『コストを抑えてトレーサビリティを構築するには?』
『なぜ製造業はトレーサビリティを確保する必要があるの?』
トレーサビリティとは、原材料の調達から加工、流通を経て消費者に至るまでのサプライチェーン全体の製品の動きを追跡可能な状態にすることです。
トレーサビリティを確保することで、リコール時のリスクヘッジや生産コストの削減、消費者の信頼性や企業価値の向上などの多くのメリットが期待できます。
しかし、トレーサビリティを実現するためには多くの課題があり、導入コストの負担やセキュリティ面での不安でお悩みの方も多いです。
そこで今回は、製造業におけるトレーサビリティの事例とブロックチェーン活用のメリットを解説します。
この記事を読めば、コストパフォーマンスの高いトレーサビリティを構築する方法がわかります。
株式会社リッカ
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製造業におけるトレーサビリティとは?
製造業におけるトレーサビリティとは、製品を作るために必要な原材料や部品の調達から、加工・組立、物流、小売、消費者に至るまでのサプライチェーン全体の製品の流れを追跡可能にすることをいいます。
トレーサビリティを確保していなければ、どこの原材料や部品を使い、どのようにして加工・組立し、どのような経路で流通し、どのくらいの量の製品がどこで消費されたのかがわかりません。
万が一、製品に重大な問題が発覚した場合には、即座にリコールをする必要があります。しかし、トレーサビリティを確保できていなければ、製品を回収したり代替品と交換したりすることも困難です。
リコールに時間がかかってしまえば、重大な事故が多発する可能性があります。最悪の場合、取引先や消費者からの信頼が失墜し、倒産の可能性すらあり得ます。
また、グローバル化が進む現代では、海外での取引を拡大する際に、トレーサビリティの重要性が高まっています。サステナブルではない原材料や人権侵害の可能性のある労働によって加工・組立された可能性のある製品は、取引先や消費者から選ばれなくなりつつあります。
このような背景から、製造業におけるトレーサビリティの確保は、コストや労力をかけてでも達成しなければならないほど喫緊の課題になってきています。しかし、万が一の事故のために際限なくコストをかけるのも現実的ではありません。そのため、より効率的なトレーサビリティの構築が求められています。
製造業におけるトレーサビリティのメリット
トレーサビリティを確保することで期待できる主なメリットは以下の3つです。
- 迅速なリコール対応ができ、損害や被害を最小限にできる
- 生産効率が向上し、コストや不良在庫の削減が期待できる
- 取引先や消費者からの信頼が高まり、企業価値を向上できる
それぞれを解説します。
迅速なリコール対応ができ、損害や被害を最小限にできる
製造業におけるトレーサビリティの1つ目のメリットは、迅速なリコール対応ができ、損害や被害を最小限にできることです。
トレーサビリティを確保できれば、どこの原材料や部品を使い、消費者までどのような経路で流通したのかが瞬時に把握できます。すぐに回収を行ったり、代替品との交換ができたりするので、速やかなリコール対応が可能になります。取引先や消費者に与える被害や迷惑が最小限にできます。
また、問題のあるロットや製品が特定できれば、リコールによる損害も最小限に食い止めることができます。迅速かつ明確なリコール対応ができれば、取引先や消費者からの信頼を失墜させずに済みます。
生産効率が向上し、コストや在庫の削減が期待できる
製造業におけるトレーサビリティの2つ目のメリットは、生産効率が向上し、コストや不良在庫の削減が期待できることです。
トレーサビリティは原材料や部品の調達から、加工・組立、流通、小売に至るまでをすべてデジタル化することで実現できます。サプライチェーン全体がDX化すれば、業務効率が向上し、無駄なコストが削減できます。
また、DX化によって需給予測が正確になり、過剰生産による在庫のリスクを減らせます。在庫不足も事前に検知できるため、売上の機会を逃すこともなくなります。
トレーサビリティによる生産効率の向上によって、企業の売上や利益を押し上げる効果も期待できます。
取引先や消費者からの信頼が高まり、企業価値を向上できる
製造業におけるトレーサビリティの3つ目のメリットは、取引先や消費者からの信頼が高まり、企業価値を向上できることです。
トレーサビリティが確保されている製品は、出所のわからない原材料を使ったり不正に作られた部品が組み込まれたりする可能性を大幅に減らせます。また、トレーサビリティが確保されることで、製品の品質や価値に安心や信頼を感じやすくなるので、取引先や消費者から選ばれる製品が供給できます。
自社のブランドや信頼性が高まれば、厳しい価格競争から一歩距離を置き、企業価値を向上できます。トレーサビリティを確保することは、製造業で生き残るために欠かせない戦略となっています。
