
2025年1月、JR東日本は交通系ICカード「Suica」とブロックチェーン技術を掛け合わせた革新的な共創プラットフォームを始動しました。
専用アプリ「JRE WALLET」を通じて、Suicaの利用データをもとにパーソナライズされたサービスや特典が提供される仕組みで、モビリティや金融、エンタメ、地域活性まで幅広い分野に活用の広がっています。
本記事では、この新サービスの特徴や活用事例、期待される今後の展望について詳しく解説します。
株式会社リッカ
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JR東日本のブロックチェーンを基盤とする新たな企業共創サービスとは?

JR東日本が打ち出した新サービスは、独自のプライベートブロックチェーン上にSuicaの利用履歴などを記録・管理し、参画する企業や自治体とセキュアにデータを共有する仕組みです。
生活者は専用アプリ「JRE WALLET」を通じて、自らのSuicaを連携させ、利用データを企業に提供することに同意すれば、対価としてパーソナライズされたサービスや特典を受け取ることができます。
このプラットフォームの最大の特徴は、従来の交通データの枠を超えた応用力です。購買履歴や移動パターン、地域の滞在傾向などをもとに、保険、買い物、ゲーム、観光など多種多様なサービスが個人最適化されます。
本サービスが目指す姿

このサービスの最終的な目標は、Suicaという日常的なインフラを起点に多様な企業とのコラボレーションを通じて、「個客」のライフスタイルに最適化された体験価値を提供することです。
JR東日本のビジョン「Beyond the Border」の中核を成すこのプロジェクトでは、モビリティ、エンターテインメント、地域経済、金融などを横断する形でサービスが設計されています。山手線全駅を一定期間内に利用することで、ゲーム内で報酬が獲得できたり、利用者のよく使う駅に基づいたクーポン配信など、Suicaの移動履歴に紐づいた仕組みは行動データの新たな価値創造と言えるでしょう。
ブロックチェーン技術によるセキュアな情報管理と、利用者が自身のデータをコントロールできるUXが、新しい消費と共創の時代を形作っていきます。
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本プラットフォームを通じて提案するサービスについて
このプラットフォームの価値は、企業間でのセキュアな情報共有にもあります。参画企業は、Suicaデータに加え、他社の提供するサービス情報をもとに、より精緻なパーソナライズや共同プロモーションの設計が可能になります。
例えば、あるユーザーが平日は都内を中心に移動し週末は郊外へ出かけるというデータをもとに、交通、観光、小売、保険各社がそれぞれの強みを活かしたオファーを提供できます。これにより、利用者にとっては統一されたインターフェース上で、分断されていたサービスが連動し新たな利便性と楽しさを生みます。
まさに、個人の生活が「モビリティ」を中心に編成される未来型UXの実験場となっています。
JRE WALLETとは?

JRE WALLETは、本プラットフォームの玄関口となるアプリです。ユーザーはこのアプリを通じて自身のSuicaと連携し、各種共創サービスへの参加やデジタル資産の管理が可能になります。
アプリはApp StoreおよびGoogle Playから無料で入手可能で、JRE WALLET上ではNFTとして扱われるデジタルアイテム、スタンプ、クーポン、チケットなどが一元管理されます。UI/UX面では「ブロックチェーン」「NFT」など専門用語を表に出さず、直感的な操作で誰でも使える設計となっている点が特徴です。
お客さまの同意による Suica データ等の提供

JRE WALLETでは、ユーザーの明確な同意のもとでSuicaの利用履歴が企業と共有されます。連携はアプリ内で完結し、ユーザーはどのサービスにどの情報を提供するかを自由に選択できます。
データをもとにした個客に応じたサービス・体験価値の提供
JRE WALLETを通じて収集・共有されたデータは、参画企業によってユーザーごとの嗜好や傾向を反映したサービスへと変換されます。
保険会社であれば、平日の移動距離や時間帯に応じた商品設計ができ、小売企業であれば特定駅での購買履歴をもとにした商品レコメンドが可能となります。また、ユーザー側も自分のデータの「見える化」が進むことで、より自分に適したサービスの選択がしやすくなります。
行動の記録が生活のチューニング材料となるこの仕組みは、真の意味での「スマートライフ」を実現する一歩と言えるでしょう。
JR東日本が提案する「新しい楽しさ」
JR東日本が提案する「新しい楽しさ」をご紹介していきます。
デジタル鉄道ジオラマゲーム「みんなのトレインタウン」

「みんなのトレインタウン」は、Suicaの利用履歴をもとにゲーム内での報酬が獲得できる、鉄道ファン向けのデジタルジオラマゲームです。
2025年1月下旬にリリースし、基本プレイ無料、アイテム課金ありのモデルを採用しています。ユーザーは駅を巡ることでジオラマパーツを収集し、それを使って自分だけの街を構築することができます。また、自作したジオラマ空間をメタバース上で公開し、他ユーザーと一緒に探索したり、共同でジオラマを作成したりすることも可能です。

駅の利用というリアルな行動とゲーム内の資産構築が連動するこの設計は、物理とデジタルの融合を象徴しており交通という日常がエンタメ体験へと転換されます。
アジア最大規模のバーチャルSNS「ZEPETO」にJR東日本のワールド「GET TRAIN」をオープン!

