農業分野は、高齢化や人口減少に加え、重労働であるため就業者が不足しています。また、長年の経験や勘を頼りにしたノウハウが必要だったり、生産コストも上昇したりしているため、新規の就農者もなかなか増やせていません。
そこで期待されているのが、AIを活用した農業分野のDXです。AI技術を活用すれば、生産効率を向上させたり、重労働から解放されたりする効果が期待できます。
今回は、農業分野における最新のAI活用事例を7つご紹介します。
株式会社リッカ
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キュウリの収穫を効率化!AI搭載ロボット「Q(探究)」
ハウス内でのキュウリ収穫は高温多湿の環境であり、ピーク時は1日2回の収穫が必要になるほど重労働です。こうした問題を解決するために、AI搭載カメラが収穫適期を判断し、自動走行しながら収穫するロボット「Q(探求)」を、テクノロジーで農業課題を解決するスタートップ企業AGRISTが開発。2024年12月25日、新デザインを発表しました。
キュウリ収穫ロボットは、ハウス内に設置したレール上を自動走行し、AIを搭載したカメラでキュウリを認識、収穫適期サイズを判断して収穫を行います。画像データはMicrosoft Azureサーバーに蓄積され、AIが分析を行います。また、タブレット端末からロボットの操作やデータの確認も可能です。
AIを搭載したキュウリ収穫ロボット「Q(探究)」は、農業の効率化と人手不足の課題解決に貢献するとともに、持続可能な農業の実現を目指します。今後は、この仕組みやノウハウを活用することで、他の作物への展開も視野に入れています。
参考:https://drone-journal.impress.co.jp/docs/news/1186864.html
AIで農業を進化させる「トマトAIカウンターアプリ」
株式会社チームゼットと株式会社トクイテンは、トマトの写真から数をAIで推定する「トマトAIカウンターアプリ」を開発しました。
生鮮食品の流通には正確な収穫量の予測に基づいた取引が欠かせませんが、本アプリを使えばスマートフォンで写真を撮影するだけでAIがトマトの数を自動で推定できます。これにより、農業従事者の負担を軽減し、農業経営の効率化をサポートします。
本アプリは試験段階にありますが、将来的には成熟度推論や収穫量予測などの高度な分析も可能になる予定です。深刻な人手不足が続く日本の農業現場の課題を解決するために、AIのアルゴリズムの最適化やデータの拡充を進めています。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000154197.html
シャインマスカット栽培にAI活用!「匠の技」の実現に挑戦
高級フルーツとして人気が高まっているシャインマスカットの農業現場では、人手不足や高齢化が課題となっています。そこで山梨大学や山梨県、県内の機械メーカーやIT企業などによる産官学コンソーシアムは、AI活用によるシャインマスカット栽培の支援に取り組んでいます。
シャインマスカットの高品質化には、ブドウの花穂の段階で摘み取る「房づくり」、ブドウの房から一部の粒を取り除く「摘粒」、そして「収穫判定」といった工程では熟練の技術が必要となります。特に摘粒などの作業の出来栄えで1房が5000円以上の高級品になったり、1000円以下にしかならなかったりするため、シャインマスカットの粒の大きさや張りなどを判別することが大切です。
山梨大学などが開発している摘粒ロボットは、衛星利用測位システム(GPS)を使い、房まで自動走行し、センサーで摘粒数と摘粒すべき粒をAIが選定し、アームに取り付けられたはさみで切り落とします。
摘粒ロボットは開発途上の段階であるため、実演会では誤って房を半分切り落とすなどのトラブルも多く発生しました。作業時間も長いなどの課題もありますが、粒の選定についてはベテラン農家並みの判断を下せるようになっています。また、作業時間が長くても、夜間に作業ができれば効率は大幅に向上できる見込みです。
今後は技術開発のスピードを上げ、ロボットやアームの小型化を実現し、令和9年度中の摘粒ロボット実用化を目指していく予定となっています。
参考:https://www.sankei.com/article/20240801-E2BR7FBPOZMNTFS4IRCOADIJ2A
AIが潅水・施肥・換気を自動化!アスパラガスのスマート農業
アスパラガスのハウス栽培はきめ細やかな水やり・施肥、防除、収穫作業等には長年の経験や人手による作業が必要となり、技術の習得に多くの時間を要します。身体的な負荷も非常に大きいために新規就農の妨げとなっており、農家の高齢化や担い手不足に拍車をかけています。
