昨今、地球環境の保護が課題となっている中、新たな技術がその解決に向けた可能性を提示しています。その技術の1つが「グリーンブロックチェーン」です。
今回は、従来のブロックチェーンが抱える課題を解決し、環境負荷の少ないグリーンブロックチェーンについて解説します。
株式会社リッカ
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グリーンブロックチェーンとは?
グリーンブロックチェーンとは、ブロックチェーン技術を持続可能な環境への影響を考慮した形で活用する取り組みを指す用語です。
ブロックチェーンは取引の透明性や信頼性を向上させるのに役立ちますが、その一方でエネルギー消費や環境への影響が懸念されています。ビットコインを代表とする従来のブロックチェーンは、コンセンサスアルゴリズムにPoW(Proof Of Work)を採用しています。PoWは膨大な電力を消費するため、環境への影響が懸念されています。
この課題を解決するのが、PoS(Proof of Stake)などを採用した環境負荷の少ないグリーンブロックチェーンです。
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ブロックチェーンの課題
ブロックチェーンには取引の正当性を確認し、ブロックを追加する仕組みとしてコンセンサスアルゴリズムがあります。
このコンセンサスアルゴリズムの1つであるPoW(Proof Of Work)は、ビットコインなどで活用されている仕組みですが、一方で環境への影響も大きいものとなっています。
コンセンサスアルゴリズムの種類
PoW (Proof of Work)
ノードは競争的に複雑な計算を行い、最初に正しい答えを見つけたノードが新しいブロックを追加できる方式です。Bitcoinなどで採用されています。
PoS (Proof of Stake)
ノードは一定量の仮想通貨をステーク(預ける)し、そのステーク量に基づいてブロックを追加する権限を持つ方式です。エネルギー消費が少なく、Ethereum 2.0などで採用されています。
DPoS (Delegated Proof of Stake)
ネットワークの一部のノードがブロックの生成を担当し、ステーク保有者の投票によって選ばれる方式です。高速な取引処理を可能にします。
PoA (Proof of Authority)
ノードが権威を持ち、識別可能な主体として認証される方式です。ノードが信頼された実体であることが前提です。
PoWは多大な電力を消費する
PoWは前述している通り、ノードは競争的に複雑な計算を行い、最初に正しい答えを見つけたノードが新しいブロックを追加できる方式となっています。仕組み上、複雑な計算を解くためにコンピューターリソースが多数必要となり、結果として多くの電力を消費することになります。
PoWは古いマシンの廃棄物を増加させる
ブロックを追加するためには、高い計算能力が求められます。そのため、古いマシンや計算能力が低いノードの場合、解答を求めるのが困難となってしまう可能性があるため、より新しく、よりスペックの高いマシンが使われることになります。
結果として、古いマシンの廃棄が増加します。
PoWで消費する電力はもっと他のことに活用できる
PoWが行っている難解な計算は、ブロックチェーンの承認作業にしか使われません。膨大な電力を難解な計算をひたすら解くためだけに使われるのは環境にとって負荷が大きいです。
PoWで消費される膨大な電力は、もっと他のことに活用できます。例えば、大規模なシミュレーションやAIの活用など、もっと付加価値を生むことに活用される方がメリットが大きいです。
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グリーンブロックチェーンのメリット
一方、グリーンブロックチェーンではよりエネルギー効率の高いコンセンサスアルゴリズムであるPoS(Proof Of Stake)を活用することで、エネルギー消費を削減する効果が期待されています。
グリーンブロックチェーンの主なメリットは以下の3つです。
- 電力消費を抑えられる
- 過度なマシンパワーが要求されない
- ガス代などのコストが削減できる
それぞれを解説します。
電力消費を抑えられる
PoSはブロックを追加するために計算作業は必要とせず、保有する通貨の量(ステーク)に基づいてブロックを追加するアルゴリズムとなっています。そのため、計算作業に膨大な電力を消費することがなくなります。
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過度なマシンパワーが要求されない
