【エネルギー業界×ブロックチェーン】レガシー業界のブロックチェーン成功事例

石油業界の多くは、DX化が遅れているレガシー業界という認識を持たれる方が多くいるのではないでしょうか?業界内でも課題感を持っており、中長期的な発展のために、業界に最適なDX推進を目指し、様々なテクノロジーへアンテナを張っています。DX推進を通して、コストを削減し、環境に配慮した取り組みを強化し、次の10年に向けた企業の方針を示すことがステークホルダーから求められています。そこでブロックチェーンの技術が注目されています。

本記事では、ノルウェーのEquinor社がブロックチェーン技術導入を推進し、パイロットプロジェクトで大きな成果を挙げた事例について取り上げます。本事例を機会にEquinor社はさらに600万ドルの追加投資を決め、本格的にビジネス実装のフェーズへ移行します。

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目次

Equinor社ブロックチェーン導入における背景

Equinor社は、株式の70%を政府が保有している国営企業です。そのため、石油生産は環境政策と連動した企業運営が求められます。そのために、CEOのAnders Opedal氏は、環境政策に伴い、2050年までにEquinor社を環境に配慮した企業にし、初の「ネットゼロ」石油会社となることを目指しています。ネットゼロを実現するテクノロジーとして、Equinor社はブロックチェーンに着目し、今回の成功事例を作り上げました。

ネットゼロとは作られたエネルギー量と消費するエネルギー量が差し引きゼロとなる状態のこと。

本プロジェクトのブロックチェーンの活用

高さ300フィートのEquinorの新しい石油生産プラットフォーム(Johan Sverdrup)で最先端のブロックチェーン技術を取り入れた本プロジェクトでは、新しい井戸の掘削、生産されている石油の量、その他多くのコア機能を追跡するセンサーが取り付けられています。これらの情報はすべて、ヒューストンに拠点を置く新興企業のData Gumbo社に送信されており、Data Gumboはこの重要な情報をブロックチェーンの台帳GumboNetにまとめています。

石油生産プラットフォームとは海上に設置される規模の大きい海洋構造物のことを指す。海底から石油や天然ガスを掘削・生産するために必要な労働者や機械類を収容することができる。

これまで、石油生産プラットフォームの運用には、人のリソースを前提とした業務内容となっておりました。
たとえば、下記の3つの業務などが該当します。

  1. 担当作業員による入力作業
  2. 管理監督者による業務のモニタリング
  3. 現場業務・報告から作成されるプロジェクト評価

今回のプロジェクトでは、ブロックチェーンを用いたスマートコントラクトでこのプロジェクトのマネジメントを実行する計画を立案しました。
決められた業務が完了すると通知されるため、仕事が計画通りに実行されたことをブロックチェーンを用いたシステムによって保証することができます。また、デジタル通貨での支払いを管理することも可能です。

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ブロックチェーンで実現できる効果

2019年のパイロットプロジェクトに続き、Equinor社はブロックチェーン企業のData Gumboに600万ドルを投資することを決定しました。Johan Sverdrupの初期の成功に続き、他の10プロジェクトにもその技術を展開することを期待しています。現在までのところ、Equinor社は初年度に2,000万ドルの節約を見込んでいると発表しています。

2020年には、複数の企業が自社の業務をデジタル時代に適応させようとする中、ブロックチェーン技術に注目が集まり、関心が高まりました。
そのため、1社だけの取り組みにとどまらず、業界全体を巻き込んだ動きとなっています。OOCオイル&ガス業界で構成されたブロックチェーンコンソーシアム(OOCオイル&ガスブロックチェーンコンソーシアム)は、ConocoPhillips、Equinor、Exxon Mobil Corp、Repsol、Royal Dutch Shellを含む10社で組成されました。また、コンソーシアムメンバーはData Gumboが提供する油田の水処理の支払いを自動化するシステムを検証しました。
その結果、各社はブロックチェーンを使用することで、9つのステップを削減でき、ワークフローのプロセスを90~120日から1~7日に短縮できることが確認されました。このパイロットスキームの成功により、様々な企業がこの技術を使用することで時間とコストの両方を節約できることが明らかになりました。よって、他の企業もEquinor社をロールモデルとして、ブロックチェーン導入を推進し同様の成果を挙げることが期待されています。

上記に挙げたサプライチェーン管理・サプライチェーン上の支払いの自動化、データセキュリティの支援のほかに、ブロックチェーンは炭素排出量を測定し、評価することにも活躍します。現在でも様々な評価を行う推定手法が存在しますが、ブロックチェーン技術を用いた本プロジェクトの仕組みは事実情報を的確に収集・記録・通知ができるため、油田プロジェクトのカーボンフットプリントを正確に評価することができるようになります。

カーボンフットプリントとはCarbon Footprint of Productsの略。仕入れ~廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、定量的に可視化し、商品サービスを評価する仕組みです。

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ブロックチェーンがもたらすエネルギー業界の展望

上述の通り既存の推定手法とは違い、ブロックチェーンはセンサーなどIoT機器と相性がよく、それらを用いて取得された情報は改ざんされておらず正確性が増します。これにより規制当局が炭素排出量に関して求めている厳しい条件をクリアすることが可能です。プロジェクトのカーボンフットプリントの透明性が増すことで、PDCAを回しやすくなり、よりよい環境対策に取り組むことができるようになります。

Equinor社のブロックチェーンプロジェクトの成功をきっかけに、2021年は、複数の石油企業が後に続く年になるかもしれません。ブロックチェーン技術がコスト削減、効率性の向上、二酸化炭素排出量の削減の手段を提供することができれば、レガシー業界でもDX化の時流が訪れるかもしれません。

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