最近耳にする機会が増えてきたトレーサビリティ。トレーサビリティとは、食品や製品などの原材料や流通経路を明確に把握し、情報公開することで、業務効率を向上したり、消費者に安心化を与えたりすることができる仕組みをいいます。
しかし、トレーサビリティのメリットや必要性については、あまりピンとこない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、トレーサビリティについてわかりやすく説明します。
この記事を読めば、トレーサビリティの必要性やメリットがしっかりと理解でき、イノベーションの波に乗り遅れずに済みます。
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トレーサビリティとは?
トレーサビリティとは、日本語で「追跡可能性」という意味の英単語です。
ビジネスシーンにおいては「ある製品がいつどこで誰によって作られていたのか」を追跡できる状態であれば “トレーサビリティを実現できた状態” と言えます。トレーサビリティを実現するためには、製品の原材料の情報から消費・廃棄に至るまでの流通過程の情報を、事業者を横断し統合的に管理することが必要です。
トレーサビリティが実現できれば、ある商品が偽造商品ではなく自社の製品であることを消費者に示すことができたり、流通過程で起きたトラブルも原因箇所をすぐに特定し安全でない製品を回収するなどの対応を迅速に行うことができるようになります。
トレーサビリティができないとどうなってしまうのか?
では逆にトレーサビリティがない状態だと何が問題なのか?トレーサビリティがない食品のサプライチェーンで異物混入が発生したケースを考えてみます。
異物混入が発生し対象商品の回収が発生した場合、回収対象となる商品の製造過程とその流通範囲を明確にしなければなりません。回収による影響範囲を明確にできれば、インシデントの対応コストを最小化することができるからです。
仮にトレーサビリティが一切ない状態を仮定すると、この対応コストの最小化は難しく、流通規模が大きければ大きいほど対応コストも青天井になってしまいます。原因となった製造元の特定も難しく、回収が必要ではないロットの商品まで回収対応が必要になってしまいます。
トレーサビリティにブロックチェーンが活用される理由
商品の製造や流通に関する情報の追跡を行い、インシデント発生時のコストを下げるために必要なトレーサビリティは、ブロックチェーンでの実現が相性が良いとされています。
そもそもサプライチェーン上のデータの蓄積・参照はブロックチェーン以外の技術でも実現可能です。要所ごとにデータ収集を行う仕組みを設け、データベースに登録しておけば実現できるからです。
しかし、この中央集権的なデータ管理手法では、データの共有やデータの信頼性の担保が難しいという点が課題として残ります。通常のデータベースで管理すると一つの事業者が完全に中央集権的に管理することになるからです。事業者が管理している社内情報をサプライチェーンの全体で共有する仕組みを作ったり、セキュリティを確保するためには膨大なコストがかかります。また、データを管理している事業者がそのデータを改ざんしていないという保証もない状態です。
一方、ブロックチェーンは分散台帳技術によって複数の参加者でデータを共同管理し、暗号化技術によって改ざんが難しい仕組みになっています。安全に情報共有ができ、情報の不正な改ざんができず、サプライチェーン全体で公正なデータ管理ができます。
このことからブロックチェーンを用いてトレーサビリティを実現することに期待が高まっています。
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トレーサビリティの種類
トレーサビリティにはチェーントレーサビリティと内部トレーサビリティと2種類に分類されます。
- チェーントレーサビリティ
- 内部トレーサビリティ
それぞれを解説します。
チェーントレーサビリティ
チェーントレーサビリティとは、原材料調達から小売までサプライチェーン全体の複数事業者間での製品の移動が追跡できる状態を指します。
各々の事業者や消費者が、その製品がどの時点でどういう過程を経て手元に来ているのかを把握できます。
チェーントレーサビリティを実現していればサプライチェーン全体での情報を把握することができます。インシデント発生時、製造・流通過程全体を対象に速やかに調査を実施することができます。
内部トレーサビリティ
一方で内部トレーサビリティとは一つの事業者、もしくは生産工場などの限られた範囲内での製造過程の追跡が可能な状態を指します。
チェーントレーサビリティのように事業者間の移動の管理といった大きな目線ではなく、一つの拠点内で他事業者から受け取った材料を次の事業者に出荷するまでに具体的にどのような過程を経ていくのかを追跡できることを目指します。
インシデントが発生した場合、チェーントレーサビリティにより原因となる事業者を特定できます。内部トレーサビリティによって、より具体的な原因を特定・対応することが可能になります。
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トレーサビリティの必要性
ここまでトレーサビリティの概要をみてきましたが、事業運営においてトレーサビリティを担保することはどういった点で必要かを確認していきます。
- 偽物が流通すると事故や故障、ブランド毀損の原因になるから
- 不具合やトラブルの原因究明や改善が早くできるから
- 顧客や消費者に安心してもらえるから
それぞれを解説します。
偽物が流通すると事故や故障、ブランド毀損の原因になるから
トレーサビリティを担保することで、コピー品の流通によるブランド毀損を防ぐことができます。
正規品より質の低いコピー品が流通過程で正規品に紛れ込んでしまうと、消費者に期待されていた価値やパフォーマンスを提供できなくなります。また、コピー品を購入してしまった消費者は、ブランドへの信頼が低下してしまいます。
期待される価値やパフォーマンスが提供できないだけでなく、衛生面でのイメージ悪化や事故による負傷等に繋がれば、事業全体に深刻なダメージを受ける可能性も考えられます。
