
人口減少と高齢化が進行する日本において、地域の未来を支える新たな社会実験が始まりました。鳥取県鳥取市佐治町では、デジタル技術とコミュニティの力を融合させたプロジェクトである佐治DAOが発足し、地域の課題解決に挑んでいます。
DAO(分散型自律組織)の仕組みを活用することで、地元住民だけでなく全国の「デジタル応援団」も地域づくりに参加できる体制が整いつつあります。リアルとデジタルの境界を越えて、誰もが地域に貢献できる新たな仕組みは、これまでにない地方創生の形として大きな注目を集めています。
株式会社リッカ
佐治DAOとは?

佐治DAOは、鳥取市佐治町で2025年4月7日にスタートしたWeb3時代の新しい地域コミュニティです。
主導するのは地域おこし協力隊員でありDAOマネージャーの鈴木匠氏(通称「人生の旅人たくみさん」)です。佐治DAOは、オンライン上で全国の人々が佐治町の未来づくりに参加できる仕組みを備え、DAOの仕組みによって地域課題の解決を目指しています。
Discordを通じて誰でも無料で参加でき、地域外の人が関わりやすいのが特徴です。また、地元住民だけでなく都市部の参加者や専門家が集まり、自由な発想で佐治町の魅力向上や新たなプロジェクトを共創できる場所となっています。
佐治DAO(仮):https://discord.com/invite/CamxyXHCsz
佐治町とは?

佐治町は、鳥取県鳥取市の南東部に位置する中山間地域で、人口は約1,500人、高齢化率は50%を超えています。「五し」と呼ばれる、梨、和紙、話(民話)、石、星といった地域資源があり、特に二十世紀梨や因州和紙、佐治川石、さじアストロパークが有名です。日本屈指の星空環境を誇るさじアストロパークでは、過去に22個の小惑星が発見され全国の星空調査でも日本一の記録を持ちます。和紙や石、梨の生産は長い歴史を持ち地域文化や産業の象徴です。
「五しの里さじ」 ~佐治地域の5つの魅力~:https://www.city.tottori.lg.jp/www/contents/1621225618654/index.html
DAOとは?
DAO(Decentralized Autonomous Organization、分散型自律組織)は、ブロックチェーン技術を活用し、中央管理者を置かずに意思決定を行う組織形態です。
Web3.0時代を代表する概念で、メンバー全員が平等な立場で参加し透明性と効率性の高い運営が特徴です。インターネットの歴史上、Web1.0が一方通行、Web2.0が双方向、Web3.0は「分散と所有」をキーワードにしています。
DAOは世界中の多様な人々が自らのスキルや知識を提供し合います。さらに、共創を通じて課題解決や価値創出を進める「サードプレイス」として注目され、特に地域やコミュニティ活性化の分野でも利用が広がっています。
DAOマネージャー「人生の旅人たくみさん」とは?

鈴木匠氏は、高校講師や猟師、古民家再生、ダンサー、アンガーヨガ講師など多彩な職歴を持ち、「人生の旅人たくみさん」としてweb3コミュニティで広く認知されています。
多拠点移動生活を実践し、全国のDAOや地域コミュニティで活躍しています。Web3界では「NounsDAO JAPAN」の代表を務め、日本最大級のDAO「Ninja DAO」の音声配信を担当しました。X(旧Twitter)では毎晩音声配信を続けるなど、発信力の高さが特徴です。
また、現場主義を大切にし、林業や農業の現場で得た知見を活動に活かしています。そして、鈴木匠氏は「人と人を繋ぐ」を信念に、都市と地方、デジタルとリアルを結び、地方創生の最前線で挑戦を続けています。
人生の旅人 たくみさん Voicy:https://voicy.jp/channel/818341
佐治DAOの特徴やメリット

地域外の人たちとの交流が深まる
佐治DAOでは、地域住民と全国各地の参加者がオンラインでつながり、対等な立場で自由に意見交換できます。
DiscordやSNSを活用することで、都市に住む人々や専門知識を持つ人々も、自宅から佐治町の未来づくりに参加できます。直接佐治町を訪れるのが難しい人でも企画提案や広報支援、寄付や友人紹介など、さまざまな形で貢献できます。
例えば、SNSでの発信の拡散やプロジェクトへのアイデア提供が可能になります。DAOは一方的な支援ではなく、参加者自身が関わりの中で楽しみを見出せるコミュニティであり、地域と外の人の新しい関係づくりの場です。
また、佐治DAOの活動と類似の取り組みが他の地域でも進んでおり、その中でも注目されているのが株式会社あるやうむの活動です。株式会社あるやうむは、NFT技術を活用して地域おこしや地方創生を支援しており、その取り組みは地域活性化に新たな可能性をもたらしています。
佐治地域の活性化を目指せる
佐治DAOは、地域課題の解決を目指し佐治町の新たな活力源になることを目的としています。
人口減少や高齢化といった課題に直面する佐治町では、地域の外からの支援や関心が大きな力となります。DAOでは、参加者が自身の知識やスキルを地域に提供し、地域住民と一緒にプロジェクトを立ち上げ、課題に挑むことが可能です。
例えば、再生可能エネルギーの活用、観光振興、地域特産品のプロモーションなど、多岐にわたるテーマで共同作業が進められます。このように、地域住民とデジタル応援団が共に歩むことで、町の活性化や課題解決に向けた新たな道が開かれます。
地方の生き残りの実験と挑戦に参加できる
佐治DAOは、地方の生き残り戦略の実験場ともいえる存在です。人口が減少するなか、都市への一極集中だけが選択肢ではないという視点から、「地方がどうあるべきか」を問い直す挑戦を行っています。
DAOという先進的な仕組みを取り入れることで、地域の外部からもアイデアや人的資源が集まり、これまでにない多様な取り組みが可能になります。参加者にとっては、最先端の地方創生モデルの一員となり、未来づくりに関わる貴重な機会です。現地への訪問だけでなく、デジタル空間から参加することができ、地域の実験的挑戦に関わることで、自身の知識やスキルの幅を広げることもできます。
佐治DAOの主な活動内容

