仮想通貨やNFTの市場が停滞し、『冬の時代』と言われる中であっても、国や大企業が関わるブロックチェーンを活用した巨大プロジェクトは、着々と実証実験や社会実装が進んでいます。
そこで今回は、国や大企業が関わるブロックチェーン活用の国内事例を紹介していきます。
この記事を読めば、ブロックチェーン活用の重要性や将来性が理解しやすくなるでしょう。
株式会社リッカ
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「Web3.0事業環境整備」について
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/010_03_01.pdf
経済産業省のWeb3.0政策推進室では、2022年12月16日に「Web3.0事業環境整備の考え方」をまとめています。今後のトークン経済の成熟から、Society5.0への貢献可能性までをまとめた資料であり、ブロックチェーン技術やWeb3.0ビジネスの現状、今後の政策展開の考え方(案)が集約されています。
この資料を読めば、ブロックチェーンに関する情報を網羅的に理解でき、今後の日本のあるべき姿がイメージできます。
「Web3.0事業環境整備」の目的
日本はWeb2.0の流れに乗り遅れてしまった過去があります。GAFAMを代表とする海外の巨大ITプラットフォーマーに情報を独占され、日本のIT産業は世界でイニシアチブを発揮しにくくなっています。
こうした背景を踏まえ、Web3が発展していくこれからの社会においては、経済産業政策全体を中長期的な視座で俯瞰し、
- 国内投資拡大
- イノベーション加速
- 所得向上
という大きな目標に向かって進む必要があります。
こうした目標を達成するために必要な政策の検討や企業行動の喚起を行うことが、「Web3.0事業環境整備」を議論する目的となっています。
「Web3.0事業環境整備」の実施項目
本資料では、大きく分けて以下の3つがテーマとなっています。
- Web3.0ビジネスの現状
- ブロックチェーン技術のSociety5.0への貢献可能性
- 今後の政策展開の考え方(案)
それぞれの概要をご紹介します。
1.Web3.0ビジネスの現状
ここでは、Web3.0の可能性やトークンエコノミーの仕組み、国内外の事例を紹介しています。
ブロックチェーンによって実現が可能になった暗号資産やNFTなどのトークンが、経済や文化、金融などにどのように活用されているのかが分かる内容となっています。
例えば、海外のサッカークラブチームがファントークンを発行し、ファンへのエンゲージメント向上を図り、トークンの価値向上に伴ってクラブ全体が活性化される事例を紹介しています。
国内事例では、SHIBUYA109が、ブロックチェーンゲーム「The Sandbox」と提携し、「SHIBUYA109LAND」を開設した事例や新潟県の旧山古志村で実施されている「山古志村DAO」の事例などが紹介されています。
2.ブロックチェーン技術のSociety5.0への貢献可能性
ここでは、Society5.0を実現するために、ブロックチェーン技術がどのように貢献できるのかを考察しています。
Society5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)です。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指します。第5期科学技術基本計画において二本が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。
ブロックチェーン技術のSociety5.0への貢献可能性として、
- ①グローバルなデータ共有基盤
- ②トラストを確保したデータの流通
が挙げられています。
①グローバルなデータ共有基盤については、グローバルで自律分散的に稼働するパブリックブロックチェーンの特徴やその可能性について解説しています。
パブリックブロックチェーンの特徴は
- 改ざんが極めて困難
- 透明性(データは誰でも閲覧可能)
- スマートコントラクト(プロセス・取引の自動化)
- 分散型(独占的所有者が不在)
- 永続性(企業の倒産等に左右されない)
という点です。この特徴を活かせれば、
- 企業内のバックエンドのシステムや業務が効率化される可能性(←スマートコントラクト)
- 企業の情報等を透明化することが容易となる可能性。また、情報の非対称性が低くなり、経済の最適化に近づく可能性。(←透明性、改ざんが極めて困難)
- (技術とともにルールが整備されれば)会計制度等の既存の制度の枠組みにまで影響を及ぼす可能性
が考えられるとまとめられています。
また、②トラストを確保したデータの流通については、サプライチェーン領域での課題解決が例として挙げられています。国境を越え、厳密なトレーサビリティが求められるデータの真正性の確保の重要性が高い領域(経済安保、排出権取引等)でのブロックチェーン活用の可能性を考察しています。