NAVER Zが提供するバーチャルSNS「ZEPETO」との連携により、JR東日本は「GET TRAIN」というワールドを2025年2月にローンチしました。
山手線をテーマにした仮想空間で、アスレチックやガチャによる駅オーラ集めが楽しめます。ワールド内には改札や車両が再現されており、ZEPETOユーザーはオーラを集めてガチャを回すことで、駅ごとのオーラアイテムをコレクションできます。友達と一緒に探検や、駅オーラを纏ったアバターでフォトブースを使ってSNS投稿も可能です。
また、JRE WALLETとの連携によって、実際のSuica行動とZEPETO内の報酬が連動する仕組みも実装されています。ゲーム性と現実体験が交差するこの取り組みは、特に若年層への訴求効果の高さが期待されています。
参考:https://www.jrewallet.jp/campaign/zepeto
カルビー「ルビープログラム」×JR東日本「推し路線」総選挙

スナックメーカーのカルビーと組んだユニークな施策が、「推し路線総選挙」です。カルビーの会員プログラム「ルビープログラム」とJRE WALLETを連携し、アプリ内で「折りパケ」による投票券を取得、好きな路線に投票できる仕組みとなっています。
最も得票数の多かった路線は、カルビーの商品とコラボした特別パッケージとして発売される予定となっており、リアル商品とデジタル体験がつながる好例となっています。投票は2025年3月17日〜5月19日までの期間限定で実施されます。
「推し路線総選挙」は、生活者の感情や好みに訴える仕掛けが随所に盛り込まれている点が特筆されます。
参考:https://www.jrewallet.jp/campaign/calbee
エキュート大宮・エキュート日暮里のキャンペーンと連携しデジタルクーポンを提供

2025年2月21日(金) ~ 2月25日(火)、駅ナカ商業施設「エキュート」との連携により、JRE WALLETユーザー向けに限定クーポンが配布されるキャンペーンも展開されました。
対象施設で1000円以上の買い物をした際に300円引きとなるクーポンが提供されます。クーポンはJRE WALLET上に配信され、会員登録を行うことで即利用可能です。対象店舗での利用条件や時間帯による制限はあるものの、実店舗との連動による直接的な経済波及が期待されます。
こうした実利型の施策は、データ連携によるUX改善と共に、リアル店舗の来店促進にもつながっており、オンラインとオフラインを横断するマーケティング事例として注目されています。
参考:https://www.jrewallet.jp/campaign/ecute
JR東日本のブロックチェーンを基盤とする新たな企業共創サービスの今後
JR東日本の新たな企業競争サービスの今後についてご紹介します。
みずほ銀行とともに地域創生に取り組み

みずほ銀行とTISは、JRE WALLETと会津地方の地域通貨「会津財布」を連携させ、福島県会津地方の経済の活性化を図っています。
地域の加盟店での利用時にポイント還元やデジタルクーポンが付与される仕組みの導入が検討されており、観光客向けのスタンプラリーやイベントとの連動も予定されています。地域通貨とモビリティデータの融合により、持続可能な地域体験型サービスの展開が期待されています。
参考:https://service.paycierge.com/aizu-zaifu/
日本生命とともに安心をお届けするサービスを検討

日本生命と共創では、Suicaの移動履歴をもとにライフスタイルに合った保険商品のパーソナライズ化を進めています。
通勤が長い人には通勤事故対応型、外出の多い高齢者には見守り機能付きなど、移動パターンに即した保険提案が可能になります。データに基づいた提案により、保険の加入ハードルを下げ、日常に溶け込んだ安心の提供を目指しています。
富士通とともに組込型金融サービスの提供について検討
富士通とJR東日本は、Suicaの利用状況に応じた金融機能を自然に提供する「組込型金融」の実現を目指しています。
例えば、長距離移動を検知すると旅行保険が自動適用されるなど、ユーザーが操作を意識せず恩恵を受けられる体験も設計されています。マイクロファイナンスや割引の自動提供といった新たな組込型金融サービスの提供を検討しています。
東京海上日動とともに、新たなサービスの創出について検討

東京海上日動との取り組みでは、Suicaの利用履歴を活用した事故対応支援や保険サービスの拡充が検討されています。
通勤中や旅行中に万一トラブルが発生した場合でも、JRE WALLETを通じて迅速かつ的確なサポートを提供可能にします。サービス内容や補償状況の可視化も実現されることで、日常に安心を添える新たなデジタル保険体験が広がっていきます。
まとめ Suica×ブロックチェーンの企業共創サービスについて

今回は、JR東日本が展開するSuica×ブロックチェーンの企業共創サービスについてご紹介してきました。
JRE WALLETを通じて、Suicaの移動データを活用しながら個人に最適化されたサービスを提供できる点は大きな特徴です。エンタメや地域経済、金融との連携によって、交通の枠を超えた新しいユーザー体験が実現しつつあります。
一方で、データ活用のあり方やプライバシーへの配慮も大切なポイントです。今後のサービス拡充やパートナーとの連携によって、Suicaが生活の中心的なインフラとして進化していく姿に注目していきましょう。
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