『ブロックチェーンで引っ越しが楽になるの?』
『煩雑な引っ越しの手続きがスマホで完結したら?』
引っ越しの手続きに必要なものは、賃貸契約だけではありません。住民票や免許証の住所変更、電気・ガス・水道・電話などの公共料金の登録変更、職場や学校、病院、保険会社などへも手続きをしなければなりません。もし、スマホのカンタン操作で引っ越しが完結できたら、気分に合わせて住む場所を変え、もっと人生の自由度が高まるかもしれません。
そんな引っ越しのワンストップ化を実現できる可能性を秘めているのがブロックチェーンの活用です。ブロックチェーンを活用すれば、不正や改ざんを防ぎながら関係者間で安全に情報を共有でき、低コストで効率的なシステムを構築できるからです。
今回は、ブロックチェーン×引っ越しの現状や将来の可能性について解説します。
この記事を読めば、複雑な業界構造や契約手続きがブロックチェーンで簡素化できる可能性を理解できます。
株式会社リッカ
参考文献
積水ハウスがNEXCHAINプラットフォームを利用した理由
https://www.nexchain.or.jp/service/reviews/002
国土交通省公募の「不動産IDを活用した官民データ連携促進モデル事業」に「不動産IDを用いた転入居手続きにおける自治体連携DXに関する取り組み」が採択
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000069608.html
日立や積水ハウスなど4者、ブロックチェーンを活用した賃貸契約に関わる実証実験を開始
https://enterprisezine.jp/news/detail/14409
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引っ越し時によくある課題
引っ越しにはさまざまな課題があります。引っ越しには余計なコストや時間がかかっているため、利用者の満足度を押し下げ、引っ越しに関わる業界全体の売上低下も懸念されます。
現状の引っ越しには以下のような課題があります、
- 入居物件の申込書だけでなく、引っ越し業者や電話、電気、ガスなど様々な生活インフラの変更や申し込み等、利用者はいくつもの書類に氏名や連絡先などの記入が必要
- 手続きが面倒で利用者の不満につながる可能性がある
- 申し込みを受ける事業者にとっては、事務手続きコストや確認事項が膨大になる
- 利用者への迅速かつ効率的なアプローチが難しい
こうした課題があるため、引っ越しをする際は、利用者にさまざまな負担やコストがかかるだけでなく、事業者にも膨大なコストや手間がかかっています。引っ越しにまつわる全体的な満足度が低下するため、引っ越しをなるべく控えたり、物件の流動性が低くなったりするリスクがあります。
こうした問題を解決するためには、引っ越しにまつわる情報を連携させ、事務効率を向上する必要があります。利用者にワンストップで引っ越しが完了する仕組みを提供できれば、多くのメリットが期待できます。
しかし、実際に情報を連携させようとしても、
- 不特定多数の企業同士が連携先を探すのは手間がかかる
- 連携先の企業ごとに連携手法を調整する必要がある
- 連携にまつわるシステム開発及びテスト工数が肥大化する
などという新たな課題に直面してしまいます。利便性や効率化などのメリットよりもコストや手間などのデメリットが大幅に上回ってしまい、連携が進まない原因になっています。
情報連携の課題については、他のあらゆる業界でも直面する課題です。企業同士が安心して情報を連携させ、コストや手間などのデメリットを最小化し、メリットを最大化する方法はないのでしょうか?
情報連携のデメリットを最小化し、メリットを最大化できる可能性を持つのが、ブロックチェーンの導入です。ブロックチェーンは不正な情報改ざんを極めて困難な状態にすることができ、複数の関係者間で情報を安全に共有できるからです。
次に、引っ越し手続きにブロックチェーンを活用するメリットについて詳しく解説していきます。
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引っ越し手続きにブロックチェーンを活用するメリット
引っ越しの手続きにブロックチェーンを活用すれば、引っ越し業界が抱える課題を解決できる可能性があります。ブロックチェーンを活用する主なメリットは以下の3つです。
- 情報の安全性と信頼性が向上する
- 連携コストが削減でき、システム開発も容易になる
- 効率的な引っ越し手続きが実現する
それぞれを解説します。
情報の安全性と信頼性が向上する
引っ越し手続きにブロックチェーンを活用する1つ目のメリットは、情報の安全性と信頼性が向上することです。
従来、複数の関係者間で情報を共有するためには、誰かが管理者になり、中央サーバーに置かれたデータを共有する必要がありました。しかし、この方法では管理者が不正に情報を改ざんできる可能性があったり、中央サーバーが外部から攻撃されるリスクがあったりするため、情報の安全性と信頼性が担保できないというデメリットがあります。
一方、ブロックチェーンは複数の関係者間で情報を分散して管理し、お互いに整合性をチェックしあうことで、情報の安全性と信頼性を高めています。特定の管理者や中央サーバーを必要としないため、単一の障害点がなく、外部からの攻撃やシステムダウンのリスクを低減できます。また、ブロックチェーンに記録されたデータは、容易に改ざんができないため、複数の関係者間で情報を安全に共有できます。
ブロックチェーンを活用すれば、引っ越し利用者の情報を自治体や事業者の間で安全に共有することができます。利用者の氏名や住所などの情報を、改ざんが不可能な形で自治体や事業者が活用できれば、利用者は同じ情報を何度も記入する必要がなく、申し込みを受ける側も情報のチェックや手続きにかかる手間やコストが削減できます。
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連携コストが削減でき、システム開発も容易になる
引っ越し手続きにブロックチェーンを活用する2つ目のメリットは、連携コストが削減でき、システム開発も容易になることです。
ブロックチェーンを活用することで、安全に情報が共有できるため、セキュリティコストや中央サーバーの維持コストなどが削減できます。また、複数の関係者が同じ情報を利用するため、データ連携がスムーズになります。
