
ビットコインETFは、ビットコインの価格に連動するように設計された上場投資信託(ETF:Exchange Traded Funds)です。暗号資産(仮想通貨)であるビットコインそのものを売買するのではなく、証券口座で取引ができるため、これまでよりも手軽にビットコインに投資できるようになります。
2024年1月、アメリカの米証券取引委員会(SEC)が現物のビットコインETFを承認しました。日本ではビットコインなどの暗号資産は「特定資産」に含まれていないため、2025年5月現在でビットコインETFを売買することはできません。しかし、ビットコインETFが日本で承認されたり、暗号資産関連の税制改革が進んだりすると、ビットコインを始めとした暗号資産市場が活性化したり、ブロックチェーンを活用したビジネスがさらに大きく発展したりする可能性があります。
そこで今回は、ビットコインETFの特徴やメリット、注意点などを解説します。
この記事を読めば、ビットコインETFの将来性もわかります。
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ビットコインETFとは?

ビットコインETFは、ビットコインの価格に連動するように設計された上場投資信託で、2024年1月にアメリカの米証券取引委員会(SEC)が現物ETF11本の上場を承認しました。
なお、ビットコインETFには、先物型と現物型があり、先物型のビットコインETFは2021年に承認されています。2024年1月に現物型のビットコインETFが承認されたことにより、ビットコインの価格は急騰しました。
ビットコイン先物ETFとビットコイン現物ETFの違い
ビットコイン先物ETFとビットコイン現物ETFの違いは以下の通りとなります。
ビットコインETF | 先物型 | 現物型 |
---|---|---|
投資対象 | ビットコインの先物契約(デリバティブ) | 実際のビットコイン(現物) |
価格連動の仕組み | 先物市場の価格に連動(現物価格と乖離する場合がある) | 現物のビットコイン価格に連動 |
保管 | ビットコイン自体は保有しない | 裏付けとなるビットコインを保管 |
SEC承認時期 | 2021年10月(アメリカ) | 2024年1月(アメリカ) |
価格の乖離リスク | 先物価格と現物価格の乖離リスクがある | 現物のビットコインを保有しているため市場価格との乖離は小さい |
レバレッジ取引 | レバレッジ取引が可能な商品もあるため、上級者向け(仕組みやコストが複雑) | レバレッジ取引はなく、比較的初心者向け(価格がわかりやすい) |
一方、ビットコイン現物ETFは、ビットコインを裏付け資産として保有するため、ビットコインの市場価格に連動するように設計されています。また、保管コストを比較的安く抑えられ、レバレッジ取引ができないため、暗号資産の取引に不慣れな初心者の方でも扱いやすい金融商品となります。
なお、本記事の「ビットコインETF」は、基本的に現物型を指すものとします。
ビットコインとビットコインETFの違い

ビットコインとビットコインETFにはどんな違いがあるのでしょうか?主な違いは以下の通りです。
項目 | ビットコイン | ビットコインETF |
---|---|---|
投資対象 | 実際のビットコイン(現物) | ビットコインの価格に連動する上場投資信託(ETF) |
購入方法 | 暗号資産取引所で購入し、ウォレットで保管 | 証券口座を通じて証券市場で売買(株式のように取引可能) |
保管 | 自分で保管(ウォレット管理) | 発行体が保管(証券会社や金融機関) |
セキュリティ | ウォレットの秘密鍵管理や取引所のセキュリティに依存 | 証券会社の管理下にあるため、セキュリティリスクは少ない |
価格 | ビットコインの市場価格に直接連動 | 現物ビットコインに連動(先物型ETFでは先物価格に連動) |
税制 | 総合課税(最大55%) | 申告分離課税(20.315%) |
ビットコインは、ブロックチェーン技術を活用して作られた世界初の暗号資産(仮想通貨)です。暗号資産取引所で購入することができ、自身で管理するウォレットを通じて世界中で送金や決済をすることが可能となります。
なお、ビットコインの価格は、ビットコインの需給バランスや発行量(上限は2100万BTC)に応じて市場価格が決まります。ビットコインを売却した場合、雑所得として総合課税が適用され、所得に応じて最大55%の課税が行われます。
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
一方、ビットコインETFは、証券口座を通じて取引される上場投資信託です。ビットコインそのものを売買したり、送金や決済を行ったりすることはできません。ただし、ビットコインETFのセキュリティは証券会社の管理下にあるため、個人がハッキング対策や秘密鍵の管理をする必要はありません。
現物型のビットコインETFは、ビットコインの市場価格に連動するように設計されています。また、ビットコインETFを売却して利益を得た場合、譲渡所得に分類され税率は20.315%となる申告分離課税となる可能性があります。
ビットコインETFの裏付けとして管理されるビットコインが増えれば、ビットコインの市場価格が安定化する可能性もあります。
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ビットコインETFのメリット

