
2025年も、ブロックチェーンはエネルギー、物流、スポーツなど、さまざまな分野で活用されました。
本記事では、この1年で発表された取り組みの中から10の事例を取り上げ、ブロックチェーンが実際にどのような場面で使われてきたのかを整理します。
この記事を読むことで、2025年におけるブロックチェーン活用の動向を分野別に把握することができます。
2025年のブロックチェーンの活用事例
2025年も、ブロックチェーンを活用した取り組みは複数の分野で発表されています。
活用される用途や導入の背景は分野ごとにさまざまで、記録管理やデータ共有、証明・認証など、目的に応じた使われ方が見られます。こうした取り組みの中から、2025年に発表された事例を整理し、ブロックチェーンがどのような場面で利用されてきたのかを紹介します。
自治体におけるブロックチェーン活用事例

マイナンバーカードを活用した「インターネット投票システム」
本取り組みは、デジタル庁が推進し、「茨城県つくば市」の自治体と連携して実施された事業です。
スパイラル株式会社が提供する、マイナンバーカードを活用した「インターネット投票システム」が用いられました。本システムは、「いつでも」「どこでも」投票できる仕組みを想定して設計されています。
これにより、投票場所までの移動が困難であるなどの理由から、これまで投票を諦めてきた人にとっても、投票機会の確保につながることが期待されています。また、投票データはブロックチェーンで管理され、個人情報と投票内容を直接紐づけない構成とすることで、投票の秘密に配慮しつつ、正確な集計につなげることを想定しています。
これにより、投票場所までの移動が困難であるなどの理由から、これまで投票を諦めてきた人にとっても、投票機会の確保につながることが期待されています。また、投票データはブロックチェーンで管理され、個人情報と投票内容を直接紐づけない構成とすることで、投票の秘密に配慮しつつ、正確な集計につなげることを想定しています。
「世界初・自治体初」防災DXでDID/VC防災実証実験を開始
本取り組みは、日本初のブロックチェーン推進宣言都市である「福岡県飯塚市」において実施されている防災DXに関する実証事業です。
こちらは、株式会社かんがえる防災、Turing Japan株式会社による連携体制に加え、渋谷Web3大学コースのメンバーも参加しており、総勢15名以上のプロジェクトチームで構成されています。
防災分野において、ブロックチェーン技術とDID/VCを組み合わせた取り組みを通じ、新たな活用可能性の検証が進められています。 本プロジェクトでは、命に関わる防災の現場を想定し、DID/VCの発行から認証に至る一連の流れを実証することで、運用上の課題や留意点を明らかにすることを目的としています。
エネルギー分野におけるブロックチェーン活用事例

国連期間が主導する「Energy Compacts Annual Progress Report 2025」において、日本初のモデルケースとして紹介
株式会社UPDATERが提供する脱炭素プラットフォーム「みんな電力」では、ブロックチェーン技術を活用した電力トラッキングシステム「Enection 2.0」により、発電所ごとの再生可能エネルギー由来電力の消費状況を30分単位で記録・証明する仕組みが運用されています。
この取り組みは、2025年10月に日本発のモデルとして、国連主導の「24/7 Carbon-Free Energy Compact」の年次報告書2025において紹介されました。
電力の発電元と消費時間帯を改ざん困難な形で記録することで、再生可能エネルギー利用の透明性を高める取り組みの一例として位置づけられています。
余剰電力の地域循環型トレーサビリティ実証に向けた研究を開始
2025年4月に、株式会社アイ・グリッド・ソリューションズと、慶應義塾大学 未来光ネットワークオープン研究センターが複数の発電所で生み出される余剰電力にリアルタイムの発電場所、消費場所、量のトレーサビリティ技術を活用して新たなサービスを創出するための共同研究を行うことを発表しました。
本研究では、余剰電力にトレーサビリティを付与し、発電場所と需要場所の仮想マッチングを検証します。また、余剰電力を含む再生エネルギーを最大限リアルタイムで消費するために、蓄電池やEVチャージャーを活用したエネルギー消費のタイムシフトについても研究されるようです。
不動産分野におけるブロックチェーン活用事例

