中国最大級のオンライン小売業者である京东商城(JD.com)は、Fortune Global 500に選出されている International Trade Group (ITG) Holdingと提携し、ブロックチェーンベースの電子契約プラットフォーム「JD E-sign」を構築すると発表しました。
このプラットフォーム「JD E-sign」は、書面での契約締結に関わる時間、労力、コストの削減を目的としたブロックチェーンプロダクトです。
JD E-signで用いられたブロックチェーンの仕組みは、サプライチェーン管理、商品加工プロセス、貿易、金融サービスなど、ITGの中核となるビジネスでも使用されることが期待されています。
ブロックチェーン電子契約プラットフォーム「JD E-sign」
JD E-signに実装されているブロックチェーンテクノロジーは、JD.comのフィンテック部門であるJD Digitsによって開発されました。
また、JDの電子契約プラットフォームをベースとしています。これにより、住宅ローンや販売注文など、実名認証と検証済みのタイムスタンプを備えたさまざまな契約タイプの電子署名が可能になります。
ブロックチェーン電子契約のメリット
このプラットフォームを介して、ユーザーはクラウド上で契約書に電子署名できます。
その後、契約書はブロックチェーンに実装された承認フローを経てファイル化され、ブロックチェーンに紐づくと同時に(ブロックチェーンの承認フローによって合法性を有した)契約書を様々な司法機関に保存することが可能です。
例えば、中国には紛争解決のためのインターネット裁判所があり、署名された契約書の内容は、北京と広州のインターネット裁判所と北京公証人事務所に登録されます。
また、クライアントが同意すると、契約はオンラインまたはWeChatミニプログラム(WeChatのサブアプリーケーション)を通じて、関係者が検索および表示できるようになるという検索機能もあります。
ブロックチェーン電子契約が実現する未来
JD E-signは、ブロックチェーンを使用することで、契約書の署名プロセスの偽造を防ぎ、トレースも可能にします。
また、データ漏洩を防ぐためにすべての情報を暗号化して保存するデータセキュリティ保護スキームをJD Digitsは採用しています。このメカニズムは、電子的な法的文書として有効性を持ち、法的根拠として取り扱うことができます。
中国の電子署名法に準拠した仕様であり、中国国内での普及が期待されています。JD.comによると下記のように述べられています。
According to JD.com, the system’s implementation on ITG’s contract signing processes will reduce cost and time expenditures by 80% and decrease contract costs by 60%.
今回のブロックチェーンソリューションにおいて、契約にまつわる労力と時間が80%削減され、契約コストが60%削減されるだろうとJD.comはコメントしています。
電子契約に関する海外事例と日本の動向について
ブロックチェーンを用いた電子契約は中国以外でも進みつつあります。海外のその他の事例と日本の動向についても解説していきます。
各国で進む紙ベース業務のブロックチェーンを用いたDX推進
今年に入り、韓国の通信会社のKT Corpがブロックチェーンベースのドキュメントプラットフォームを立ち上げたり、Fonterra社が船荷証券にブロックチェーンを使ったり、各国で紙ベースの業務課題をブロックチェーンを用いて問題解決に取り組んでいます。
国内市場への活用については、国内特有の事象に対応したブロックチェーンソリューションが求められます。同じ契約という課題に対してアプローチするブロックチェーンソリューションでも、対外性と対内性でソリューションに求められる要件が異なります。対内性においては、その国の風土・文化に重んじたシステムデザインが求められることが特徴として挙げられます。
国際貿易では、ステークホルダーの数が多く、各国組織との間での合意形成に時間を要していました。数カ国が関係する場合、世界基準で対応すべきブロックチェーンソリューションが求められます。
日本国内の電子契約プラットフォーム
日本での契約といえば、「はんこ」を想像されるのではないでしょうか。
世界でもはんこは存在しますが、日本は”はんこ社会”と言われるほど契約締結や承認フローにはんこが必要となることが多々あります。
2020年現在では、クラウドサイン、ドキュサイン、ニンジャサインといったクラウドで完結される電子契約サービスがあります。
コロナ禍により、日本でも急速に電子契約が浸透してきています。現在は簡易的な立会人型の電子契約サービスが多いですが、より厳密で法的拘束力の高い当事者型の電子契約においてはブロックチェーンを活用するサービスも登場しています。
まとめ ブロックチェーンベースの電子契約プラットフォームについて
今回は中国で取り上げられたブロックチェーンを用いた電子契約プラットフォームの事例を紹介しました。
事務手続きが複雑で時間も労力もかかる契約業務は、ブロックチェーンによる電子契約によって、安全性を保ちながら劇的なコスト削減とスピードアップが実現できます。
これからも、ブロックチェーンによるさまざまな分野でのソリューションに注目していきましょう。
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