
BaaSとは、Blockchain as a Serviceを略したもので、ブロックチェーン技術を簡単に導入できるようにしたクラウドサービスです。自社でブロックチェーンネットワークを用意したり、開発環境を構築したりすることは非常に手間と技術を要する作業ですが、BaaSを利用することで導入コストや作業負荷を大幅に削減できます。
今回は、BaaS(Blockchain as a Service)の概要やメリット、注意点、将来性などについて解説していきます。
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BaaS(Blockchain as a Service)とは?

BaaS(Blockchain as a Service)とは、クラウド上でブロックチェーン技術を手軽に利用できるようにしたサービスです。
大手のIT会社がブロックチェーンネットワークを構築し、ノードの管理やセキュリティ対策、開発環境の提供などを行います。BaaSを活用することで、自社でブロックチェーン特有の複雑な技術やノウハウを持たなくても、ブロックチェーンを活用したシステム構築やアプリ開発、これらの運用や保守が行えるようになります。
ブロックチェーンは次世代の革新的な技術であり、ビットコインなどの仮想通貨以外の分野での活用も進んでいます。金融やサプライチェーン、医療、製造業、農業、エンターテイメント、教育など、あらゆる分野におけるボトルネック解消やコストダウンを実現できる可能性があります。
そのため、ブロックチェーン導入の目的を明確にした上で、無駄な手間やコストはできるだけ減らし、自社の商品やサービスの本質的な価値の増大に注力することが大切です。
ブロックチェーンとは?
ブロックチェーンとは、複数のノードでデータを分散して管理する仕組みで、極めて改ざんが困難な形でデータを保存できる技術です。ブロックチェーンに一度書き込まれたデータを変更することは現実的に不可能であるため、データを安全に共有・活用することが可能となります。
ビットコインやNFT(非代替性トークン)のような暗号資産を実現した技術として、近年はさまざまな分野でブロックチェーンの活用が進んでいます。
こうしたニーズに応える仕組みが、BaaS(Blockchain as a Service)なのです。
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BaaSを活用する3つのメリット

BaaSを活用することで得られる主なメリットは以下の3つです。
- 開発のコストや工数が削減できる
- セキュリティが高い
- より本質的な部分に集中できる
それぞれを解説します。
開発のコストや工数が削減できる
1つ目のBaaSのメリットは、開発のコストや工数が削減できることです。
BaaSを利用することで、ネットワーク設計からノード構築、スマートコントラクトの実装、運用・保守体制の整備などの実装が効率的になり、開発のコストや工数が大幅に削減できる可能性があります。
BaaSでは、ブロックチェーン開発に必要な環境やツールが予め用意されているため、開発者が環境を構築したり、一からプログラムを組んでいく必要がありません。
開発効率がアップすれば、開発に必要なコストが削減できます。さらに、サービスのリリースや改修に必要な作業がスピードアップするため、サービスの導入や拡張も効率的になります。
セキュリティが高い
2つ目のBaaSのメリットは、セキュリティが高いことです。
ブロックチェーンに記録されたデータは極めて改ざんが困難な状態で保存されますが、サーバーとの通信やアクセス制御、ノードの管理などには脆弱性が生じる可能性があります。BaaSを利用しない場合、ブロックチェーン周辺のセキュリティは自社で確立する必要があります。
一方、BaaSを利用すれば、クラウドサービスを提供する大手IT会社がセキュリティを確保してくれるので、自社で高度なセキュリティ対策を行う必要が無くなります。これにより開発効率がアップしたり、サイバー攻撃への耐性を高めたりすることができます。
より本質的な部分に集中できる
3つ目のBaaSのメリットは、より本質的な部分に集中できることです。
BaaSを導入することで、システム開発や運用・保守の管理、セキュリティ対策などにかける手間やコストを削減できます。これにより人手や予算などのリソースを、サービスの完成度のアップやシステム改善などのより本質的な部分に集中させることができます。
限られたリソースで新規事業の立ち上げや集客、サービスの拡大をしなければならない企業にとって、BaaSの利用はビジネス成功の近道となる可能性があります。
代表的な4つのBaaS
主なBaaSサービスの比較表
サービス名 | 特徴 | 対応ブロックチェーン技術 |
---|---|---|
Accenture Blockchain Hub | – 企業の業務プロセスに最適化されたブロックチェーン環境を構築- 運用に必要なAPIや統合ツールを提供- 既存の業務システム(ERP、CRMなど)との連携を支援 | Hyperledger Fabric、R3 Corda |
AWS Blockchain Templates | – クラウド環境に即座にデプロイ可能なテンプレートを提供- 従量課金制で柔軟な料金設定- ブロックチェーン管理、モニタリング、参照などを行う追加コンポーネントあり | Ethereum、Hyperledger Fabric |
ConsenSys Quorum Blockchain Service | – Microsoft Azureとの連携により、Azure Blockchain Serviceの後継として提供- エンタープライズ向けに最適化されたEthereumベースのブロックチェーンプラットフォーム- スマートコントラクトの開発や管理が容易 | Quorum(Ethereumベース) |
Autonomous Blockchain Solution(Oracle) | – 事前構成済みのテンプレートにより、導入が迅速・簡易- Oracle Cloudと統合し、サードパーティアプリケーションとの連携が容易- 大規模なエンタープライズシステムと高い親和性 | Hyperledger Fabric |
参考:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/r02_07_houkoku.pdf
株式会社リッカでは、国内の各業界や各企業におけるブロックチェーン開発を支援しています。弊社には豊富なブロックチェーン開発の経験とさまざまな業界へのソリューション実績があるため、貴社に最適なご提案が可能です。ブロックチェーン活用のご相談は、株式会社リッカまでお問い合わせください。
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BaaS導入時の注意点