不動産業開発、デジタル通貨の実証実験をスタート
2025年11月に株式会社シノケングループは不動産テック分野をさらに推進するため、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社ディーカレットDCPとデジタル通貨(ゆうちょ銀行のトークン化預金)の活用に向けた協業のための基本合意書を締結したことを発表しました。
今回の実証事件では、賃貸管理における月次賃料の支払いをユースケースとして、トークン化預金で決済の自動化や効率化を検証することを目的としています。
ゆうちょ銀行のトークン化預金とは:銀行預金をトークン化することで、銀行預金と同じく安心安全を備えながら、取引記録や契約条件などのデータを連動させ、資金の流れのコントロールや自動化など、さまざまなサービスに活用できるようにする取り組み。
3Ⅾプリンター住宅のNFT化と暗号資産決済による販売構想
2025年7月に株式会社Lib Workは、自然素材と3Dプリンター技術を融合させた新たな住宅「Lib Earth House model B」が完成したと発表しました。
本取り組みでは、設計データをNFT(非代替性トークン)として発行することで、住宅の設計情報や所有履歴の透明性を高め、真正性を証明できる仕組みを構築します。また、暗号資産(ビットコイン)による決済にも対応予定としており、国内外の取引への応用を見据えています。
さらに2025年9月には、アステリア株式会社とNFT基盤開発で業務提携し、3Dプリンター住宅の設計データ等の改ざん防止を実現する「住宅資産デジタルプラットフォーム」の構築に着手することも発表しています。
教育分野におけるブロックチェーン活用事例

デジタル学生証が通学証明書として利用可能に
2025年9月に株式会社サイバーリンクスは、同社が提供するデジタル証明書発行サービス「CloudCerts®」で発行したデジタル学生証が、沖縄都市モノレール株式会社が運営する「ゆいレール」において、通学証明書として利用可能になったと発表しました。
これまで、通学定期券の購入には紙の学生証や通学証明書の提出が必要でしたが、本取り組みにより、スマートフォン上でデジタル学生証を提示するだけで手続きが行えるようになります。
web3.0で実現する「地域×アート×教育」
2025年7月にWeb3.0技術を活用する共創DAO合同会社とデザイン教育を担う専門学校穴吹デザインカレッジが連携し、「地域×アート×教育」の共創プログラムを企画・実施することを発表しました。
本取り組みは、世界的ブロックチェーン「Cardano(カルダノ)」の助成を受けて推進する地方創生プロジェクト「NEO四国88祭」の一環で、参加者が創造活動を行うことで得られるデジタル参加証明(DID/VC)が、Cardanoブロックチェーン上に記録される仕組みを提供します。
スポーツ分野におけるブロックチェーン活用事例

「楽天イーグルス」のチケットの一部を「NFTチケット」にて販売
2025年2月に、楽天チケット株式会社が運営するチケット予約・イベント情報サイト「楽天チケット」は、同社が目指す安全性の高い次世代チケットリセールプラットフォーム構築に向けた取り組みとして、「東北楽天ゴールデンイーグルス 対 埼玉西武ライオンズ」戦(2025年4月1日開催)のチケットの一部を「NFTチケット」として販売しました。
「NFTチケット」はブロックチェーン技術を活用したデジタルチケットで、偽造防止や二重取引防止といった技術的な利点に加え、取引履歴を透明かつ改ざん困難な形で記録できます。
2次流通では販売価格の設定が可能で、期間終了後は同社のNFTマーケットプレイス「Rakuten NFT」で保有することも可能です。
第43回全国都道府県対抗女子駅伝競走大会において新たな応援のカタチ
SUSHITOPMARKETING株式会社は、2025年1月12日に開催された「皇后盃 第43回全国都道府県対抗女子駅伝競走大会」において、ブロックチェーン技術を活用したデジタルツール「チーム応援画像生成ツール」を提供しました。
本ツールは、大会公式ホームページやSNS上のリンクからアクセスでき、応援メッセージを添えた投稿や各チームの応援画像を簡単に作成できます。
作成された画像はNFTとして取得でき、ファンがデジタル空間で応援を形として残すことが可能となり、SNS上での盛り上がりや新たなコミュニケーションの創出に寄与しました。
最後に
今回は、2025年に発表されたブロックチェーンの活用事例の中から、いくつかの事例を紹介しました。今回取り上げた内容は、数ある取り組みの一部にすぎませんが、エネルギー、行政、教育、スポーツなど、さまざまな分野でブロックチェーンを活用したサービスが確認されています。
今後も具体的な事例や技術の活用動向を取り上げ、ブロックチェーンの使われ方を随時紹介していきます。

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