ただし、ブロックチェーンにも技術的な課題があり、これを乗り越える必要もあります。主な課題としては、
- スケーラビリティ
- セキュリティ
- プライバシー・機密性
- 電力消費問題
があります。これらはパブリックブロックチェーンを利用する場合の主な課題です。これらの課題を乗り越えるためには、パブリックブロックチェーンの技術革新やコンソーシアム型、あるいはプライベート型のブロックチェーンを活用する必要があると考えられます。
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3.今後の政策展開の考え方(案)
ここでは、Web3.0の現状認識を踏まえ、短期的にはWeb3.0にしっかりと対応しつつ、長期的な視点として「Society5.0」を視野に入れるべき重要性を解説しています。
特に検討が必要な項目として、
- 法規制(暗号資産該当性)
- 法人税制(暗号資産の期末時価評価課税)
が挙げられています。また、その他の検討項目として、
- 監査法人による会計監査問題
- LPSによるトークン保有問題
- 無断NFT対策
- NFTの賭博罪該当性の解釈
- ユースケース創出支援
- 海外人材呼び込み
- 研究開発支援・人材育成
が挙げられています。
これらの課題を解決しつつ、これからの日本がどのようにして「国内投資の拡大、イノベーションの加速、所得向上」を実現していくかが大切であるとされています。
また、日本では暗号資産を活用したWeb3.0関連事業が困難な状態で、海外に企業や人材が流出しているという現状があります。そのため、暗号資産に係る法人税の税制改正要望等の事業環境整備に金融庁と共同で取り組んでいる状況となっています。
税制改正要望については、徐々に変わりつつある部分もあります。また、現状は暗号資産、NFTの市場はバブルが崩壊した状態ですが、そんな「冬の時代」だからこそ、事業環境整備を着々と進めることが必要とされています。
本資料は、Web3および日本の課題や今後の方向性が網羅的に記載されていますので、一読の価値があります。詳しくは下記をご覧ください。
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/010_03_01.pdf
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「農業DX構想」
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/joho/210325.html
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/joho/attach/pdf/210325-1.pdf
農林水産省は、農業・食関連産業の関係者の方々が農業DXを進める際の羅針盤となる「農業DX構想」を取りまとめました。取組全体を俯瞰する見取り図としても活用できます。
「農業DX構想」の目的
農業の本来の役割は、人々が必要とする食料を安定的に供給することですが、農業者の高齢化や労働力不足が進んでいます。「農業DX構想」の目的は、デジタル技術を活用して効率の高い営農を実行しつつ、消費者ニーズをデータで捉え、消費者が価値を実感できる形で農産物・食品を提供していく農業(FaaS: Farming as a Service)への変革を実現することです。
「農業DX構想」実施項目
「農業DX構想」では、農業や食関連産業に携わる方々がそれぞれの立場で思い描く「消費者ニーズを起点にしながら、デジタル技術を活用し、様々な矛盾を克服して価値を届けられる農業」を目指しています。
例えば、以下のような取り組みをすることで、農業DXを進めていきます。
- 複数の自動走行トラクタの導入等により、少人数でも超効率的な大規模生産を実現する
- 消費者の購買データから需要の変化をつかみ、国内外の多様なニーズに応じて機動的に食料の生産・供給を行うことで、消費者の支持を獲得する
- 作業の省力化と自動化に加え、AIの活用で品質の高い農産物を安定的に生産できる経営を実現する
- 農産物の生産履歴や取引情報の管理効率化・高度化に向けて、高い耐改ざん性等を有するブロックチェーン等の新技術を活用する
「農業DX構想」今後
2030 年を展望しながら、各種プロジェクトを可能な限り速やかに実行し、農業DXを推進していきます。デジタル技術の進歩や農業構造の変化等に応じて、内容・スケジュールは機動的に見直される予定です。
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スマートフードチェーンコンソーシアム「スマートバイオ産業・農業基盤技術」⼤項⽬3輸出プラットフォーム
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/press/20220601_press_SIP_Smart-food-chain-system.pdf
