樹脂サプライヤーのDomoとCovestroは、ブロックチェーンテクノロジーを使用したプラスチック業界の循環性に関する共同プロジェクトを立ち上げました。
その際、新興企業であるCirculariseと提携しています。
オランダに本社を置くCirculariseは、サプライチェーンの透明性とトレーサビリティ技術をメイン事業にしている企業です。ブロックチェーンを利用することで、サプライチェーンの透明性を可能にします。
サプライチェーンとは?原材料が加工を経て顧客の手に渡るまでの、供給の一連の流れのこと。供給連鎖とも呼ばれ、文字通りサプライヤー(供給業者)がチェーン(連鎖、数珠つなぎ)になっている状態のこと。
ブロックチェーンを活用したCircularise Plasticsとは?
新たに設立されたCircularise Plasticsプロジェクトグループは、このサプライチェーンの分野での透明性オープンスタンダードを確立することを目指しています。
同社のプロトコルは、データセットやサプライチェーンパートナーを公開することなく、断片化されたサプライチェーンで信頼できるデータ交換を可能にします。
「smart questioning」と呼ばれるCirculariseのテクノロジーは、他のブロックチェーンソリューションとは異なり、企業のプライバシーと機密情報を保護します。
これは、機密性と競争上の優位性が常に維持されることを意味しています。また、この技術により、中央集権的な当事者を信頼する必要がなくなります。
CirculariseのMesbah Sabur氏は下記のように述べました。
「検証はすべてシステム自体で行われるため、ユーザーは中央機関に依存する必要がないという考え方です。代わりに、信頼は1つの中央機関(検証者など)から多くの分散した匿名の参加者に移されます。」
Circularise Plasticsブロックチェーンを活用して業界を活性化
Circularise Plasticsは、7段階の過程を踏み、出荷となります。これにより、原材料をブロックチェーンで辿り、製造から出荷までの製品追跡と出所を管理できます。
最終的に情報所有者(プラスチック生産者/管理者)に受け入れられた場合、OEMで重要な情報にアクセスし、各クライアントに応じてアナウンスを出すことができます。
DOMOのCEO、Alex Segers氏は下記のように述べました。
「レジストリと追跡システムは、グローバルな循環社会の実現に向けた進捗を評価するための鍵となります。ブロックチェーンは、業界でのサプライチェーンの追跡に関して透明性をもたらすことができます。原材料の追跡を可能にすることにより、業界は持続可能性の実践に関して責任を負い、それに関する声明を出し、原産地証明を材料に付加することができます。」
パートナー企業は、ブロックチェーンによってプラスチックサプライチェーンの追跡を実現することで、より確実で透明を実現できると考えています。
主な目的は3つあります。
①選択:サプライヤー、加工業者、製造業者、成形業者、ブランド所有者が、追跡可能な循環素材を選択しやすくする。
②創出:サプライヤーとメーカーが追跡可能な循環素材と製品を作成するためのインセンティブを創出する。
③循環:生産者から消費者へ商品が流れていく物流管理の重要な情報を提供し、製品、材料、部品を回収する。
また、Covestroのポリカーボネート部門の持続可能性およびデジタル戦略責任者であるBurkhard Zimmermann博士は下記のように述べました。
「材料サプライヤーと加工業者、および機器と成型メーカーにとって、Circularise Plasticsへの参加は、プラスチック樹脂、添加剤、着色剤、および生産されるその他の材料に信頼を付加し、生産における材料価値と信頼の向上を意味します。 OEMとブランドオーナーにとっては、環境への影響に関する製品の起源と透明性を明らかにすることにより、持続可能性目標の達成とブランドポジションの強化への道のりを支援します。」
Circularise Plasticsの課題と今後について
ブロックチェーン技術は、マイニングなどにより電力コストがかかります。例えば、イーサリアムネットワーク上の各トランザクションは、米国の2軒の家庭に1日の電力を供給することと同等な電力コストがかかるといわれています。
Sabur氏は、Circularise Plasticsブロックチェーンに関連するエネルギー消費についてコメントにて下記のように述べました。
「最もオープンで安全であり、ユーザー数も多いため、イーサリアムを使用してトランザクションを実行しました。しかし、今後は商業化のために、よりエネルギー効率の高い別のシステムに切り替えることが考えられます。」
現在、イーサリアムとビットコインはプルーフオブワーク(PoW)と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムを採用していますが、イーサリアムはプルーフオブステーク(PoS)と呼ばれるマイニングモデルに移行する計画があります。
プルーフオブステーク(PoS)に移行されれば、イーサリアムのエネルギーコストが90%以上削減されると考えられています。
Circularise Plasticsプロジェクトはまだ初期の段階にありますが、今後の課題は電気エネルギー削減も視野に入れながら、アイデアフェーズとテストフェーズでコンソーシアムに参加する意思のあるバリューチェーンパートナーの関心を集めていくことです。
新規のパートナー企業として参加することにより、最新の情報とリソースにアクセスできるようになり、循環経済のための業界全体のコミュニケーションを共同で作成する機会が提供されます。
まとめ サプライチェーンの透明性を確保するブロックチェーン活用事例『Circularise Plastics』について
今回は、サプライチェーンの透明性を確保するブロックチェーン活用事例『Circularise Plastics』について解説しました。
SDGsの機運が高まるにつれ、原材料の透明性や安全性の確保が非常に重要となっています。
ブロックチェーンを活用することで、サプライチェーン分野でのさまざまな課題を解決できます。ブロックチェーン活用は、今後もさらに注目されていくと考えられます。
コメント