情報が分散され、そのフォーマットがバラバラだと、データを活用することが難しいです。データの正確性が担保できず、どのデータが正しいのかを判断することができないからです。データを連携させようとすれば、正しいデータを特定したり、検証テストを何度も繰り返す必要があるため、メリットに見合わないコストになる可能性があります。
一方、ブロックチェーンに刻まれた正しいデータを活用できれば、システム連携がスムーズになり、開発コストも削減できます。コストや手間といったデメリットが少なくなるため、データ連携を推進することが可能になります。
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効率的な引っ越し手続きが実現する
引っ越し手続きにブロックチェーンを活用する3つ目のメリットは、効率的な引っ越し手続きが実現することです。
ブロックチェーンによって引っ越しに関する情報が安全に共有でき、システム連携をスムーズにできる仕組みが構築できれば、引っ越し手続き全体がワンストップで完結できるようになります。
アパートの賃貸契約で入力した氏名や住所などのデータを、電気やガス、水道、インターネット、保険などの事業者も利用できれば、利用者は同じ手続きを何度も繰り返す必要がなくなります。また、こうした便利なワンストップサービスがあれば、賃貸契約と同時に他の事業者の契約も成立できるので、事業者は利用者に効率的なアプローチが可能となります。
引っ越し手続きが簡略化することで、引っ越しに必要な事務コストが削減できるので、各事業者はより安価な価格でも利益を確保でき、利用者は引っ越し費用を削減できます。
賃貸物件の流動性が向上すれば、引っ越ししたい人が増えることも期待できます。引っ越ししたい人が増えれば、引っ越し業界全体の売上向上が期待できます。利用者はもっと気軽に引っ越しを楽しめるようになり、好きな時に好きな場所に住むことが可能になる未来がやってくるかもしれません
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ブロックチェーン×引っ越しの活用事例
ブロックチェーン×引っ越しの取り組みは、実際に活用が進んでいる事例があります。
『積水ハウスの事例』賃貸入居の煩雑なプロセスをブロックチェーンでワンストップ化
現在、積水ハウスでは賃貸住宅の入居申込みで入力した氏名、住所などの利用者の情報を電気・ガス・光回線・引っ越しの民間企業に連携することで、引っ越し時に必要な手続きを簡素化するサービスを行っています。
利用者が情報の連携に同意することが大前提ですが、情報連携に同意した利用者は引っ越し時に必要な数々の煩わしい手続きが大幅に削減されます。
賃貸入居の煩雑なプロセスをワンストップ化するメリットは以下の3つです。
利便性が向上
入居者は、物件の賃貸借契約時に賃貸入居申込サイト(ShaMaison room Web)から必要な情報を登録することで、賃貸契約はもちろん、引っ越し業者の申し込みや電気、ガス、インターネット、保険などの申し込みを完了することができます。さらに現在では、一部の自治体と連携することで、水道使用開始手続きも一括して可能にしています。
こうした連携がさらに進めば、利用者は引っ越しのためにいろいろな窓口で手続きをする必要がなくなり、引っ越し手続きを迅速に終わらせることができます。
業務効率化
引っ越しにまつわる申し込みを受け付ける自治体や事業者は、利用者の情報を再度入力したり、確認したりするコストや手間を削減できます。書面によるやり取りを削減することで、業務全体のDX化も進みます。
事務手続きや管理コストが削減できれば、引っ越しに必要な費用も安くすることができます。これにより引っ越しのハードルが低くなれば、賃貸契約がしやすくなるため、入居者を増やすことで売上アップも期待できます。
企業間の連携がスムーズになる
ブロックチェーンで構築されたプラットフォームの正しいデータが活用できれば、各企業は自前のシステムとの連携も行いやすくなります。プラットフォームを利用する企業が増えれば、各企業が個別に連携先を模索する必要もなくなります。
積水ハウスが賃貸入居の煩雑なプロセスのワンストップ化を実現しているプラットフォームは、NEXCHAINです。NEXCHAINはすでに2021年1月のサービス開始以降、利用者は13,000名を超え、7事業者19商材を扱っています。
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ブロックチェーン×引っ越しの将来と今後
ブロックチェーン×引っ越しは、国土交通省が推進する不動産IDとの連携によってさらなる効率化が期待できます。
不動産の情報は、住所の記載が統一されておらず、物件の特定が難しいという課題がありました。例えば、番地の表記にはさまざまなケースがあり、『1丁目1番地1号』、『1-1-1』、『1の1の1』、『1丁目1-1』などの表記ゆれがあります。表記ゆれがあると、同じ物件でも別の情報としてシステム上は扱われてしまい、契約がダブルブッキングしたり、古い情報が残り続けたりするリスクがあります。
こうした問題を解消するため、国土交通省では不動産IDを推進しています。1つ1つの不動産に固有のIDを割り振ることで、一意のデータとして判別することが可能になります。
不動産IDの取り組みが浸透し、ブロックチェーンプラットフォームの活用が進めば、各種の引っ越しにまつわる契約を一括で処理することができるため、いずれはスマホひとつで引っ越しが完了できる日が来るかもしれません。
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まとめ ブロックチェーン×引っ越しについて
今回は、ブロックチェーン×引っ越しのメリットや事例について紹介しました。
煩雑な手続きを何度も繰り返す必要がある引っ越しですが、ブロックチェーンの活用が進むことで非常に簡素化されつつあります。
スマホひとつで引っ越しが完了できるようになったら、ホテルを予約するような感覚で住まいを変えられる日がやってくるかもしれません。夏場は避暑地で過ごしたり、冬場は温暖な南の島で過ごしたりすることができたら、不動産業界はさらに盛り上がっていくことでしょう。
株式会社リッカ
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