トレーサビリティの種類とトレース方法
トレーサビリティには2種類あります。
- チェーントレーサビリティ
- 内部トレーサビリティ
また、トレース方法にも2種類あります。
- トレースフォワード
- トレースバック
トレーサビリティの理解を深めていただくために、それぞれを解説します。
トレーサビリティの種類
チェーントレーサビリティ
チェーントレーサビリティとは、川上である原材料や部品の調達から、加工・組立を経て、川下の消費者に至るまでのサプライチェーン全体における製品の流れを把握することをいいます。
製造業はサプライチェーンの規模が大きく、関係者の数も多くなります。そのため、トレーサビリティの構築には、大きなコストと多大な労力が発生しがちです。多国間や他企業間でデータ連携をする必要があり、データをどこで管理するのか、セキュリティをどのように管理するのかは大きな課題です。また、サプライチェーン全体のコンセンサスをどうやって形成していくのかも重要な問題になるでしょう。
しかし、大規模なサプライチェーンほどトレーサビリティを実現した場合の効果やメリットは計り知れません。リコールや大規模回収などの損害を最小限に食い止められるだけでなく、日常の生産効率の向上やコスト削減効果も大きなメリットとなります。
内部トレーサビリティ
内部トレーサビリティとは、サプライチェーンを構築する一部の企業や工場の中におけるトレーサビリティを実現することをいいます。
例えば、ある製造業のサプライチェーンの一部を構成する加工工場では、さまざまな調達先から原材料や部品を仕入れています。それらは製品ごとに異なる生産ラインを流れ、各工程で組み上げられ、納品先へ出荷されます。
こうした工場内の一連の製品の流れを追跡可能にすることを内部トレーサビリティといいます。内部トレーサビリティが実現できれば、工場内で生産された製品の品質や安全性が高まり、万が一のトラブルの際にも原因の究明や出荷先の特定が迅速になります。
内部トレーサビリティが実現されることで、生産効率が向上し納品までの時間が短縮されます。工場内で働く人たちの品質やコストに対する意識の高まりも期待できます。
トレース方法の種類
トレースフォワードとは?
トレースフォワードとは、サプライチェーンの川上部分から川下方向へと時系列順に追跡することをいいます。
例えば、ある物流拠点Aで事故があり、そこから出荷された製品に破損の恐れがあったとします。破損の疑いのある製品を自主回収することになった場合、物流拠点Aから出荷された製品がどこに納品されたのか、どの消費者に届いたのかを追跡する必要があります。
トレースフォワードができれば、問題のある製品がどこに出荷され、どこで利用されているのかを追跡できるようになります。このようにある地点からサプライチェーンを川下方向へと時系列に追跡することをトレースフォワードといいます。
トレースフォワードができなければ、破損の恐れがない物流拠点BやCから出荷された製品まで自主回収することになってしまいます。自社の損害が拡大するだけでなく、取引先や消費者へ与えるイメージダウンも計り知れません。サプライチェーンの追跡ができれば、自社の損害を最小限に食い止められます。
また、トレースフォワードによって、製品がどこへ向かってどのように流れていったのかを正確に追跡できるようになれば、その情報を活かしてマーケティングに利用したり、サプライチェーンで発生しているボトルネックを見つけて解消したりすることも可能になります。
トレースバックとは?
トレースバックとは、サプライチェーンの川下部分から川上方向へと逆時系列順に遡って追跡(遡及)することをいいます。
例えば、ある顧客に届いた製品に問題があった場合、その製品に使われた原材料や部品を遡って調べる必要があります。トレーサビリティが確保されていれば、問題があった製品のロット番号から原材料や部品の調達先まで調べることが可能です。
トレースバックができれば、どの時点で問題が発生したのかが把握できます。原因が究明できれば、問題の影響を最小限に食い止めたり、二度と同じ失敗を繰り返さないように改善したりすることができます。
また、トレースバックによって消費者は自分の製品にどんな原材料や部品が使われているのかを把握することができるようになります。トレースバックによって製品の詳細情報が公開されれば、企業としての透明性が高まったり製品に対する安心感や信頼感が増したりするという効果も期待できます。
製造業におけるトレーサビリティの事例
製造業におけるトレーサビリティの事例を紹介していきます。
トレーサビリティの実現にブロックチェーンが活用される3つの理由
トレーサビリティの実現には、ブロックチェーンの活用が欠かせないものになってきています。なぜトレーサビリティにはブロックチェーンが必要なのでしょうか?
