2023年は、ブロックチェーン関連の法改正が活発に議論され、現状の課題を見直す具体的な動きも見られています。特にステーブルコインの国内流通解禁の動きと暗号資産に関する税制改正は、今後のブロックチェーン業界の大きな影響を与えると考えられます。
今回は、2023年9月現在のブロックチェーン関連の主な法改正として、ステーブルコインと暗号資産の税制改正について紹介していきます。
この記事を読めば、ブロックチェーン業界が抱える現状の課題や今後の展望が理解できます。
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2023年6月施行 ステーブルコインの国内流通が解禁へ
2023年6月1日に施行された改正資金決済法によって、国内におけるステーブルコインの発行が可能になりました。
ステーブルコインとは、価格が安定するように設計された暗号資産の一種です。価格を安定させるための裏付けには、法定通貨担保型、コモディティ担保型、暗号資産担保型、アルゴリズム担保型があります。
今回の改正で国内流通が解禁されるのは、日本円による法定通貨担保型のステーブルコインです。
暗号資産取引の課題
暗号資産取引においては、価格変動リスクの高さが課題となっています。送金や決済に暗号資産を用いる場合、価格変動によって安定的な取引ができなくなる可能性があります。
例えば、ビットコインを使ってネットショップで決済をした場合、ビットコインの価格が急落すればネットショップ側は赤字になる可能性があります。また、海外への送金に利用する場合も同様で、ビットコインを送金しても相場が急落すれば受取人が損失を被る可能性があります。
こうした価格変動リスクがあると、暗号資産を使った取引は活性化しません。送金や決済に便利であるという暗号資産のメリットが活かしきれないのです。こうした課題を解決するために期待されているのが、価格が安定したステーブルコインです。
安全な日本円という法定通貨を担保にしたステーブルコインであれば、安心して送金や決済に利用できます。暗号資産の取引が活性化するだけでなく、企業間決済や国際送金がスムーズかつ低コストで実現することも期待されています。
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国内ステーブルコイン解禁のメリット
- 低コストでスピーディな送金が可能になる
- スマートコントラクトによる効率的な決済が可能になる
- 安全性の高い取引が可能になる
それぞれを解説します。
低コストでスピーディな送金が可能になる
ステーブルコインを利用することで、送金に必要な手数料を抑えることができます。通常の送金では、銀行の決済手数料が必要になります。また、国際送金では為替手数料も必要です。
しかし、ステーブルコインを利用すれば、ブロックチェーンによって取引記録が残り、すぐに確認できるようになるため、マネーロンダリング防止や取引効率の向上が期待できます。銀行間取引もスムーズになるため、取引手数料を安くすることができます。特に国際送金では、時間とコストのかかるSWIFTを経由せずに済むため、大幅な手数料コストの削減と送金時間の短縮が期待できます。
スマートコントラクトによる効率的な決済が可能になる
ステーブルコインはブロックチェーン上で取引される暗号資産の一種であるため、スマートコントラクトによる契約や支払いの自動化が可能です。
スマートコントラクトとは、あらかじめ取引条件をプログラム化しておいて、条件を満たせば取引を自動実行するプログラムです。例えば、取引に必要な金額が入金されれば、自動的に商品を発送する仕組みを作ることができます。
スマートコントラクトを使うことで、人手を介した事務作業が不要になるため、取引スピードを向上したり、取引コストを削減したりすることができます。また、契約の執行と支払いが同時に行われるため、支払いの遅延や契約の不履行といったリスクも無くすことができます。
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安全性の高い取引が可能になる
ステーブルコインのブロックチェーン技術はセキュリティが高く、デジタル署名や分散型台帳により取引の透明性と信頼性が向上します。
ステーブルコインの取引履歴は、改ざんが極めて困難なブロックチェーン上に記録されるため、ステーブルコインの支払い情報を書き換えたり、消したりすることはできません。高いセキュリティで安全に運用できるため、不正アクセスやサイバー攻撃から資産を守ることができます。
デジタル署名や分散型台帳などの技術によって、誤送金したり送金した資産の行方がわからなくなったりする心配もないため、双方が安全性の高い取引ができます。
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国内ステーブルコインが解禁されることで期待される未来
国内で日本円に担保された安全性の高いステーブルコインが流通することによって、国内外における電子決済がさらに浸透する可能性があります。低コストでスピーディな処理ができるステーブルコインを使えば、資金回収のスピードや利益率のアップが期待できます。
また、国際取引が活発になることで、輸出産業やインバウンド事業の活性化も期待できます。ブロックチェーンの透明性の高さによって、詐欺やマネーロンダリングのリスクも低減でき、日本のグローバル化がますます加速していくことも期待されます。
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金融庁が令和6年度の税制改正要望を公表
金融庁が令和6年度の税制改正要望を公表しました。この税制改正要望の中で、暗号資産に関する要望が含まれており、その内容は「第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し〔経済産業省が共同要望〕」となっています。
参考:https://www.fsa.go.jp/news/r5/sonota/01.pdf
「第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し」とは?
