ブロックチェーンで電気自動車を蓄電池として有効活用する
大都市向けにエンドツーエンドの電気自動車蓄電池とエネルギー管理ソリューションを提供しているSWTCH Energy Inc.と脱炭素化などをビジョンに持つソフトウエアエンジニアリングおよびソリューション会社のOpus One Solutionsは、ブロックチェーン技術を用いた電気自動車における蓄電池の実証実験を開始しました。電気自動車の普及拡大に貢献することを目的としています。
SWTCH Energy Inc.とOpus One Solutionsは、電気自動車の将来性を見据え、トランザクティブ・エネルギーネットワークを確立させることで、電気自動車を単なる自動車ではなく、運転されていない時の電力エネルギーを様々な事柄に活用できる可能性を秘めた車輪付きのバッテリーにすることを検討しています。
2社はパートナーシップを通じ、V2Gとブロックチェーン技術を用いて、電気自動車を分散型エネルギー資源(DER)資産として活用するトランザクティブ・エネルギー(TE)ネットワークの統合を進めています。
用語
スマートグリッド
電力の流れを供給側・需要側の双方から電力量をコントロールし最適化することができる送電網
V2G(Vehicle to Grid)
電気自動車の蓄電池に蓄積されている電力エネルギーを、スマートグリッドへ送り、蓄積した電力エネルギーを他の場所でも使用することができるようにすること
トランザクティブ・エネルギーTE:Transactive Energy
消費者同士による電力の商取引が市場で行われ、電力の最適化が行えている状態のこと
分散型エネルギー DER:Distributed Energy Resources
太陽光パネルなど、様々な場所に分散しているエネルギー
建物と電気自動車の双方向の充電を可能にする
ブロックチェーンを使った実証実験の初期段階においては、カナダのトロントのPwCタワーとIBIタワーで行わる予定です。将来的には国内および国際的な規模の実証実験が計画されています。
カナダの電気自動車などのニュースプラットフォームElectric Autonomy Canadaによると、今回の実証実験では、駐車場に止められている電気自動車と建物間の双方向の充電を可能にするために、ブロックチェーンベースのトランザクティブ・エネルギーネットワークが設置されて行われます。
双方向の電力供給の流れを生み出すトランザクティブ・エネルギーネットワークでは、駐車場で電気自動車のプラグが差し込まれた時に、駐車場施設内の電力エネルギーを利用すると、車の所有者は消費したエネルギー分が専用のアプリケーションを通じて引き落とされます。
逆に、駐車場施設内が電気自動車の電力エネルギーを使用した場合は、電気自動車の所有者に電力エネルギーを提供した分の対価を受け取ることが可能となります。
電力が双方向に取引される際の料金設定は、場所、時間帯による需要によって変動し、トランザクティブエネルギネットワークないのマーケットプレイスによって機械的に設定されます。これらの取引はブロックチェーン上で行われ、記録されます。
ブロックチェーンは、分散台帳上に複数の当事者間の取引を効率的且つ検証可能な状態で記録し続けることができます。また、ブロックチェーンは仕組み上、改ざんが極めて困難な耐改ざん性を持ちます。
さらに分散台帳上においての取引は透明性が高く、公平性をもたらすことができます。ブロックチェーンに電力取引情報を記録することで、利用者に安心を提供することが可能となります。
さらに建物と電気自動車の双方向による電力供給は、駐車場にある活用されていない車両を有効活用できる可能性を秘めています。
SWTCH EnergyのCEO兼共同創設者であるCarter Li氏は、Electric Autonomy Canadaとのインタビューで以下のように述べています。
「本来建物と顧客によるエンドツーエンドの取引においては、電力会社のような第三者が確認する情報源がなければ、顧客は支払いを受けた料金や支払ったクレジットが本当に正しいのかどうかを知ることができません。そこでブロックチェーンの出番です。ブロックチェーンは、すべての取引を追跡する自動台帳システムのようなものです。数字をごまかすことはできません。」
「最終目標は、グリッドをより効率的にし、費用対効果を高め、温室効果ガスを削減するためのバッテリーツールとして電気自動車を使用することです。」「使用されていないバッテリーリザーブストレージが豊富にあります。ほとんどの人は、10%の時間しか車を運転していません。これらの電気自動車を使用して、ピーク時のエネルギー需要を削減できます。このように、グリッドをより安定させるために使用できるものは色々あります。」
Opus Oneの戦略的成長の責任者であるHari Subramaniam氏は以下のように述べています。
「公益事業者やその他の分散型エネルギー資産の管理者にソフトウェアおよびエネルギー管理ソリューションを提供するOpus Oneにとって、このプロジェクトはトランザクション・エネルギープラットフォームを電気自動車の世界に拡大し、運輸業界での脱炭素化を可能にする可能性を表しています」
まとめ ブロックチェーンで電気自動車を蓄電池として有効活用する
今回の記事では、電気自動車を蓄電池として有効活用する事例として、ブロックチェーンベースのトランザクティブ・エネルギーネットワークをご紹介しました。
国内においては、東京電力ホールディングスなど7社が電気自動車などの蓄電池を電力供給調整に活用するV2Gの実証実験が2018年に行われ、2019年には、実証実験による結果がV2Gシステムが電力系統の安定化に寄与する見込みであると報告されています。
この実証実験ではブロックチェーンは用いられていませんでしたが、エンドツーエンドにおいて電気自動車の電力取引などが行われるようになった場合には、ブロックチェーンは最適なテクノロジーであるといえます。
二酸化炭素の排出削減が世界的な課題となっている昨今において、エネルギーを最適化するためのテクノロジーが必要とされています。ブロックチェーンを活用することによって、エネルギーを最適化できる可能性も秘められているのです。
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