Society 5.0は、情報化社会の次に目指すべき日本の未来社会です。高度なテクノロジーを活用することで、安全で安心な暮らしと人々の多様な幸せの実現を目指しています。
この記事では、日本政府が提唱するSociety 5.0について、わかりやすく解説します。この記事を読めば、これまでの社会の変遷や日本が目指している新しい社会の形が理解できます。
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Society 5.0とは?日本が目指すべき未来社会の姿
Society 5.0(ソサエティ5.0)は、日本が目指すべき未来社会の姿です。これまでにないイノベーションを実現することで、人々がより幸せな暮らしができる社会がSociety 5.0といえます。
例えば、現実空間(フィジカル空間)とは別に仮想空間(サイバー空間)を作り、さまざまなデータ解析や実験をできるようにします。これにより、大雨や暴風、地震といった自然災害の発生や被害をシミュレーションし、事前に被害を最小化する対策を行ったり、万が一の際の救助や復旧をスムーズにするための準備を行ったりすることができます。
また、AI(人工知能)が私たちの健康状態に関する数値や画像を分析し、異常があれば薬の服用や医師への相談をアドバイスすることも可能です。必要に応じてドローンが薬を配達してくれたり、自動運転バスが通院をサポートしてくれる。そんな利便性が高く、安全で安心な暮らしをテクノロジーの力で実現してくれるのが、Society 5.0です。
Society 5.0は、第5期科学技術基本計画(平成28年1月22日閣議決定)において、「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」と提唱されました。
また、第6期科学技術・イノベーション基本計画(令和3年3月26日閣議決定)では、目指すべきSociety 5.0の未来社会像を「持続可能性と強靭性を備え、国民の安全と安心を確保するとともに、一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現できる社会」としています。
内閣府:Society 5.0とは
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html
これまでの社会の変遷(Society 1.0からSociety 4.0)
これまでの社会は、以下のような変遷を辿っています。Society 1.0から始まり、現在はSociety 4.0、そしてSociety 5.0へと続いていきます。
Society 1.0(狩猟社会)
狩猟や採集によって生活を支えていた初期の人類社会です。生存に必要な資源を自然から直接得る生活が基本でした。生きることが精いっぱいで、非常に不安定な生活を余儀なくされていました。
Society 2.0(農耕社会)
穀物や野菜の栽培が発展し、食料を安定して生産できるようになりました。定住生活が可能となり、集落が形成され、人間的な社会が発展していきました。富を蓄えたり、価値を交換できるようになっていきます。
Society 3.0(工業社会)
産業革命により工業化が進み、大量生産・大量消費が可能になりました。蒸気機関や電力が利用され、乗り物や工場が発展することで生産効率が飛躍的に向上します。都市部に人口が集中し、人口も大幅に増加しました。
一方で、地球環境の破壊が大きな問題となりました。
Society 4.0(情報社会)
IT革命により、人々がさまざまな情報に瞬時にアクセスしたり、欲しいものをすぐに入手したりすることができるようになりました。コンピュータやインターネットが発展し、大量のデータが瞬時に処理され、社会の利便性が飛躍的に向上しました。
一方で、情報や富の格差が拡大しました。
そして、これからの社会はSociety 5.0へと続いていきます。Society 5.0では、より先端的な技術を活用することで、人々がより安全で幸せな社会を実現することを目指します。
これまでの社会とSociety 5.0の違い
これまでの社会とSociety 5.0には、主に以下の違いがあります。
これまでの社会 | Society 5.0 |
---|---|
少子高齢化や地方の過疎化などの課題に十分に対応することが困難 | 少子高齢化、地方の過疎化などの課題をイノベーションにより克服する社会 |
人が行う作業が多く、その能力に限界があり、高齢者や障害者には行動に制約がある | ロボットや自動運転車などの支援により、人の可能性がひろがる社会 |
情報があふれ、必要な情報を見つけ、分析 する作業に困難や負担が生じる | AIにより、多くの情報を分析するなどの面倒な作業から解放される社会 |
必要な知識や情報が共有されず、新たな価値の創出が困難 | IoTで全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有さ れ、新たな価値がうまれる社会 |
参考:内閣府(Society 5.0とは?)