コピー品が出回るとブランド毀損に繋がる恐れがあります。そのため、正規品をしっかりと管理でき、コピー品をしっかりと判別できるトレーサビリティが必要となるのです。
不具合やトラブルの原因究明や改善が早くできるから
トレーサビリティを担保することで、製品の加工・流通過程において発生したトラブルの原因究明や品質向上のボトルネックになっている箇所を明確にすることができるようになります。
例えばチェーントレーサビリティがあれば、サプライチェーン上の複数事業者を横断してトラブルの原因を突き止めることが容易になります。またトラブル対応において、その影響範囲を早い段階で明確にすることも可能です。
トレーサビリティがない状態だと影響範囲を特定することができず、製品のロスや対応コストが大幅に増えてしまいます。トラブルの対応に時間がかかれば、企業の信頼性にも大きなダメージを受けることになります。
トレーサビリティを担保すれば、不具合やトラブルの原因究明や改善が早くでき、企業としての信頼性も高めることができます。
顧客や消費者に安心してもらえるから
トレーサビリティを担保することで、顧客や消費者に安心感を与えることができます。
例えば半導体を使用した製品に関してトレーサビリティが実現されていないと、偽物の半導体が使用された商品が消費者の手に渡ってしまうことが考えられます。提供された製品が消費者に期待されていたパフォーマンスを発揮できないだけでなく、機器の故障に繋がる可能性もあり消費者目線でも購入の意思決定にリスクを感じてしまう側面もあります。
顧客や消費者に安心して購入してもらうためにもトレーサビリティを実現してサプライチェーンをしっかりと把握しておくことが事業者側にも求められています。
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トレーサビリティのメリット
トレーサビリティの構築はリスク回避だけでなく製品提供上のポジティブな側面にも活かすことができます。
トレーサビリティの主なメリットは以下の3つです。
- 顧客満足度が向上する
- 業務効率や製品の品質が向上する
- ブランド価値が高まりビジネスが成長できる
それぞれを解説します。
顧客満足度が向上する
トレーサビリティのメリット1つ目は、顧客満足度が向上することです。
例えば、スーパーやファストフード店では、生産者や流通過程を消費者が確認できるような事例も出てきています。どこで生産されたものが使われているのか、生産・流通過程でどの程度の時間が経過しているのか等を消費者に公開することで、商品の安全性を感じてもらうことができます。
商品の製造や流通に関する情報を公開することで、消費者に安心感を与えることが可能になり、顧客満足度の向上にも繋げることができます。
こうした事例に関しては、チェーントレーサビリティを担保することで実現することができます。
業務効率や製品の品質が向上する
トレーサビリティのメリット2つ目は、業務効率や製品の品質が向上することです。
内部トレーサビリティを実現しておくことで、製品加工の過程のあらゆる情報を把握できるようになります。すると、業務効率を改善するポイントを探したり、品質向上のボトルネックを洗い出したりする際に役立たせることができるようにもなります。
またチェーントレーサビリティがある状態だと、ある加工工程に届く原材料が2つあった際に、加工効率や後の工程での品質を比較することも可能になります。比較により原材料の調達先を取捨選択することも可能になるので、より優れた品質の実現に繋げることができます。
ブランド価値が高まりビジネスが成長できる
トレーサビリティのメリット3つ目は、中長期的な目線としてブランド価値を高めビジネスの成長に繋げることができることです。
トレーサビリティは、低品質なコピー品の紛れ込みやブランド毀損などのリスクを回避できます。さらに、製品の品質向上や業務効率の改善なども実現します。
品質の高さを維持しつつブランド毀損に繋がるインシデントを回避していくことで、あらゆるステークホルダーからみて安全性と品質の高いと認知されます。
トレーサビリティを担保することで、結果的に企業や製品のブランド価値を向上させることができます。ブランド価値が向上すれば売上向上にも繋がり、事業の拡大や別事業への投資拡大なども期待できます。
トレーサビリティの今後や課題について
トレーサビリティは多くの企業のサプライチェーンで実現されていますが、今後もより多くの業界で広がっていくと考えられます。
特に食品や医療業界のような生産・流通過程における衛生面の信頼性を確保することは、ニーズも明確で消費者からの信頼性に直結するためトレーサビリティがとても重要な役割を担うことができます。生産効率や管理コストを大幅に削減し、より付加価値の高い商品やサービスの提供につながります。
一方、課題としては導入・構築の難しさがあります。チェーントレーサビリティを実現する場合、多くの事業者に協力してもらう必要があり、行政や業界に働きかけるコスト、トレーサビリティシステムの導入に関するコストもあります。金銭的なコストや業務負担をどのように分担するのかも課題となります。
しかし、SDGsやESG投資の流れもあり、業界としてトレーサビリティを実現していく流れも増えていきそうです。一時的なコストや業務の負担を乗り越えて、新しいイノベーションを起こしていくためにも、トレーサビリティの担保は欠かせないものとなってきています。
まとめ トレーサビリティについて
今回はトレーサビリティについて解説しました。
トレーサビリティの担保は、トラブルや偽物が流通するなどのリスク回避や、ブランド価値を高めていく手段としてとても重要になっています。企業の利益最大化だけでなく、消費者体験(CX)の向上にも繋がるため、今後のトレーサビリティの普及や拡大に注目していきましょう。
ブロックチェーン技術を活用することで革新的な業務改善ができるトレーサビリティですが、ブロックチェーン開発には独特のノウハウや注意点があります。ブロックチェーンやトレーサビリティに関するシステム開発は、トレードログ株式会社・株式会社リッカにご相談ください。
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