仕組みがあれば、ユーザー同士がより深い関係を築くことができるのです。

自身のアイデンティティを確実に証明できる

自分はどんな人物で、どんな支援を必要としているのか、あるいはどんな支援が可能なのかが、共助トラストフレームワークのIDによって確実に証明できます。共助のマッチングがスムーズになるだけでなく、ユーザー個人の特性をアピールしやすくなります。

例えば、学生の頃から共助の活動に参加していれば、その活動履歴を就職活動に生かすことができるかもしれません。また、より専門性の高い職種への転職が可能になったり、地域やコミュニティ内での個人の評価を高めたりすることも考えられます。

信頼性の高い人物には、さまざまな支援の相談が来るようになる可能性があります。より多くの人に貢献できるようになれば、自身のアイデンティティの価値を高められることでしょう。

共助トラストフレームワークにおけるブロックチェーン活用の可能性

共助トラストフレームワークにブロックチェーンを活用することで、

  • 情報の耐改ざん性が高まる
  • 関係者間で安全に情報を共有できる
  • 契約や支払の自動実行が可能になる

といったメリットを享受できる可能性があります。

ブロックチェーンは、分散型のデータベースであり、ブロックと呼ばれる単位で情報を記録します。これらのブロックは一つのチェーンで数珠繋ぎにされており、一度記録されたデータは改ざんが極めて難しいという特性を持っています。共助に関する活動履歴がブロックチェーンに記録されれば、改ざん不可能な形でより確実な証明とすることができます。

また、ブロックチェーンは関係者間のみで情報を安全に共有することも可能です。共助トラストフレームワークにおいては、プライバシー保護と情報の透明性を両立する必要がありますので、ブロックチェーンの安全性の高さは大きなメリットとなるでしょう。

また、ブロックチェーンでは、スマートコントラクトという仕組みが実装可能です。スマートコントラクトとは、あらかじめ設定された条件が満たされた場合に自動的に契約の履行や支払いが実行されるプログラムです。

共助トラストフレームワークでスマートコントラクトを活用すれば、ユーザー同士の契約を確実に履行したり、必要なコストや報酬の支払いを自動的に処理したりすることも可能になります。

ブロックチェーンの特性は、共助の輪を広げる活動にも貢献していけることでしょう。

まとめ 共助トラストフレームワークについて

今回は、共助トラストフレームワークについて、そのメリットや重要性、DNPの事例について解説しました。

「共助トラストフレームワーク」は、少子高齢化社会における共助の信頼と安全を確保するための重要な仕組みです。

共助トラストフレームワークが構築されることによって、さまざまな人々が助け合い、支えあうことによって、持続可能な社会を実現できる可能性があります。これからも安心して生活ができる社会を実現していくためには、デジタル化による社会の革新(DX)が欠かせないものとなっていくことでしょう。

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