ブロックチェーンといえば仮想通貨のイメージが強く根付いていますが、近年では仮想通貨以外の分野にも幅広く活用されています。今回は、ロボット業界に活用されている事例を紹介します。
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災害ロボットの安全な通信をブロックチェーンで確保
マサチューセッツ工科大学とマドリッド工科大学は、ブロックチェーン技術をロボット同士のコミュニケーションツールとして使用することで、セキュリティを確保できるという研究結果を発表しました。
この研究は自立走行方のドローンによる消化活動において、消化を指揮するリーダーロボットがハッキングされたこと想定し実施されました。
指示を出すリーダーロボットは複数あり、各リーダーロボットには一定数のトークンが割り振られ、このトークンを利用してドローンに指示を出します。
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しかし、リーダーロボットが指示を出す際に他のリーダーロボットと異なる偽の指示を出した個体はトークンを没収される仕組みが組み込まれています。
これによってリーダーロボットがハッキングされた場合に、偽の情報を指示し続けることができなくなります。
また、過去の指示が改竄されるケースについても、ブロックチェーンを活用することにより極めて困難になります。
本研究について、ロボット活用の先進的な研究やロボットイベントでの解説でも知られる株式会社MIDアカデミックプロモーションズの松坂要佐様(工学博士)からは以下コメントをいただきました。
松坂様コメント:群ロボットのなかにビザンチンロボット(センサの故障やハッキングによって異常な提案をするようになった個体)が含まれる場合の集団意思決定問題をブロックチェーンのスマートコントラクト技術によって解決した研究です。同様の問題はコネクテッドカーにおけるV2V通信においても発生すると考えられ、応用範囲の広い面白い研究と思います。現時点ではシミュレータ上での検証にとどまっていますが、計算コストのかかるPoWではなくPoAを採用するなど実用性にも配慮されており、今後の実用化が期待されます。
松坂様プロフィール:松坂要佐(株式会社MIDアカデミックプロモーションズ、工学博士)早稲田大学助手、南カリフォルニア大学客員研究員、産業技術総合研究所研究員を経て現職。ロボットシミュレータ開発やセキュリティ教育などを事業として行う。
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スマート工場の実現に向けたブロックチェーンの活用
株式会社Datachainは、大手グローバルメーカーと共同でスマート工場の実現を見据えたロボットデータ共有PF構築に関する実証実験を実施しました。
近年、工場の工作機械や生産ラインなどにコンピュータネットワークを接続し、生産性や品質管理の向上を図るスマート工場が進んできています。
Datachainが行った実証実験は、システム基盤にHyperledger Fabricを活用して設備状態把握の確認コスト低減や、トラブル発生時の対応迅速化における有効性を確認するために行われました。
Hyperledger Fabricが選ばれた理由として、トレーサビリティやサプライチェーンの可視化等の関連領域においてグローバルでも実績があり、共有するデータに関して、適切なアクセスコントロール(情報の秘匿)ができることが挙げられています。
これまでは工場に設置されているロボットに対して、製造企業本社・工場・ロボットメーカー・システムメーカー等の複数の関係者が存在する中で、日々のメンテナンスやトラブルの対応を行っておりましたが、各対応に必要な情報はそれぞれの会社ごとに管理されているため、対応精度の向上や迅速化、設備トラブルの未然防止などについて課題が残り続けていました。
そこでブロックチェーン技術を活用することによって、企業間での情報共有が容易になり、さらに情報の改竄を困難なものとするネットワークを構築が可能となります。
本実証実験を通して、設備状態把握の確認コスト低減や、トラブル発生時の対応迅速化における有効性が認められたと発表されました。
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最後に
今後、AIやロボットの働きによってあらゆる人が快適に暮らせることを目指す「超スマート社会」society5.0の実現に向けて、正しい情報の共有や管理は必須となります。この課題を解決する方法の1つとしてブロックチェーン技術が注目されています。
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