【船舶×ブロックチェーン】船舶における複雑な取引をDX推進

【船舶×ブロックチェーン】船舶における複雑な取引をDX推進

船舶における複雑な取引をDX化、ブロックチェーンで信頼性ある取引基盤を構築を目指す

概要

世界有数の乳製品加工業者であるFonterraは、ブロックチェーン船荷証券を実装するためにイスラエルのブロックチェーン企業であるWave、金融機関のHSBCと連携し、初のブロックチェーン取引を完了したと発表しました。同社は、HSBCが信用状(L/C)を発行するために、電子船荷証券(eB/L)やその他の書類にWaveのプラットフォームを使用しました。ニュージーランドから中国の四川新希望貿易への粉ミルクの輸出で実施されました。

貿易事業においては、複数業者間で発生する取引業務に紙でのやり取りが多く発生していました。

本記事では、複数業者間でのペーパーレス化を実現し(DX化)、かつ、ブロックチェーンを用いることで信頼性ある取引基盤の実現するための試金石である本事例を紹介します。

本事例におけるブロックチェーンによる問題解決には、B/LとL/Cという業務プロセスが深く関わっています。そして、このB/LとL/Cという業務プロセスは貿易業務の信頼性に寄与するフローですが、その分時間とコストがかかるという課題を有しています。

そもそも船舶証券(B/L)とは

船荷証券(Bill of lading、以下B/L)とは、売り手となる輸出者(荷主)と運送会社(船会社)で運送契約に基づき締結される書類です。貨物が船に積まれる際に輸出者に提供されます。運送会社が荷物を預かったことを証明するもので、船会社から交付される積荷の所有権を有する有価証券です。つまり、B/Lが発行されたということは、船会社が船積みを完了したことを表します。B/Lは最終的に買い手となる輸入者に渡されます。輸入者は船が到着したときに貨物を受け取るためにこの書類を使用します。B/Lがないと輸入者は荷物を受取ることができません。

貿易業務における信用状(L/C)とは

売り手にとっては、買い手がお金を払ってくれないというリスクがあります。そこで、銀行から信用状という書類(Letter of Credit)を取得するというプロセスを踏むことが多くあります。開設銀行(輸出者側の銀行)は、船荷証券の提示とその他の要件を満たした上で支払いを行います。

なぜ、B/L、L/Cが必要か?

B/Lがない場合、輸出者と輸入者の間でなされた取引を実行することが困難となります。

難しくなる理由は、直接取り引きではなく、輸送する第三者などを介するためです。中間者によって、不正が図られたとしても、それを証明することできないためです。

そのため、B/Lを預り証として活用します。

輸入者と輸出者が売買契約を結び、売買契約に基づき船へ積載した際に、船会社がB/Lを発行することで、注文通りの出荷と積載を完了したことを証明するという機能を持たせることができます。

 

そして、B/Lの注目すべきポイントは、有価証券であるということです。後述しますが有価証券の性質をもつことで、信用状取引の担保として、活用することが可能です。

貿易取引では、取引相手が海外の企業です。また、中国、韓国など日本と近い海外企業もありますが、日本から遠い企業の場合には輸送に時間を要するため、商品の引き渡しと代金決済にタイムラグが生じます。L/Cという信用状取引はこの双方のリスクを回避することができます。そのため、輸入者、輸出者の双方にとって、取引を円滑にできるというメリットを持っています。

そして、信用状を発行する銀行は、取引を仲介することで手数料を得ることができます。また、有価証券であるB/Lは書類自体に財産価値を有しているため、L/Cの担保として銀行側もリスクを低減できる仕組みです。

ブロックチェーンプラットフォームで解決できる2つの問題とは

これらの貿易業務における事務処理では、不正行為を行う機会が複数箇所に存在していることが課題として上げられています。かつ、紙ベースで業務を執り行うため、時間がかかることも課題でした。今回ブロックチェーンを活用し、大きく2つの問題を解決することができます。

①不正行為の可能性を減少

②業務プロセスをスピードアップ

今回、電子B/L(eB/L)はP2Pで転送され、ブロックチェーン上に保存されるため、不正が非常に困難になります。また、eB/Lを使うことで、紙で発生していた承認フローを電子署名化し業務スピードの改善が実現します。