SIP「スマートバイオ産業・農業基盤技術」 スマートフードチェーンコンソーシアム ⼤項⽬3輸出プラットフォームは、2018 年 10 ⽉より、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「スマートバイオ産業・農業基盤技術」による研究開発モデル事業に採択されたプロジェクトである「スマートフードチェーンプラットフォームの構築」に取り組んできました。
SIP「スマートバイオ産業・農業基盤技術」スマートフードチェーンコンソーシアム ⼤項⽬ 3輸出プラットフォームとは、三菱ケミカル株式会社がリーダーとなり、六つの⺠間企業(三菱ケミカル株式会社、株式会社 NTT データ、沖縄セルラー アグリ&マルシェ株式会社、タキイ種苗株式会社、株式会社堀場製作所、ヤマト運輸株式会社)によって構成された本プロジェクトを推進するための研究グループです。
スマートフードチェーンシステムの目的
ブロックチェーンを活⽤したデータ連携によるスマートフードチェーンシステムにより、⽇本の⽣産者の情報や輸送中の温度管理を⾏うことで⽇本の農林⽔産物や⾷品の意味的価値を向上させ輸出の拡⼤を⾏うとともに、フードロスの削減につなげることを⽬指しています。
ブロックチェーンは、インターネットなどオープンなネットワーク上で、⾼い信頼性が求められる⾦融取引や重要データのやりとりなどを可能にする分散型台帳技術であり、「誰が、いつ、どんな情報を台帳に書き込んだのか」を、偽造や改ざんがきわめて困難な形で記録・保管し、複数の当事者(企業)の間で共有する技術です。
⽣産情報や輸送経路、輸送時の温度/衝撃等の情報をブロックチェーン上で共有すれば、内容の正当性と⼀貫性を確保することが可能となり、偽装や改ざんを防ぐトレーサビリティが実現できます。
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スマートフードチェーンシステムの実施項目
2022年度、プロトタイプのスマートフードチェーンシステムが完成したため、本格的な実証試験を開始しました。
本プロジェクトによるスマートフードチェーンの代表的な構成は以下のとおりです。
1)スマートフードチェーンシステムの概要(図 1)
⽣産者や物流倉庫、⼩売店において、輸送経路、輸送時の温度や衝撃等の情報を取得します。これらの情報をブロックチェーンに記録することで、情報の改ざん防止と情報の真正性が担保されます。
トレーサビリティ情報は、NTTデータの BlockTrace🄬 for Cold Chain*および DX プラットフォーム「iQuattro🄬」を活⽤したシステムに記録されます。これにより、⼩売店での品質担保や消費者向けの情報発信にトレーサビリティ情報が活⽤され、消費者に安⼼・安全を届けることが可能となります。
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2)RFID 温度ロガータグを活⽤した温度管理(図 2)
RFID 温度ロガータグをスマートフードシステムの情報連携基盤となるスマートフードチェーンプラットフォーム ukabisと接続し、NTTデータが開発したブロックチェーンを活⽤したスマートフードチェーンシステムへの書き込みを可能にします。
これにより、生産者から小売までの輸送経路、輸送時の温度や衝撃等の情報が取得できるようになり、消費者により安全で安心な食材を届けることができるようになります。また、温度管理が徹底されることで、フードロスの削減も期待できます。
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スマートフードチェーンシステムの今後
今後は、IT・DXによる輸出業務改革を行い、ブロックチェーン活用によるサプライチェーンのデジタル基盤連携を進めていきます。SDGsに対応したサステナブルチェーンの構築やサステナブルな製品・サービスへの転換を目指し、ICTプラットフォームによる日本産食品のブランド価値向上を推進していきます。
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DX推進ソリューション“BlockTrace®”
https://www.nttdata.com/global/ja/news/services_info/2021/031600/
BlockTraceは、株式会社NTTデータが提供するブロックチェーンプラットフォームです。BlockTraceプラットフォーム上のアプリケーションによって、日本およびグローバルにおける利用者のDXを推進しています。
BlockTraceソリューションの目的
技術革新の加速により、業種を問わないDXが進んでいます。多くの企業がビジネスの転機を迎えていますが、企業がDXを実現していくためには、急速に進化する先進技術トレンドやサービスを柔軟かつ継続的に取り入れていく必要があります。
しかし、一企業が単独で先端的なIT技術に追随するのは難しいという現実があり、DX化が遅れてしまう可能性は否めません。国内企業のDX化の停滞は、国内の競争だけでなくグローバルにおける競争においても遅れを取ってしまう可能性があります。
