コロナ禍が終わり、観光業界は活気に満ちています。京都や鎌倉などの人気観光地には人が溢れかえる一方、集客に苦戦する観光地も多いです。観光地の知名度が低かったり、キラーコンテンツとなる施設が少なかったりする地域では、観光客の誘致に課題を抱えています。
そんな観光業界の課題を解決すると期待されているのが、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)の活用です。NFTを活用すれば、日本の観光業界、特に地方の観光地は大きなビジネスチャンスを掴めるかもしれません。
今回は、観光×NFTのメリットや実際の活用事例について解説していきます。
この記事を読めば、観光×NFTの具体的なイメージが掴めます。
株式会社リッカ
<<あわせて読みたい>>
【NFTとは?】ブロックチェーンとの関係性や活用事例をわかりやすく解説
観光業界が抱える課題
観光業界が抱える課題にはさまざまなものがあります。主な課題は以下の3つです。
- 観光客の動きが偏ってしまう
- リピート訪問のきっかけが作りにくい
- 紙の印刷や広告などにコストがかかる
それぞれを解説します。
観光客の動きが偏ってしまう
観光業界が抱える1つ目の課題は、観光客の動きが偏ってしまうことです。
観光客の動きが活発になっても、有名な一部のエリアやスポットに集中してしまう傾向があります。こうした観光客の動きの偏りは、人気のエリアではオーバーツーリズム対策が必要となる一方、知名度の低いエリアでは観光客の恩恵にあずかれません。
観光客にとっても、オーバーツーリズムは深刻な問題です。ゆっくりと観光地の雰囲気を楽しんだり、気ままに食事をしたりする余裕がなく、混雑とストレスでせっかくの観光で疲れてしまうというデメリットがあります。
また、知名度が低くても魅力的な観光スポットは数多くありますが、そこに訪れるきっかけがないため、観光の満足度が高まらないという課題もあります。
リピート訪問のきっかけが作りにくい
観光業界が抱える2つ目の課題は、リピート訪問のきっかけが作りにくいことです。
一部の観光地では、リピート訪問のきっかけが作りにくいという課題があります。せっかく来訪してくれた観光客がいても、長期的な関係性を維持する手段が乏しいからです。
魅力的な景勝地や観光スポットがあっても、繰り返し観光客を来訪させることができなければ、いつか訪れたことも忘れられてしまう可能性があります。来訪した印象が残り続けなければ、他の観光地に集客を奪われることになります。
リピート訪問のきっかけ作りは、知名度の低い観光地ほど重要です。リピート訪問のきっかけを作るためには、一度訪れた観光客との継続的なコミュニケーション手段を確立し、また行きたいと思ってもらえる魅力的な発信を観光客に届け続ける必要があります。
紙の印刷や広告などにコストがかかる
観光業界が抱える3つ目の課題は、紙の印刷や広告などにコストがかかることです。
従来の観光誘致では、パンフレットやスタンプカード、割引券などの紙媒体を発行することが多いため、コストがかかり続けるという課題があります。紙媒体に頼れば紙ごみも増えてしまうので、観光地の自然や地球環境を守る取り組みとは相反する活動となります。
また、新しい観光客を呼び寄せるための手段としては、旅行ポータルサイトや旅雑誌、TVCMなどに限られてしまうため、広告費の捻出も大きな負担となります。広告をかけ続けなければ集客力が落ちてしまうため、広告をやめられなくなってしまいます。
観光誘致のコスト増は、地域の活性化に必要な予算から捻出しなければならないため、地域経済への還元が減ってしまいます。他の観光地とのPR合戦になってしまえば、さらなるコスト負担増につながる可能性もあります。
こうした観光業界が抱える課題を解決できる可能性を秘めているのが、ブロックチェーン技術を使ったNFTの活用です。次に、観光×NFTのメリットを解説していきます。
<<あわせて読みたい>>
ブロックチェーンとは?分散型台帳の基礎や仕組み、セキュリティ、活用法を図解でわかりやすく解説!