ルートレック・ネットワークスは、長崎県壱岐市でアスパラガスの高畝栽培とスマート農業を実証する圃場を開設しました。AI潅水施肥システム「ゼロアグリPlus」を導入し、潅水・施肥・換気を自動化し、省力化と生産性向上を実現しています。また、遊休ハウスを再利用することで初期コストを抑え、生産性の高い農業を実現し、新たな雇用の創出やアスパラガスの売上拡大をめざしています。
今後は、データや自動化技術を活用した生産性の高い農業をパッケージ化することで、スマート農業技術の活用と新規就農支援を推進していく予定となっています。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000060692.html
AI自動動収穫ロボットがいちご栽培を効率化
株式会社アイナックシステムは、AIいちご自動収穫ロボット『ロボつみ®︎』を活用し、水・液肥・土壌温度・補光・収穫を自動化した農園を福岡市に作りました。
多くのいちご農家では、ビニールハウス内の環境を一括制御しています。そのため、同じ条件下で栽培しているいちごは、トラブルが発生すると一気にすべてダメになってしまう危険性があります。また、いちごの収穫タイミングが一斉にピークを迎えるため、朝から晩まで連日して収穫をする必要があり、心身ともに過酷な生産現場となっています。
AIいちご自動収穫ロボット『ロボつみ®︎』は、水・液肥・土壌温度・補光を自動化できるので、同じビニールハウス内において異なる条件下で栽培することが可能です。これにより、栽培リスクを分散しながら実がなる速度も変え、生産量を一定の状態に保つことができます。
収穫のタイミングを分散化し、収入を安定的に保つとともに、作業のピークも平準化できるので、人手不足の解消にも貢献できます。また、いちごに人が手を触れず、ロボットが優しく摘み取るため、従来よりいちごが約4日程長持ちするというメリットもあります。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000142910.html
農業ポータルアプリ「FarmChat(ファームチャット)」
株式会社ファーム・アライアンス・マネジメントは、農業ポータルアプリ「FarmChat」を開発し、農業知識を学習した生成AIを提供しています。
FarmChatを活用すれば、農業者の属性データや産地ごとに蓄積された農業データを組み合わせ、新規就農者の早期育成や既存農業者への新技術提供が可能となります。例えば、地域や栽培品目に特化した情報を生成AIが学習することで、特定の地域や栽培品目に関する農業従事者の悩みに的確な回答を返すことができるようになります。
今後は、FarmChatを導入している農業団体や都道府県と連携し、さまざまな地域や品目に特化した生成AIを提供することで、農業者からの相談に自動で回答できる仕組みを目指していく予定です。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000070270.html
中学生がAIを活用した最新のスマート農業を体験
子どもたちに農業に興味を持ってもらうために、ドローンやAIを活用したスマート農業を体験する学習会が岩手県滝沢市で行われました。スマート農業に使われる農薬散布用のドローンや自動運転の大型機械が用意され、中学生がAIを活用したスマート農業を体験しました。
AIが搭載された農業機械は、事前にプログラミングすることで指定した日の指定した時間に自動で農作業を行うことができます。また、離れた場所からでもタブレットで作業の進捗などを確認することが可能です。
参加した生徒は、農業の現場で活用される最新の技術に驚くとともに、AIを活用した新しい農業に面白さを感じていました。
岩手県盛岡広域振興局では、今後も小中学生を対象とした体験学習会を開き、子どもたちの農業への関心を高められるようにしていきたいと考えています。
参考:https://newsdig.tbs.co.jp/articles/ibc/1488917?display=1
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まとめ 【農業×AI】最新の活用事例7選について
今回は、農業分野で進む最新のAI活用事例を紹介しました。
AIなどの最新技術を活用すれば、生産効率を大幅に向上させたり、重労働から解放されたりすることで、農業分野の人手不足解消が期待できます。スマート農業のさらなる発展が進めば、新しい農業の担い手も増えていくかもしれません。
国内の食料自給率を高め、安心して暮らせる社会を実現するためには、農業分野でのAI活用が欠かせません。今後の農業×AIの発展にぜひ注目していきましょう。
株式会社リッカ
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