そこでNTTデータでは、DX推進におけるキーテクノロジーであるブロックチェーン技術に早くから注目し、2017年よりブロックチェーンのビジネス利用を推進するグローバル専門チーム(ブロックチェーンCoE)を発足させました。サプライチェーン、貿易、金融等のさまざまなユースケースのプロジェクト、PoCの経験を通して培ったナレッジ・ケイパビリティーを集約し、顧客のDXを推進するべくBlockTraceソリューションを提供しています。
BlockTraceソリューションの実施項目
BlockTraceソリューションは、以下のラインナップから構成されます。
BlockTrace for Security Token
BlockTrace for Security Tokenは、証券や不動産所有権、絵画・骨董品などの流通を促進するソリューションです。これまで証券化できなかったモノをトークン化(Security Token:セキュリティートークン)し、新たな市場を創造することや小口化による流動性の向上が期待できます。Securitize社との協業によりソリューションを展開しています。
BlockTrace for Supply Chain
BlockTrace for Supply Chainは、サプライチェーンにおける情報共有ソリューションです。ブロックチェーン上でのデータを管理・共有することにより、トレーサビリティー性の向上、データセキュリティーの担保(他社共有するデータと共有しないデータのすみ分け)、原本性の保証などが可能となります。
これにより、リコール時のトレース容易性の向上、Tier2,Tier3などの直接取引のない企業とのデータ共有、債権書類を使った新しいファイナンス(サプライチェーンファイナンス)などが可能となります。また、ビジネスコラボレーション&IoTプラットフォーム「iQuattro®(アイクアトロ)」と組み合わせることで、IoT連携機能等のサプライチェーンプラットフォームとして活用することもできます。
BlockTrace for Cold Chain
BlockTrace for Cold Chainは、低温輸送保証をサポートするソリューションです。輸送中の位置情報・温度管理情報をブロックチェーン上に書き込むことで、生鮮食品の品質状態を見える化します。
これにより、エンドユーザーに食品の鮮度を訴求することができるため、商品価値の向上を見込むことができます。また、低温輸送保証は、医薬品や化学品などのセンシティブな温度管理輸送が必要なシーンにも応用できます。
BlockTraceデータ管理プラットフォーム
BlockTraceデータ管理プラットフォームは、Hyperledger Fabric、Corda、Quorum等のブロックチェーンミドルウエアをアーキテクチャに含んだプラットフォームです。顧客のユースケースや必要とする非機能要件に応じたミドルウエア選定・アーキテクチャ選定が可能です。本来ブロックチェーンが苦手としていた、「大容量ファイルの登録」、「ユーザーごとのデータアクセス制御」も実現するアーキテクチャの提案も可能です。
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【中央集権型のデメリット/分散型のメリット】ブロックチェーンの活用事例をわかりやすく解説
BlockTraceソリューションの今後について
BlockTraceは、ブロックチェーンの特性を最大限に活用したDX推進ソリューションとして、顧客のビジネス変革および事業成長に貢献していきます。
今後は、案件を重ねながら新たなユースケース/サービスを展開していく予定です。そして、さらなるソリューションの拡充とコンサルティングからシステムの運用まで含むワンストップサービスとして提供していく予定となっています。
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まとめ 巨大プロジェクト!国や大企業が関わるブロックチェーンの国内事例について
今回は、国内で展開されているブロックチェーンの巨大プロジェクトについてご紹介しました。国家レベルや大企業レベルで、国内のブロックチェーン活用は着々と進んでいます。
こうした新しい技術革新に乗り遅れないためには、各業界や各企業においてブロックチェーン活用の可能性を検討・検証していく必要があります。しかし、ブロックチェーン活用は独特のノウハウと豊富なシステム開発経験が必要です。
株式会社リッカでは、国内の各業界や各企業におけるブロックチェーン開発を支援しています。弊社には豊富なブロックチェーン開発の経験とさまざまな業界へのソリューション実績があるため、貴社に最適なご提案が可能です。ブロックチェーン活用のご相談は、株式会社リッカまでお問い合わせください。
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