観光×NFTのメリット
観光にNFTを活用することで得られる主なメリットは以下の3つです。
- 新たな価値や体験の提供で観光客を増やせる
- 観光客をさまざまな場所へ誘導できる
- NFTを通じてリピート訪問を促せる
それぞれを解説します。
新たな価値や体験の提供で観光客を増やせる
観光×NFTの1つ目のメリットは、新たな価値や体験の提供で観光客を増やせることです。
観光地で使えるお得な割引チケットや無料クーポンを、NFTとして発行することができます。誰でも手軽にスマートフォンでNFTを受けとることもできるので、すぐに使えてチケットやクーポンを紛失することもありません。
例えば、ご当地キャラのNFTを発行したり、来訪の記念を残せるNFTを発行したりすることで、NFTコレクションを楽しむことができます。コレクションしているNFTが話題のきっかけとなり、地元の方や同じNFTを持っている方との交流のチャンスも増えるかもしれません。
また、人気の高いNFTは、NFTマーケットプレイスで売買できる場合もあります。無料でもらったNFTが、将来的に高値で取引される可能性もあります。
NFTを活用すれば、観光客に今までにない新たな価値や体験を提供できます。NFTを活用した取り組みが話題になって拡散すれば、新たな観光客の流入も期待することができるでしょう。
<<あわせて読みたい>>
観光客をさまざまな場所へ誘導できる
観光×NFTの2つ目のメリットは、観光客をさまざまな場所へ誘導できることです。
NFTはスマートフォンで楽しめるスタンプラリーとして活用することもできます。観光客は見どころのスポットを漏らさずに周遊できるので、旅の体験価値を高めることができます。紙のスタンプカードが不要なので、旅の途中で紛失する心配がなく、紙ごみも減らすことができます。
スタンプラリーを活用すれば、観光地としてもメリットがあります。一部の人気スポットだけでなく、レアな観光スポットに観光客の流れを分散させたり、地元の公共交通機関やお店、施設などの活用も促せます。また、NFTなら紙を大量に印刷する必要もないため、コストを抑えた取り組みを繰り返し実施することが可能です。
例えば、地元のローカル鉄道の終点で獲得できるスタンプを設定すれば、人流を分散させて地域の隅々にまで活気を届けることができます。
NFTなら状況によってスタンプラリーの内容を変更することもできるので、紹介するスポットやおすすめしたいお店が増えても、低コストかつ柔軟に対応することができます。
<<あわせて読みたい>>
リピート訪問を促せる
観光×NFTの3つ目のメリットは、リピート訪問を促せることです。
観光客にNFTを発行しておけば、旅が終わった後でも、特定のNFTを持つ方にお得な特典や新しい旅の提案を届けることもできます。観光客にとっては、自分が訪れたことがあるエリアやスポットからのお知らせになるため、旅を思い出すきっかけになります。
例えば、まだ訪れていないスポットの魅力やお得なクーポン情報をお知らせできれば、観光客がリピート訪問する確率を高めることができます。リピート訪問させることができれば、現地との親近感が増し、より深い観光体験を味わうことができるでしょう。
また、観光地としても安定的な人流や活性化が期待でき、紙の無駄を削減したり、余分な広告費を削減できたりする可能性もあります。何度も訪れてくれるファンが増やせれば、地域の持続的な発展も期待できます。
NFTは観光業界のDX化を促進するだけでなく、地方活性化の起爆剤になる可能性を秘めていたり、都市部への一極集中を是正したりする効果も期待できます。少子高齢化と人口減少が進むこれからの日本において、国内観光の活性化とインバウンド観光客の獲得は、日本の持続的な成長を維持するためにも欠かせない取り組みといえるでしょう。
次に、観光業界で進むNFT活用の実際の事例をご紹介していきます。
<<あわせて読みたい>>
観光×NFTの最新国内事例
長野県×「鉄腕アトム」NFTカード
長野県では、2024年3月29日、県内の観光地や観光資源と「鉄腕アトム」がコラボレーションしたNFTカード「Astroboy × Japan NFT」を作成しました。NFTの発売は5月上旬の予定です。このプロジェクトは、海外における「NAGANO」の知名度向上と、県内へのインバウンド誘客を目的としています。
NFTで紹介される観光地などは、長野県国際観光推進協議会に加盟している県内20市町村となります。NFTカードは、トレーディングカードとして収集やゲームを楽しめるほか、カードに記載されている市町村の魅力を知るきっかけになります。また、すべてのNFTカードを展示するメタバースミュージアムも構築される予定です。
地域経済や国内観光マーケットは、コロナ禍によって大きく落ち込みましたが、NFTを活用することで世界の市場に向けて長野の魅力を発信していきます。また、NFTカードの売上の一部は長野県国際観光推進協議会に寄付され、地方創生活動に役立てられます。
https://www.pref.nagano.lg.jp/dx-promo/happyou/240328press.html
