香港で偽薬の急増を阻止するブロックチェーン

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香港で偽薬の急増を阻止するブロックチェーン

偽薬防止医薬品イメージ画像

製薬業界は、偽造医薬品に埋もれており、それらを識別するのも難しくなっています。

最新技術やデジタル戦略等について発信するメディアのCDOTrendsは、香港では市民が偽造医薬品が何であるか理解が不足しており、ジェネリック医薬品と偽造医薬品が混同している現状であると明らかにしました。

 

さらにCDOTrendsはアジアで最大のヘルスケアサービスグループの1つZuellig Pharmaによる最近の調査結果についても触れ、Zuellig Pharmaが、ブロックチェーンプラットフォームを搭載したeZTrackerスマートフォンアプリを開発したことを報じました。

 

CDOTrendsが掲載したレポートによると2018年だけでも、模倣品の押収件数は前年より63%増加しており、昨年香港の税関は、10年間で最大規模の1380万香港ドルの偽造医薬品を押収したと発表しました。

そして、COVID-19によって世界中で健康意識が高まっている今、偽造医薬品の流通量は更に増えると見込まれています。

 

国内の偽造医薬品状況

 

日本製薬工業協会によると、国内でも個人輸入などによる偽造医薬品の流入と健康被害が確認されており、税関による医薬品の知的財産侵害物品の輸入差止めは、2017年度までの5年度合計で23万2000点を超え、依然として多くの偽造医薬品が輸入されている実態が明らかになっているとされています。

(平成29年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(財務省)

 

偽造医薬品を見分ける必要があるとわかってもどうやるか分からない

 

偽造医薬品は、間違った成分が含まれている製品、有効成分が不足もしくは含まれていない製品、本来の中身とは異なる製品等のことを指します。

 

冒頭の調査結果では、医薬品の検証が必要かどうかの質問について、香港の人々の91%は必要性を重視していると回答しました。

また、別の設問では調査対象の半分以上である58%が医薬品の検証をする自信がないという回答結果となり、偽造医薬品かもしれないと思っても、偽造医薬品かどうか判断する方法が分からないという状況にあることが調査結果から判明しました。

 

Zuellig Pharmaの香港およびマカオの最高経営責任者であるAndi Umbricht氏は、偽造医薬品に対する対応について以下のように述べています。
「この研究は、偽造医薬品に対する国民の理解を高め、彼らに自分自身を守る方法を提供することの緊急の必要性を示しています。偽造品と戦うための予防策を講じるのは全員の責任です」

 

eZTracker ブロックチェーンで偽造医薬品を簡単に判別できるようにする

 

eZTrackerは、ブロックチェーンテクノロジーを介して偽造医薬品の問題に対処することを目的としています。

eZTrackerは、簡単なQRコードのスキャンで、医薬品が正当なメーカーからのものかどうか、香港での流通が承認されているかどうかをすばやく確認することができるモバイルアプリです。これにより、消費者は購入時に薬を偽造医薬品かどうか簡単に確認できます。

 

消費者がQRコードから確認できる内容は、合法的であるかどうか、どこで製造された物かをはじめとした医薬品に関連する情報です。医薬品の成分やバッチ番号等の情報は消費者や病院、ドラックストアに出荷される前の、製薬会社から倉庫で受け取った際にブロックチェーン上に保存されます。

 

消費者等が医薬品のQRコードをスキャンした際に、ブロックチェーン上に記録がない場合は偽造医薬品であると判断でき、そもそもQRコードがない場合偽造医薬品であると判断できるなど消費者は偽造医薬品から身を守ることが可能となります。

さらに、医薬品が偽造医薬品だった場合、製造業者とZuellig Pharmaに対してアラートが自動的に入るよう設定されており、偽造医薬品がサプライチェーンに入った場所を即座に識別できます。

 

Zuellig Pharmaは、検証の範囲を拡大するため、他の製薬会社とも協力しています。現在、同社はグローバルな製薬会社であるMerck Sharp&Dohme(Asia)(MSD)と協力して、ユーザーがアプリを介してHPVワクチンを検証できるようにしています。

 

 

COVID-19の影響もあり、医療分野でブロックチェーンが続々と活用されています。そのほかの事例は、 医療に関する記事 からご覧いただけます。

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