地域住民や全国の「デジタル応援団」が参加するDAO(デジタルコミュニティ)の作成・運用
佐治DAOでは、地域住民と全国の「デジタル応援団」が一体となり、DAOというデジタルコミュニティを作り運営しています。
Discordを中心に設けられたオンライン空間では、アイデア共有、課題提案、プロジェクトの進捗確認などが行われ、メンバーは対等に意見を交わすことができます。
DAOの特性上、特定のリーダーが指示を出すのではなく、コミュニティ全体が方向性を決めていくため誰もが主役になれる仕組みです。地域の課題を共有し、参加者同士が助け合いながら、現地の活性化につながる施策を企画・実行できる場として、地方創生の新しいモデルを提示しています。
SNS等を積極的に活用した広報・シティプロモーションの展開
佐治DAOは、SNSや音声配信などを活用した広報・シティプロモーションに力を入れています。
DAOマネージャーの鈴木匠氏は、X(旧Twitter)で毎晩音声配信を行い、佐治町の現状やDAOの活動、イベント情報などを発信しています。全国の人々に地域の魅力を届けることで、新たな関心層を呼び込みます。また、参加者自身もSNSを通じて現地の魅力を発信する役割を担います。
こうした取り組みは、限界集落ともいわれる地域の情報を全国、さらには世界へと広げ、外からの支援や訪問者の増加につなげる効果があります。佐治DAOは、このようにデジタルの力を活かした草の根的な広報戦略が特徴です。
再生可能エネルギーを活用した農林業振興及び脱炭素の取組推進
佐治DAOでは、佐治地域の脱炭素先行地域づくりにも貢献することを目指しています。
具体的には、再生可能エネルギーの活用による農林業の振興や持続可能な資源管理の推進です。地域内の農業経営を支えるための再エネ利用の実証実験やエネルギー効率向上の取り組みを進め、持続可能な地域づくりを後押しします。
こうした課題にDAOメンバーが知識や専門スキルを提供することで、地域外からの支援が得られ地域の未来をともにつくる動きが生まれます。脱炭素社会に向けた地方の挑戦にデジタルとコミュニティが関与する、全国でも先進的なモデルの一つです。
株式会社あるやうむについて

株式会社あるやうむは、「NFTによる地方創生」を掲げる札幌発のスタートアップ企業です。
ふるさと納税NFTや地域おこし協力隊DAOの開発を通じて、自治体の財源確保と地域活性化を支援しています。社名はアラビア語で「今日」を意味し、「今すぐ挑戦する地域」を応援する理念を持っています。
株式会社あるやうむ:https://alyawmu.com/
『地域おこし協力隊DAO』とは?

『地域おこし協力隊DAO』は、地域おこし協力隊の制度を活用し、DAOによるデジタルコミュニティを設立する取り組みです。
全国から関心層を集め、地域課題を共有・解決することで、新たな関係人口の創出を目指します。自治体のDX化と地方創生の加速が期待されています。
あるやうむの取り組み事例

あるやうむは、2024年4月に北海道余市町で日本初の地域おこし協力隊DAOを開始しました。
地域資源を活用したNFT発行や観光施策と連携し、地域課題解決に貢献しています。今回の鳥取市佐治町は第二例目で、地方の活性化と持続可能な発展モデルの構築に挑戦しています。
まとめ 佐治DAOの取り組みについて

ここまで、佐治DAOの特徴や仕組み、地域への影響、そして今後の展望について紹介してきました。
佐治DAOは、DAOという革新的な技術を用いることで、地域外からの人材や知見を取り込み、地方が抱える人口減少や高齢化といったさまざまな課題を解決しようとしています。また、Web3の思想に基づく分散型ガバナンスは、地域住民だけでなく地域外の多様な立場の人々がフラットに意思決定へ参加できる点でも注目されています。
今後は、より多くの地域でこの仕組みが応用され、全国各地で持続可能な地域運営のモデルケースとして広がっていくことが期待されるでしょう。地方と都市をつなぐDAOの可能性に引き続き目が離せません。
株式会社リッカ
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