BaaSを導入する際の主な注意点として、ここでは以下の3つについて解説します。
- 完全な分散型システムは構築できない
- デバッグやテストを十分に行う
- 基本的なセキュリティを徹底する
完全な分散型システムは構築できない
ブロックチェーンをベースにしたWeb3の本来の魅力は、非中央集権的で自律分散型のシステムが構築できることです。しかし、BaaSはクラウドサービスを提供する大手IT会社の管理下にあるため、完全な分散型のシステムは構築できません。
より完全な透明性や可用性を実現するためには、パブリックブロックチェーンを利用する方が望ましい場合もあります。
ただし、BaaSを利用することで開発効率がアップしたり、より本質的なサービスの提供に注力できる可能性があります。自社の開発目的が、『完全な分散型システムの構築』でない限り、BaaSを利用するメリットは大きいです。
デバッグやテストを十分に行う
BaaSで構築したシステムであっても、ブロックチェーンに書き込まれるデータに誤りがあったり、スマートコントラクトにバグがあったりすると、ビジネス上の重大な問題に発展する可能性があります。
デバッグやテストを十分に行い、データの誤りやプログラムのバグが発生しないようにすることが大切です。
基本的なセキュリティを徹底する
ブロックチェーンに刻まれたデータは、事実上改ざんが困難な状態で保存されますが、その周辺で動くシステムやアプリにはサイバー攻撃のリスクが伴います。ウイルス対策やID・パスワードの管理、定期的なアカウント運用の見直しなど、基本的なセキュリティ対策を徹底することが大切です。
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BaaSの将来性

ブロックチェーンの導入障壁を下げ、手間やコストを大幅に削減できるBaaS(Blockchain as a Service)は、今後も多くの分野で導入が進んでいくと考えられます。
例えば、サプライチェーンにおけるトレーサビリティの実現や、医薬品や美術品の真贋証明、信頼性の高いメタバースやデジタルツインなどの実現においても、BaaSの活用は進んでいくことでしょう。
特に高いセキュリティが求められる金融や医療、貿易などの分野でBaaSの導入は進みつつあり、デジタル社会の基盤としての重要性は今後さらに高まっていくでしょう。また、ブロックチェーンはIoTやAI、5Gなどとの連携によってさらなる発展が期待されており、これからの社会インフラを支える基幹技術のひとつとして成長していくことが期待されています。
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まとめ BaaS(Blockchain as a Service)のメリットや注意点について

今回は、BaaS(Blockchain as a Service)のメリットや注意点について解説しました。
BaaSを利用することで、ブロックチェーンを活用したシステム開発の効率がアップしたり、開発に必要なコストが削減できる可能性があります。
自社でブロックチェーンを用意したり、一からプログラムを組み始めるよりも、安全性や信頼性の高いシステムを効率的に構築できるメリットがあります。ブロックチェーン開発をご検討の場合は、BaaSの利用も検討してみてはいかがでしょうか?
将来性が期待されるブロックチェーンですが、ブロックチェーン開発には独特のノウハウや注意点があります。そのため、豊富なブロックチェーン開発の実績とさまざまな業界に対するソリューション経験を持つパートナーを選定することをおすすめします。
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