「第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し」とは、法人(発行者以外の第三者)の継続的な保有等に係る暗号資産について、期末時価評価課税に係る見直しを進めることです。
令和5年度税制改正により、一定の自己発行の暗号資産が除かれることになりました。
しかし、現状では、内国法人が有する暗号資産(発行者以外の第三者)については、税制上、期末に時価評価し、評価損益(キャッシュフローを伴わない未実現の損益)は、課税の対象とされています。
ブロックチェーン技術を用いたサービスの普及やこれを活用した事業開発等のために、暗号資産を継続的に保有するような内国法人にとって、キャッシュフローを伴う実現利益がない(=担税力がない)中でも課税がなされるものとなっていることがWeb3推進の課題となっています。
こうした課題が、今回の「第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し」によって解決されることが期待されます。
ブロックチェーン業界からの税制改正要望
なお、これに先立って、「日本ブロックチェーン協会(JBA)」や「日本暗号資産取引業協会(JVCEA)と日本暗号資産ビジネス協会(JCBA) 」は、税制改正要望を政府に提出しました。
参考:https://jba-web.jp/news/6568
参考:https://coinpost.jp/?post_type=pressrelease&p=475657
その主な内容は以下の通りです。
要望内容 | 備考 | 要望した業界団体 |
---|---|---|
法人税 | 法人(発行者以外の第三者)が短期売買目的以外で継続的に保有する暗号資産について、期末時価評価課税の対象外とすること | JBA JCBA・JVCEA |
分離課税 | 暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができること | JBA JCBA・JVCEA |
暗号資産同士の交換に関する課税の見直し | 暗号資産取引に関する損益は、暗号資産同士を交換したタイミングでは課税せず、保有する暗号資産を法定通貨に交換した時点でまとめて課税対象とすること | JBA JCBA・JVCEA |
資産税 | 相続により取得した暗号資産の譲渡時の譲渡原価の計算について、取得費加算の特例の対象とすることや、相続財産評価について、上場有価証券と同様、相続日の最終価格の他、相続日の属する月の過去3ヶ月の平均時価のうち、最も低い額を時価とすること | JCBA・JVCEA |
金融庁の税制改正要望は法人税の見直しのみに言及
しかし、金融庁が今回まとめた税制改正要望には、法人税の改正要望である「第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し」のみとなっており、申告分離課税の導入や暗号資産同士の交換に関する課税の見直し、資産税の見直しは含まれておりません。
暗号資産取引を活性化したり、Web3企業の発展には、申告分離課税の導入や暗号資産同士の交換に関する課税の見直し、資産税の見直しは欠かせないものであるため、引き続き業界団体は税制の見直しを要望していくものとみられます。
一方、暗号資産のボラティリティの高さから投資家を保護する必要性や暗号資産を用いたマネーロンダリング対策のためには、金融庁や政府が慎重な姿勢を崩すことは難しい面もあるため、申告分離課税の導入や暗号資産同士の交換に関する課税の見直し、資産税の見直しがいつ実現されるのかは不透明な状況といえます。
なお、金融庁が提出した税制改正要望は、12月の税制改正大綱に織り込むかどうかを政府与党が今後検討します。
まとめ 【2023年9月現在】暗号資産関連の法改正と今後の展望について
今回は、2023年9月までの暗号資産の法律関連について解説しました。
大きな動きとしては、ステーブルコインの国内解禁と暗号資産の税制改正要望の公表がありました。
いずれも2023年12月までにより具体的な動きが見えてくる可能性があります。また、暗号資産の法律については、今後もいろいろな改正が考えられますので、最新の情報をチェックしていきましょう。
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