インバウンド観光を盛り上げる「Japan Travel NFT」
2024年1月、インバウンド訪日客向けに、日本の観光を盛り上げる新プロジェクト「Japan Travel NFT」が始動しました。観光コンテンツをお得に体験できる特典が付帯したNFTアートが販売されています。第1弾地域は山口県山口市および萩市で、「明治維新について学ぶ旅」がコンセプトです。NFTアートのデザインは、吉田松陰や高杉晋作など5人の明治維新志士たちがモチーフとなっています。
山口市や萩市で使える主な特典としては、ホテルで使える館内利用券や文化財施設の無料入場券、売店や施設で使える割引券などとなっており、今後はさらに提携施設が増えていく予定です。
Japan Travel NFT(JTN)は、日本の地域活性や観光客誘致を主な目的として、その地域の特徴をモチーフとしたNFTアートを制作します。購入したNFTは、NFTをコレクションして楽しむだけでなく、その地域で使えるお得な特典が付帯されているので、観光地への来訪を促進することができます。
Japan Travel NFTでは、NFT購入者、未購入者に関わらず参加できるオンラインコミュニティをdiscordにて開設し、Japan Travel NFTの最新情報やお得に旅をする方法などを発信しています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000135294.html
洞爺湖花火NFT
2024年3月24日、北海道の洞爺湖で行われる「洞爺湖ロングラン花火」で自分たちでプロデュースしたオリジナル花火の打ち上げ体験ができる特別なNFT「洞爺湖花火NFT」が発売されました。2024年9月7日(土)に、NFTホルダーオリジナル花火の打ち上げが体験できます。
当日は、観覧船に乗って洞爺湖の上から自分たちが作った花火を鑑賞できます。また、花火製造ワークショップへの参加権もついているため、花火作りの面白さや奥深さに触れることもできます。
創業100年を超える伝統をもつ花火製造所がワークショップや打ち上げを行うので、より一層魅力的で特別な体験ができます。花火の色や大きさは、NFTホルダーのコミュニティ内で意見を出し合いながらカタチにしていく予定です。
参加できるのは最大で80名までとなりますので、ご興味のある方は早めに検討しましょう。
関西周遊NFTスタンプラリー
2024年4月12日、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は、関西商工会議所連合会」との連携により、関西各地の商工会議所管内の観光施設等を巡る「関西周遊NFTスタンプラリー」を開始しました。大阪・関西万博が終了する2025年10月13日(月)まで実施される予定です。
関西周遊NFTスタンプラリーは、関西各地の商工会議所管内の観光施設等を訪れ、そこに設置されたNFTスタンプ獲得用の二次元コードをアプリで読み取ることで、各施設のオリジナルNFTスタンプが獲得できます。獲得したNFTは、アプリ内にコレクションされていきます。
第一弾は、和歌山城、京都の福知山城、大阪の水間寺などのNFTスタンプを獲得できます。今後は参画する商工会議所が増えることで、関西県内のさまざまな観光施設のNFTスタンプが獲得できる予定です。
https://www.expo2025.or.jp/news/news-20240411-02
NFTを活用した観光支援や地方創生の最新情報はブロックチェーンEXPOで
毎年、春と秋に開催されるブロックチェーンEXPOでは、NFTを始めとした最新のブロックチェーン情報をキャッチアップできます。NFTを活用した観光支援や地方創生のための製品やサービスも数多く出展されますので、最新事例をチェックしたい方は、ブロックチェーンEXPOに参加してはいかがでしょうか?
ブロックチェーンEXPOは、事前の来場登録をすれば無料で参加することができます。
https://www.nextech-week.jp/hub/ja-jp/visit/bc.html
<<あわせて読みたい>>
【ブロックチェーンの7つのメリット】デメリットもわかりやすく解説
まとめ 観光×NFTについて
今回は、観光×NFTのメリットや事例について解説しました。
NFTを活用すれば、観光業界や観光地が抱えるさまざまな課題が解決できる可能性があります。観光地にちなんだNFTを集めたり、割引クーポンやスタンプラリーを使ってお得に旅を楽しんだりすることができます。国内外の観光客の動きを分散化したり、リピート訪問を促したりすることで、地方の活性化やインバウンド需要の取り込みも期待できます。
NFTを活用している先進的な自治体や観光地はまだまだ少ないため、いち早く取り組みを始めれば、多くの観光客を呼び込むきっかけが作れるかもしれません。
最新のNFT活用事例については、毎年、春と秋に東京で開催されるブロックチェーンEXPOでキャッチアップすることができます。事前登録をすれば無料で参加できますので、ぜひブロックチェーンEXPOもチェックしてみましょう。
株式会社リッカ
<<あわせて読みたい>>
コメント