トレーサビリティの実現にブロックチェーンが活用される主な理由は以下の3つです。
- 高いセキュリティを確保しながら情報共有ができるから
- コストを抑えつつ可用性が高いシステムを構築できるから
- スマートコントラクトによって業務効率が改善できるから
それぞれを解説します。
高いセキュリティを確保しながら情報共有ができるから
ブロックチェーンを活用してトレーサビリティを実現すれば、高いセキュリティを確保しながら情報共有ができます。
ビットコインなどの暗号資産を可能にしたブロックチェーンは、データをブロックに格納してチェーン状につなぎ、さらに複数のコンピューターで分散管理することでセキュリティを保っています。一度ブロックチェーンに記録されたデータを、不正に改ざんしたり消去することは非常に困難です。そのため、国や企業を超えたネットワークでも安全に情報共有ができます。
トレーサビリティの情報は、消費者も含めたサプライチェーン全体で利用する必要があります。しかし、従来の技術で情報共有をしようとすると、悪意のある攻撃でデータを書き換えられる可能性だけでなく、中央管理者によってデータが改ざんされたり消去される可能性があります。
データ改ざんのリスクがある場合、信頼性の高いトレーサビリティが実現できません。こっそりと誰かがデータを書き変える可能性があるなら、サプライチェーン全体が疑心暗鬼になってしまいます。
ブロックチェーンに書き込まれたデータは書き換えたり消去したりすることは極めて困難です。そのため、サプライチェーン全体で安全に情報共有が可能になります。
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コストを抑えつつ可用性が高いシステムを構築できるから
ブロックチェーンを活用してトレーサビリティを実現すれば、コストを抑えつつ可用性が高いシステムを構築できます。
ブロックチェーンは中央サーバーを使わずに、ネットワークに参加するコンピューターでデータを分散管理します。そのため、サーバーが停止する心配がなく、一部のコンピューターが停止したとしても、そのまま稼働し続けることができます。
ブロックチェーンを活用すれば、データ共有のための中央サーバーを構築したり、維持メンテナンスする必要がないため、コストを抑えた開発や運用が可能です。
ただし、どのデータをブロックチェーンに記録して共有するのかをきちんと設計する必要があります。不用意にデータを保存すれば企業秘密の漏えいにつながったり、データ量が大きいとブロックチェーンに保存するための時間がかかってしまいネットワーク全体の動きが遅くなってしまったりするからです。
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スマートコントラクトによって業務効率が改善できるから
ブロックチェーンを活用してトレーサビリティを実現すれば、スマートコントラクトによって業務効率を改善できます。
スマートコントラクトとは、契約や支払いなどの処理を一定条件を満たすことによって自動実行するプログラムです。自動販売機のように、人手を介さずに自動で商品を提供する仕組みに似ています。
例えば、ある企業から部品が納入された場合に、その部品のバーコードを読み取り、問題がなければシステム上で検収処理を行うと、それと同時に支払いが実行されるようなプログラムです。
ブロックチェーンに書き込まれたプログラムは、不正に条件を書き換えたり支払先を変更したりすることはできません。そのため、ブロックチェーンのスマートコントラクトを使えば、安全に契約や支払いを実行できるようになります。
契約や支払いが自動実行されれば、紙の契約書や手作業による集計が不要になり、業務スピードが飛躍的に向上します。人件費や時間的なコストが削減でき、確認ミスや支払いの遅延なども発生しなくなります。
ブロックチェーンはサプライチェーン全体のDX化に欠かせません。トレーサビリティを実現するためのブロックチェーン活用は製造業だけでなく、食品や医薬品、貿易、宝飾品、高級ブランドなどさまざまな業界で活用され始めています。
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製造業のトレーサビリティを構築するブロックチェーン開発のエキスパートとは?
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ブロックチェーン開発によるソリューションで、製造・物流・小売・社会インフラ等、IoTデータ共有と価値流通を最適化する高い専門性を有しています。
ブロックチェーンによるトレーサビリティの実現やサプライチェーン全体のDX化は多くの業種でニーズが高まっており、リコール時のリスクヘッジだけでなく、競合との差別化や国際競争力の強化にも寄与します。
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株式会社リッカ
まとめ 製造業におけるトレーサビリティの事例とブロックチェーン活用のメリットについて
今回は、製造業におけるトレーサビリティの事例とブロックチェーン活用のメリットについて解説しました。
トレーサビリティを実現することで、
- 迅速なリコール対応ができ、損害や被害を最小限にできる
- 生産効率が向上し、コストや不良在庫の削減が期待できる
- 取引先や消費者からの信頼が高まり、企業価値を向上できる
といったメリットが期待できます。ただし、製造業のサプライチェーン全体をDX化するとなると、高いセキュリティや可用性、最適なコストパフォーマンスが求められます。
トレーサビリティの構築に活用されている技術がブロックチェーンです。ブロックチェーンを活用すれば、
- 高いセキュリティを確保しながら情報共有ができる
- コストを抑えつつ可用性が高いシステムを構築できる
- スマートコントラクトによって業務効率が改善できる
といったメリットが期待できます。ブロックチェーンを活用したトレーサビリティの構築やサプライチェーン全体のDX化でお悩みの方は、トレードログ株式会社・株式会社リッカにご相談ください。
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