今回の具体的な取引フローとして、Fonterraの取引では、eB/Lを発行し、取引書類を追加し、デジタル取引の情報をHSBCニュージーランドに提示しました。開設銀行は書類を検証して通知銀行であるHSBC中国(買い手の代理)に転送し、HSBC中国は輸入者に書類を送りました。四川新希望貿易は船荷証券を運送会社に渡し、Fonterraの貨物を買い手へと引き渡します。書類作成にかかる時間は24時間以内となり、これは改善前と比較し10日以上も短縮されたとFonterra社は述べています。

Fonterra社は年間で数千件のL/C登録をしています。同社では、貿易文書をデジタル化することで、コスト、ヒューマンエラー、文書の紛失、偽造、遅延のリスクを削減し利益を最大化させることが期待されています。

貿易におけるブロックチェーン構築の課題

今回のブロックチェーンを活用した取引には、Fonterra社以外に下記の7パートナーが参加しています。

①輸入業者

②輸出業者

③開設銀行(輸出国側の銀行)

④通知銀行(輸入国側の銀行)

⑤海運業者

⑥仕向港業者

⑦Wave BL(ブロックチェーンプラットフォーム提供者)

つまり、1つの取引において、ブロックチェーンを用いた仕組みを実装するにも、8組織の合意形成が必要でした。

Fonterraの貿易契約を担当する部署のClyde Fletcher氏は下記のようにコメントしていることからも、複数社間においての合意形成の難しさや準備期間の長さが課題と挙げられています。

「今回の概念検証(PoC)を実施する前に、すべてのステークホルダー(上記①~⑦)にブロックチェーンを使い、エンドツーエンドのペーパーレスで完結するLC(Letter of Credit)取引を行うため、セキュリティ・法律・機能上の課題について議論を行い合意を得る必要がありました。”四川新希望貿易有限公司との試験的な取引では、セットアップに約9ヶ月を要しました。この取引が成功したことで、Fonterraは今後もB/Lを用いた取引の完全なデジタル化に向け取り組む方針ですが、それを実現するためには、すべての関係者と協力して取り組む必要があります。」

原文

今回ブロックチェーンプラットフォームに選定された「Wave」とは

イスラエルのWaveは、早い段階からブロックチェーンベースの船荷証券の導入を開始した企業です。また、イスラエル最大のコンテナ船会社であるZimとのブロックチェーンベースの船荷証券プロジェクトにも協力しており、船荷証券においてはリーディングカンパニーといえます。2017年11月に開始されたパイロットは、現在も活発に活動しているプロジェクトへと拡大しました。さらに最近では、イスラエルの国有機関であるイスラエルの港湾を監督・規制するイスラエル港湾会社(Israel Ports Company)が、TradeLensやSparx Logisticsとも提携しているZimとの間でブロックチェーンを用いた船荷証券を用いたPoCを開始しました。

現在、船荷証券のブロックチェーンソリューションは、ビジネス実装に向け進歩拡大しています。

例としては、下記が挙げられます。

  • スロベニアを拠点とするブロックチェーン企業のCargoXがインドの港湾運営のために船荷証券やその他の貿易文書のデジタル化を開始
  • アリババは国際港湾共同体システム協会(International Port Community Systems Association)のブロックチェーン船荷証券標準化しイニシアチブに参加
  • エンタープライズブロックチェーン企業のR3は最近、eBLソリューションを持つシンガポールのEタイトルオーソリティを買収

ビジネス実装に向け活発な動きがあり、今後は、よりソリューションとして磨き込みがかかるフェーズに入りました。

これからの貿易取引におけるDX化について

貿易には、複数業者が取引に介在します。また、キャッシュフロー最大化、債権回収リスクを低減させる仕組みとして、L/CやB/Lがあるなど業務フローが複雑化しています。そのため、既存の紙ベースの仕組みでは、コミュニケーションコストや時間的コストを多く必要としていました。今回のブロックチェーンプラットフォームで取引を実現できたことを皮切りに今後は様々な貿易取引での導入が進むことが予想されます。

しかし、ステークホルダーが多い貿易取引では、プロジェクトをスタートアップするにも長い期間を要しますこと課題としてあります。上記の通りステークホルダーが多くいるため、導入へのハードルは高いことはたしかですが、紙業務や承認フローをデジタルに置き換えることで利益の最大化、ビジネススピードのアップなどを実現することが可能です。世界的な業界ソリューションとして実現をなされることで世界の貿易ビジネスが透明化・円滑化するこの取組には引き続き注目が必要です。

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