前述した通り、PoSは保有する通貨の量(ステーク)に基づいてブロックを追加するため、計算作業は必要としません。そのため、計算能力に長けたスペックの高いマシンは必要としません。
ガス代などのコストが削減できる
ブロックチェーンで取引を行うにはガス代と呼ばれる手数料が発生します。
PoWでは膨大な計算リソースを消費するため、膨大の電力が必要です。その結果、ブロック生成者やマイナーが報酬を受け取るためには高いトランザクション手数料(ガス代)が必要です。
PoSはエネルギー効率が高いため、ブロック生成に必要な電力が少なくて済む点があります。これにより、トランザクション処理のためのガス代が低くなる傾向があります。
PoSを採用したブロックチェーン
PoSを採用した主なブロックチェーンを紹介します。
Ethereum(ETH)
EthereumはPoWアルゴリズムを採用していましたが、Ethereum 2.0(またはEth2)と呼ばれるアップグレードを進め、PoS(Proof of Stake)アルゴリズムへ移行しました。
PoSに移行した結果、消費電力は99%以上削減されました。
Cardano (ADA)
CardanoはPoSアルゴリズムを採用しており、エネルギー効率が高く、ブロック生成に計算リソースを大量に必要としません。また、Cardanoプロジェクトは、エネルギー消費や環境への影響を軽減するために取り組みを行っています。その中でも、PoSの採用によるエネルギー削減と、コミュニティの持続可能なエネルギー源への参加を重視しています。
Solana(SOL)
Solanaは現在、PoH(Proof Of History)という独自のコンセンサスアルゴリズムを採用していますが、もう1つのコンセンサスアルゴリズムとしてPoSも採用しています。複数のコンセンサスアルゴリズムを採用することで、高速処理と低コスト化を実現しています。
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Polygon(MATIC)
Polygonは、PoSアルゴリズムを採用してブロックの確認とファイナリティ(最終的な確定)を行っています。
また、Ethereumネットワーク上でスケーリングを実現することで、トランザクションの高速処理と低コストを提供しており、Ethereumのメインチェーンでの過負荷を軽減し、ユーザーにとってよりエネルギー効率の高い取引環境を提供する効果が期待されています。
Tezos (WTZ)
TezosはスマートコントラクトとPoSアルゴリズムを採用しています。
また、Tezosはコミュニティの意思決定に基づいてプロトコルの変更や改善が行われるため、持続可能性やエネルギー効率向上に対する配慮がより反映される可能性があります。
Algorand (ALGO)
AlgorandはPPoS(Pure Proof of Stake)という独自のコンセンサスアルゴリズムを採用しています。
PPoS(Pure Proof of Stake):PoS(Proof of Stake)のアルゴリズムを進化させたもので、特定のステークホルダーがブロック生成者をランダムに選出することで、セキュリティを維持しつつ高いスケーラビリティを実現可能となっています。
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まとめ グリーンブロックチェーンについて
今回はグリーンブロックチェーンについて解説しました。
ブロックチェーン技術は、情報の信頼性や透明性を担保する上で非常な信頼性の高い技術となっています。その一方で、ブロックチェーン技術の急速な普及によるエネルギー消費や環境負荷の増大が懸念されてきました。
こうした問題意識から、グリーンブロックチェーンの概念が注目を集めています。
グリーンブロックチェーンはブロックチェーン技術の利点を最大限に活かしつつ、環境への影響を最小限に抑えることを目指すもので、環境負荷の少ないPoS(Proof of Stake)アルゴリズムなどを採用しているブロックチェーンです。
エネルギー効率と環境保護のバランスを取りながら、ブロックチェーンの発展と社会的な責任を両立させるための探求が続けられています。
将来性が期待されるブロックチェーンですが、ブロックチェーン開発には独特のノウハウや注意点があります。ブロックチェーンやスマートコントラクトを活用したシステム開発は、株式会社リッカにご相談ください。
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