【知的財産×ブロックチェーン】研究者の知的財産を保護する仕組みをリリース
概要
コラボレーション研究の効率化に取り組むスタートアップのAssembl Incは、研究者向けのブロックチェーンを用いた分散型タイムスタンプサービス「Assembl Chronos」をリリースした。ベータ版のうちは無料で利用することができます。
「Assembl Chronos」は、分散型ソフトウェアを用いることで研究コミュニティにおけるグローバルな研究協力を促進することができる。また、ブロックチェーンを用いたタイムスタンプにより、研究盗用のリスクまで低減することが可能です。
研究者向けのブロックチェーンの活用が検討された理由
科学研究は、先人たちのアイデアから始まり、アイデアを積み重ね、様々な仮説、検証がなされ、今があります。現代の科学の進歩は先人たちの積み重ねの上にあることは言うまでもありません。しかし、アイデアは無防備な知的財産のひとつでもあります。そのため、今までの歴史の中でアイデアの盗用が発生していました。
現代においては、ITの進歩により、誰もが新たなアイデアに簡単にアクセスができ、コピー&ペーストでデータを転用できる時代となりました。そのため、故意、偶然も含め、研究のクレジットが悪用されることも。今回のAssembl Chronosは、研究プロセスの信頼性と公平性を確保し、上記のような状況を変える機会となることが期待されています。
科学研究におけるブロックチェーン活用の肝
科学研究において、成果以上に重要なのが研究プロセスです。研究の成果を出すこと、思ったような成果が出なかった双方に研究プロセスは存在します。つまり、研究者にとって研究プロセスは自身の存在証明(価値証明)を成す重要なピースといえます。このタイムスタンプサービスは、その研究プロセスを保護するための取り組みの一つです。
アイデアは盗用されやすく、盗用を証明しにくいといった特性を持ちます。しかし、研究プロセスを保護する仕組みが整えば、グローバルチームでの研究でも自身のアイデアや研究プロセスの信頼性・公平性を証明・主張することができます。
科学研究におけるブロックチェーンで保護する情報
Assembl Chronosはタイムスタンプ(タイトル、文書の説明、関連ファイル)を構築した後、ユーザーはタイムスタンプデータのフィンガープリントをブロックチェーンに書き込みます。
※フィンガープリント:デジタルコンテンツの同一性を確認するために使用される値
下記画像が実際にフィンガープリントをブロックチェーンに書き込んでいる様子です。
引用:Press Release: Assembl Chronos Beta Launch
このタイムスタンプがブロックチェーンに書き込まれることで、たとえ開発会社であるAssembl Incが倒産などの会社消滅した場合でも、タイムスタンプのデータは永遠に生き続けることができます。
研究の悪用事例
Assembl Incのプレスリリースでは、死者のアイデアを、別の人が発表したという事例を紹介しています。日本でも大学教授が指導学生の修士論文を盗用した事例や、学生が教授の論文を盗用した事例などがあります。研究不正に関するガイドラインや研究不正と認定された事例については、国立研究開発法人日本医療研究会開発機構などで参照することができます。
国立研究開発法人日本医療研究会開発機構 HP:https://www.amed.go.jp/
研究不正と認定された事例:https://www.amed.go.jp/content/000033945.pdf
不正があった際に不利益を被るのは、不正した人だけではありません。不正を起こさないための教育・対策も必要ですが、仕組み(ブロックチェーン)で保護するという今回の試みは不正研究の抑制にもつながることが期待されます。
科学研究へのブロックチェーン活用で目指す未来
Assembl Incは、Assembl Chronosを通して、科学研究の分野を透明性、公平性のあるものにすることを目指しています。Assembl Chronosはアイデアや研究成果・プロセスを安全で不変のタイムスタンプを提供することで、研究に従事する人たちへ信用を担保できる未来を創り出します。
Assembl Incの共同設立者であるJacob N. Pedersen氏は、下記のように述べ、
Chronos solves the prisoner’s dilemma of scientific collaboration, and incentivizes giving proper credit.
誰が、いつ、何を発見したのかを不変情報として記録することで研究者を支援し、科学研究へ従事する人たちに研究へ集中できる公平性ある未来創造を示唆しています。また、ユーザービリティも優れており、会員登録やサインアップをしなくても、誰でもAssembl Chronosの証明書を検証することが可能です。そのため科学研究に従事する人たちは、広く信用を構築していくことが可能になるでしょう。
今後は、所属学会の講演記録や投稿論文(査読論文含む)だけでなく、ブロックチェーンに書き込まれた研究プロセス・成果があなたの権威性・信用を生む実績になるかもしれません。
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