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/society5_0-1.pdf
これまでの社会とSociety 5.0の違いを比較すると、以下のようなポイントが見えてきます。
社会が抱えるさまざまな課題を解決できる
これまでの社会では、少子高齢化や地方の過疎化などの社会課題に十分に対応することが困難でした。社会システムやインフラが不十分であったため、高齢者などが社会に参加しにくく、都市部への人口集中も是正できなかったからです。
Society 5.0では、イノベーションを活用して、少子高齢化や過疎化の克服を目指します。先進技術を駆使して地方の産業を活性化したり、自動運転や介護ロボットの発展によって高齢者の生活を支援することが可能です。
生産性や利便性を大幅に向上できる
これまでの社会では、多くの作業が人手で行われ、その処理能力には限界がありました。高齢者や障がい者が生き生きと社会に参加することが難しく、そのサポートにも多くの人手が必要でした。
Society 5.0では、ロボットやドローンの活用によって、人々の作業を自動化し、時間や手間を大幅に削減できます。高齢者や障がい者の生活の質も向上し、より公平で安心な社会を実現できます。
膨大な情報から新しい価値が見出せる
これまでの社会では、増え続ける情報が溢れ、必要な情報を見つけたり分析したりする作業に困難が伴いました。情報の安全性や信頼性も担保できず、常にサイバー攻撃や情報漏洩の危機にさらされていました。
Society 5.0では、IoTで収集したビッグデータをAIが分析して、多くの情報の中から適切な情報を見つけたり、データ分析した結果から新しい価値を創造したりすることができます。人々は面倒な作業から解放され、より高度な仕事に注力できます。ブロックチェーンを活用すれば、データの信頼性を高め、より安全にデータを活用することもできます。
人々の繋がりが強化されイノベーションが加速する
これまでの社会では、必要な知識や情報が人々の間に散在し、十分に共有されていませんでした。そのため、新たな価値の創出が難しく、イノベーションの障害となっていました。
Society 5.0では、人々がスマートフォンやウェアラブルデバイスなどでより親密に繋がり、コミュニケーションがより活発になって情報や知識が広く共有されます。これにより、様々な分野で新たな価値が生まれ、イノベーションが加速する社会が実現されます。
Society 5.0は、これまでの社会の限界を超え、テクノロジーを駆使してより快適で持続可能な社会を目指すものです。
Society 5.0が解決する未来の課題
Society 5.0は、これからの社会が直面するさまざまな課題を解決に導く可能性を秘めています。
これからの社会の課題 | Society 5.0による課題解決 |
---|---|
エネルギーの需要増加 | 温室効果ガス(GHG)排出削減 |
食料の需要増加 | 食料の増産やロスの削減 |
医療サービスの不足、高齢化 | 高齢化に伴う社会コストの抑制 |
国際的な競争の激化 | 持続可能な産業化の推進 |
富の集中や地域間の不平等 | 富の再配分や地域間の格差是正 |
エネルギーの需要増加
世界のエネルギー消費は加速度的に増えています。人口と電力消費は今後も増大する見通しであり、化石燃料の消費も大幅な削減が難しいと予測されています。このまま何もしなければ、エネルギー需要の増加に伴い、エネルギーの供給が追いつかず、資源の枯渇が懸念されます。また、地球温暖化が加速し、社会が持続不可能な状態になる危険性があります。
Society 5.0は、再生可能エネルギーの導入と超効率的なエネルギー消費を実現し、温室効果ガス(GHG)の排出削減を目指します。AIやIoTを活用してエネルギー消費を最適化し、持続可能なエネルギー社会の実現を目指します。
食料の需要増加
世界の人口増加に伴い、食料需要も増加しています。持続可能性が高い農業生産の効率向上を実現したり、干ばつや災害のリスクを最小限にしなければ、世界的な食糧危機を招くリスクがあります。
Society 5.0は、AIやIoTの活用によって農業のスマート化を実現し、農作物の生産効率を飛躍的に向上させます。ドローンや自動運転トラクターを活用することで、必要な部分のみに肥料や農薬を使用したり、生育の監視や収穫を自動化することも可能です。精密な需要予測や在庫管理によって、食品ロスの削減も期待できます。
医療サービスの不足、高齢化
少子高齢化社会の進展により、医療コストが増大するとともに、医療や介護の人材不足が懸念されています。病院や介護施設への送迎や在宅医療・介護サービスのニーズが高まり、医療サービスの不足やサービス利用料の増大も課題になりつつあります。このままでは、いずれ十分な医療や介護が受けられなくなる可能性があります。