ビットコインETFの主なメリットは以下の3つです。
- 取引がしやすい
- セキュリティリスクが低い
- 税制面で有利
それぞれを解説します。
取引がしやすい
1つ目のビットコインETFのメリットは、取引がしやすいことです。
投資家が新たにビットコインの取引を始める場合、従来は証券口座とは別に暗号資産取引所の口座開設が必要でした。また、ビットコインを管理するためには投資家自身がウォレットを管理する必要もあります。口座開設やウォレット管理などの手間をハードルに感じ、ビットコインを購入していなかった方も多いのではないでしょうか?
一方、ビットコインETFなら証券口座で取引が可能です。ETFを通じてビットコインを保有する投資家が増えれば、ビットコイン価格の安定化や上昇も期待できます。
セキュリティリスクが低い
2つ目のビットコインETFのメリットは、セキュリティリスクが低いことです。
ビットコインを直接扱う場合、取引所がハッキングされたり、ウォレットの秘密鍵を紛失したりして、資産を失う可能性があります。また、送金や決済に失敗してビットコインを失う可能性もあります。
一方、ビットコインETFは証券会社で管理されるため、セキュリティリスクが低くなります。証券会社のIDやパスワードを厳重に管理することや、多要素認証などのセキュリティ対策は必要ですが、ビットコインそのものを個人で管理するよりもセキュリティリスクは低くなると言えるでしょう。
税制面で有利
3つ目のビットコインETFのメリットは、税制面で有利なことです。
ビットコインを直接売買して得られた利益は雑所得に分類され、所得に応じて最大55%の税率が適用されます。
雑所得が20万円以下の場合は確定申告が不要で課税もされません。また、売却益が20万円を超える場合でも、個人の所得額に応じて課税額が決まりますが、所得が年間4000万円を超える場合は所得税と住民税を合わせて55%の税率が適用されるため注意が必要です。
一方、ビットコインETFの売却益は譲渡所得となり、申告分離課税が適用されます。売却益がどんなに大きくても税率は20.315%となるため、利益が大きい場合ほどビットコインETFは税制面で有利となります。
ビットコインETFの注意点

今後、日本でもビットコインETFの取引が承認された場合でも、主に以下の点に注意する必要があります。
- ボラティリティが大きい
- 取引時間に制限がある
- 管理コストがかかる
それぞれを解説します。
ボラティリティが大きい
1つ目のビットコインETFの注意点は、ボラティリティ(価格変動)が大きいことです。
投資した金額が大きく増える可能性がある反面、資産を大きく減らしてしまう可能性もあります。そのため、ビットコインETFに投資をする場合は、他の資産(株や債券、金など)にも分散投資を行って、リスクの少ないポートフォリオを組むことが大切です。
取引時間に制限がある
2つ目のビットコインETFの注意点は、取引時間に制限があることです。
暗号資産取引所で行われるビットコインの売買は、24時間365日休むことなく行われているため、投資家はいつでもビットコインの取引を行うことができます。
管理コストがかかる
3つ目のビットコインETFの注意点は、管理コストがかかることです。
暗号資産取引所で購入したビットコインを自身のウォレットで管理する場合、特別な管理コストは基本的に必要ありません。ビットコインを自身で管理すれば、長期で保有し続けても資産価値が目減りしにくいというメリットがあります。
暗号資産ETFの将来性について

