ブロックチェーンが変える食品業界

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ブロックチェーンと食品業界

昨今、食品業界では産地偽装などの問題から「トレーサビリティ」の向上が課題として挙がっています。

主にサプライチェーンにおけるトレーサビリティを保証するために、ブロックチェーンの利用が注目され始めています。食中毒や産地偽装といった問題は日本国内に限らず海外でも大きな問題として取り上げられているようです。

ブロックチェーンを活用した食品トレーサビリティというと、数年前は位置情報とともに入出庫の台帳などを共有する用途が主な適用ケースでした。しかし、最近ではそこに「ブロックチェーンらしさ」を付加した取組も徐々に増えてきています。

ここでは最近の取組の中から、

  1. デジタルIDの付加による食品廃棄物削減
  2. ワインに対するNFTの活用
  3. 従来難しいと言われてきた牛肉切り落としへの適用

をピックアップしてみたいと思います。

食品廃棄物の削減と食品トレーサビリティの向上

従来のトレーサビリティは生産から流通、消費者の手に届くまで各段階で個別に履歴を残す必要がありました。管理にかかわる人や作業内容、管理方法にいたるまで多岐にわたり一貫した管理が難しく、また一連の取引履歴を改ざんすることも容易であるといった問題がありました。

Lloyd’s Register社が中心となって、IBM Food Trust社、上場食品会社Cranswick社、英国食品基準局が参加した英国の「SecQuAL」というコンソーシアムが発足しています。このコンソーシアムは食品破棄物の削減と食品トレーサビリティの向上を目的としています。各食品にデジタルIDを付与することでブロックチェーンを使用し追跡、トレース、モニターが可能になります。食品がいつ収穫されどのくらいの期間冷蔵されたか、適切な温度で保存されたかの監視等ができることで食品の保存期間の予測に役立ちます。また消費者からすると食品がどのように調達されたのか情報の取得、フィードバックも可能になります。

このように生産・流通過程の情報や消費者によるフィードバックから、サプライチェーン上のボトルネックを特定することで食品廃棄の原因特定や解決に貢献できると考えられます。

ワインの管理、NFT化による売買

ジョージア(旧グルジア)共和国では自国産のワインに対してブロックチェーン技術を活用することでトレーサビリティの向上と売買を行う、としています。

ジョージア政府はブロックチェーン取引プラットフォームとしてノルウェーのWiV Technologyと連携を行いました。このプラットフォームを利用することで産地などの来歴とワイン自体を示すNFTをミントし、愛好家たちが出所の追跡や紐づいたNFTの売買が可能になることを目指しています。

FTはデジタル上で「唯一性」を担保する技術ですが、これをフィジカルな世界に適用しようとすれば、自ずとモノの「唯一性」をも担保する必要が出てきます。ワインでいえば、中身の入替え、瓶や栓の差替え等の問題を如何にして克服するか、がポイントになるかもしれません。

プレミアムな加工食品を扱う業界全体が興味深く見守っていることと思います。

ナチュラルビーフカットへのBC技術採用 産地~製造プロセスの情報を透明化

Carrefour社(仏)は、アルゼンチンでHuella Naturalブランドとして販売されている牛肉に対してIBMのブロックチェーン技術を導入しました。これにより生産から流通のすべての段階を追跡することが可能となります。

同社ではフランス、イタリア、スペイン、ベルギーなどの国で、牛肉以外にも乳製品や野菜、鶏卵などの多くのジャンルに対してブロックチェーン技術を導入し「食品トレーサビリティ」の向上を図っています。その数は38のカテゴリー、1200以上の商品が生産から流通までのすべての段階を追跡可能になっています。

高級ブランド品に限らず、食品にも「ブランド品」が流通している昨今では消費者が安心して価値のある食料品を入手・消費できるために重要な技術となっていると言えるのではないでしょうか。マンゴーや卵などに比べて難しいと言われていた生肉にも適用範囲が広がったことで、食品業界へのブロックチェーン導入にさらなる弾みがつくかもしれません。

最後に

食品業界では多くの国と地域で問題となっている食品偽装といった事柄に対してブロックチェーン技術の導入が進んでいます。「トレーサビリティ」の向上が図られることで生産者だけでなく消費者に至るまで、安心・安全な情報が得られる世界が形作られていくと想定されます。

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