Society 5.0は、オンラインによる医療サービスの提供が可能になります。遠隔による診察だけでなく、ロボットアームやカプセル型の機器を使って治療や手術もできるようになります。これにより医師不足の解消や遠隔地への手厚い医療サービスの提供が期待できます。
また、高齢者向けの介護支援技術が発達し、ロボット介護やパワーアシストスーツによる効率化が期待できます。健康管理のためのウェアラブルデバイスが発達することで、予防医療や介護予防が期待でき、高齢者の健康寿命を延ばすことも可能となります。
国際的な競争の激化
グローバルな経済競争はますます激化しており、国や国内企業の国際競争力を高めることが求められます。日本は人口減少社会に突入し、米国に次いで世界第2位だったGDPも、現在では中国やドイツに抜かれて4位に転落、次はインドに抜かれて5位に転落する可能性も指摘されています。
Society 5.0は、国内産業のイノベーションを推進し、国際競争力を高めます。すべての産業でDX化を加速させ、新しいビジネスモデルの創造や新しい世界市場の開拓を推進し、日本の持続可能な成長を目指します。
富の集中や地域間格差
富が富を生む社会構造が発達し、大企業や富裕層への富の集中が加速しています。また、都市部への人口流入と過疎化により、地域間で行政サービスの不均衡や民間サービスの格差が生まれています。便利な都市部がより便利になり、不便な地域はより不便な生活を強いられる傾向があります。
Society 5.0は、遠隔サービスやドローン配送、インターネットのさらなる活用などによって、どの地域にいても一定のサービスが受けられるようになります。より公平な社会構造が再構築され、富やサービスが遠隔地域にも再分配されていきます。富やサービスの一極集中が是正されることによって、誰もが安心して暮らせる社会を実現できます。
Society 5.0の実現に活用されるテクノロジー
以下のテクノロジーを活用することで、Society 5.0を実現しやすくなります。それぞれのテクノロジーがどのように役立つのかも説明していきます。
- AI(人工知能)
- IoT(モノのインターネット)
- ビッグデータ
- 5G
- ロボット
- ブロックチェーン
AI(人工知能)
AIはデータの分析や需要予測、意思決定の支援などを実現できる技術です。膨大なデータを分類・解析したり、画像データから問題点を瞬時に見つけることが可能です。
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IoT(モノのインターネット)
IoTは、家電や家具、持ち物などにセンサーやカメラ、通信機能を搭載してデバイス化し、ネットワークにつなげることでデータ収集や遠隔操作、自動制御などを可能にする技術です。
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ビッグデータ
ビッグデータは、スマートフォンやIoT機器などから大量かつ多様なデータを収集し、新しい傾向や価値を見出すために蓄積された巨大な情報の集合体です。
5G
5Gは次世代の高速通信規格で、大量のデータを高速かつ遅延ない状態で通信することができます。データ転送のリアルタイム化が可能になり、高解像度で滑らかな映像の送受信などができるようになります。
ロボット
ロボットは、人間には負担が大きい作業や危険な作業を自動化することができます。すでに製造業や物流、食品業界などではロボット化やオートメーション化が進んでいますが、今後は医療や介護、接客業、観光、一般家庭にもロボットの活用が進んでいきます。
ブロックチェーン
ブロックチェーンは、データの改ざんが極めて困難な分散型のデータベースです。Society 5.0でやりとりされるデータの信頼性や安全性を高めることができるので、データ活用やサービス利用を促進することができます。
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まとめ Society 5.0について
Society 5.0は、日本政府が提唱する新しい社会の未来像であり、テクノロジーを活用して人間中心の持続可能な社会を実現することを目指しています。
Society 5.0により、持続可能な経済成長とさまざまな社会的課題の解決を同時に実現し、人々が多様な幸せの形を追及することが可能になります。
Society 5.0の実現には、AIやIoT、5G、ブロックチェーンなどの最新テクノロジーがますます重要となっていきます。今後も当メディアでは、ITやDXの最新トレンドをお届けしていきます。
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