ビットコインを始めとした暗号資産ETFに関する新たな動きから、将来性を確認していきましょう。
イーサリアムETFも承認、ゴールドマンサックスは保有額を20倍に引き上げ
2024年7月、米証券取引委員会(SEC)は、イーサリアム(ETH)現物ETFの承認を行いました。ビットコインETFに引き続き、イーサリアムETFが承認されたことで、多くの投資家が暗号資産へアクセスできるようになっています。
2024年第4四半期には、米投資銀行ゴールドマンサックスのイーサリアムETFへの投資額が2200万ドルから4億7600万ドルと20倍に増加していることが、SECに提出した文書によって判明しています。
参考:https://www.sbivc.co.jp/market-report/crypto/CVgeJ0V2zs5Jp1vnza1lZ11Dk7a2aAqPX8BM4o63
SBI証券などが、「国内における暗号資産ETF等の組成等に向けた提言」を公表
SBI証券などが参加する「国内暗号資産ETF勉強会」は、暗号資産ETF等の組成等を可能とする諸制度の整備や、暗号資産ETF等および暗号資産の現物取引における申告分離課税の適用などの提言をまとめ公表しました。
暗号資産 ETF 等の組成等に係る議論の対象として、主要な暗号資産であるビットコインおよびイーサリアムを優先すべきとしています。
参考:https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/home/crypto_assets_etf_recommendation.pdf
世界初のソラナ現物ETFがカナダ市場へ上場
カナダ・オンタリオ証券委員会(OSC)は2025年4月14日、Purpose、Evolve、CI、3iQなど複数の資産運用会社に対し、世界初となるソラナ(SOL)現物ETFのカナダ市場への上場を承認しました。
カナダ市場では、すでにソラナ現物ETFの取引が始まっています。これを受けて、米国市場でもアルトコインETFの上場が期待されています。
参考:https://coinpost.jp/?p=609033
SOL、XRP、DOGEの現物ETF、数カ月以内にSECから承認の可能性:ブルームバーグ
2025年5月現在、ソラナ(SOL)、ライトコイン(LTC)、ドージコイン(DOGE)、エックス・アール・ピー(XRP)、カルダノ(ADA)、アバランチ(AVAX)、ポルカドット(DOT)、ヘデラ(HBAR)に連動するETFを含む8つの現物ETF申請が米証券取引委員会(SEC)に提出されています。
ブルームバーグのETFアナリストは、2025年末までに様々なアルトコインETFが承認される確率を75%以上と予想しています。
参考:https://www.coindeskjapan.com/290622/
ブラックロックのビットコインETF、1日の流入が10億ドルに迫る
世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)のビットコインETFであるiシェアーズ・ビットコイン・トラストETF(IBIT)には、2025年4月28日の1日の流入額が9億7090万ドル(約1359億円、1ドル140円換算)を記録しました。
一方、フィデリティのFBTCやARKのARKBといった競合ETFは大幅な流出に見舞われています。
ブラックロックのビットコインETF(IBIT)は、運用資産額で世界最大の約58万2,000BTC(8兆円)に上っています。このため、投資家の人気がブラックロックのビットコインETFに集まっている可能性が考えられます。
参考:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-04-28/SVFVCPDWRGG000
まとめ ビットコインETFについて

今回は、ビットコインETFの特徴やメリット、注意点について解説しました。
2025年5月の本記事執筆時点では、日本においてビットコインETFは承認されていません。
ただし、アメリカでは2024年1月にビットコインETFが、7月にはイーサリアムETFが承認され、その他のアルトコインに連動したETFも米証券取引委員会(SEC)に承認申請が行われています。
ビットコインETFの登場によって、ビットコインを証券口座で扱えるようになり、税制面でも有利になるというメリットがあります。アメリカではビットコインETFへ流入する資金が増えており、日本でもSBI証券などが「国内における暗号資産ETF等の組成等に向けた提言」を公表しています。
今後もビットコインETFに関する新しい動きがあれば、本メディアでも紹介していきます。
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