ブロックチェーンによって社債関連の業務を効率化
環境問題はこれまで様々場面で取り上げられることがありましたが、最近話題となっているSDGsによって環境に考慮した活動を行う企業が増えています。環境や社会問題などに関心が高い企業や投資家が活用する環境債という債権がありますが、こちらに対してブロックチェーン技術を利用する取り組みが行われています。
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債券になぜブロックチェーンが向いているか
ブロックチェーンには、「スマートコントラクト」という事前に取引のロジック(条件)をプログラミングすることで、条件が揃えば取引が自動執行される仕組みがあります。
債券は発行・流通プロセスで発行価格・利率・利払い日・償還日など発行体によって事前に設定される項目があり、契約のロジックを組みやすく「スマートコントラクト」との相性がいいです。
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ブロックチェーンを活用した日本初のデジタル債
2020年に野村総合研究所が社債の発行体として、ブロックチェーンを活用した日本初の第1回無担保社債(デジタルアセット債)と第2回無担保社債(デジタル債)を発行しました。
第1回無担保社債(デジタルアセット債)は社債原簿及び利息(デジタルアセット)について、ブロックチェーン技術を活用して管理し、事務負担の簡素化を図りました。
第2回無担保社債(デジタル債)は社債原簿の管理を行うとともに、従来型の社債と同様に流通市場を確保しつつ、従来型の社債では困難だった社債権者の継続的な把握等を可能にしました。
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デジタル技術を活用した環境債の発行
2022年4月に株式会社日本取引所グループ、株式会社日立製作所、野村證券株式会社、株式会社BOOSTRYが、ブロックチェーン基盤を活用した社債型セキュリティ・トークン(以降、「デジタル環境債」)のスキームを利用し、国内初となる公募ホールセール向けグリーン・デジタル・トラック・ボンドの発行に向けて協業を開始しました。
本デジタル環境債は、日本取引所グループが発行会社となる公募STO(セキュリティ・トークン・オファリング)となっており、発行会社が従来の株式や社債等に代わりにブロックチェーン等の電子的手段を用いて発行するトークンに株式や社債等を表示する「セキュリティ・トークン」で資金を調達する仕組みとなっています。
デジタル環境債を発行するプラットフォームには、BOOSTRYが主導するコンソーシアム型ブロックチェーンネットワークを用いて発行から期中管理、償還までの業務プロセスを電子的方法で完結させ、従来型の社債では困難であった発行会社による社債権者の継続的な把握等を可能としています。
また、デジタル環境債によって調達した資金使途の透明性を高めるため、日立のデジタル技術を活用して、資金充当した発電設備の発電量を自動的に計測し、CO2削減量に換算する仕組みを構築するようです。
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最後に
ブロックチェーンというと「データの改ざんが困難」や「システムダウンしにくい」という特徴がありますが、今回の事例のように「スマートコントラクト」を利用した取引の自動化という面でも有用な技術となっています。冒頭でも記載したようにSDGsによって環境に考慮した活動を行う企業が増えていく中で、社債の発行・管理業務が効率化されることは発行元にも投資元にも大きなメリットになると考えられます。
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