ブロックチェーン×繊維サプライチェーンで環境問題解決へ

目次

ブロックチェーンを活用し環境問題を解決する繊維サプライチェーンソリューション

概要

シンガポールに本社を構え、トレーサビリティ技術のリーディングカンパニーであるFibretrace社は繊維サプライチェーンにおける統合ベンチマークツール「Fibre Impact Module (以下、FIM)」を2/12にリリースしました。
これは農家とサプライヤー、農学者などが共有し、第三者が検証した炭素排出量、水使用量、エネルギー消費量、その他の環境パフォーマンスデータを収集することができます。これまで収集できていなかったサプライチェーンにおける農場~配送中に排出される環境へインパクトのあるデータを収集・集計することで環境へ配慮した商流を作り出すことを実現します。

Fibretrace社とは

2018年に設立され、トレーサビリティのための最先端の発光顔料を用いたマーカー技術を提供しています。繊維業界を得意とし、透明性の高い繊維サプライチェーンのためのソリューションをブランドとして、サービスを提供しています。FIMはトレーサビリティとインパクトデータ測定を組み合わせたものだと同社は述べています。FIMはそのバックボーンとして温室効果ガス(GHG)プロトコルの会計基準を使用していることも特徴的です。

※温室効果ガスプロトコル(GHGプロトコル)とはGHGプロトコルは、世界環境経済人協議会(World Business Council for Sustainable and Development:WBCSD)と世界資源研究所(World Resource Institute:WRI)によって1998年に設立された団体です。GHGプロトコルはGHG排出量の国際的に認めれた算定・報告のガイドラインを開発しています。また、GHGプロトコルの国際的基準の利用の促進を行い国際環境へ貢献しています。

FIMでは何ができるか?

FIMはトレーサビリティのための最先端のマーカー技術を活用して水の使用量、エネルギーの使用量、化学物質の使用量、土壌の炭素含有量などの農場レベルの影響度合いを測定することができます。そのため、FIMは個々の農家が環境へどの程度配慮しているのかを実証することができます。

個々の農家のデータ測定された後のプロセスでは、Fibretrace社独自の発光顔料が原料繊維に塗布され、世界の繊維サプライチェーン全体でリアルタイムで追跡・監査されます。Fibretrace社によると、ブランド企業と消費者は、サプライチェーンを追跡して繊維の含有量を確認するだけでなく、農場レベルから原料繊維の影響や状態を確認することができます。

FIMのテクノロジー

Fibretraceの技術のコアとなっているのは、生の繊維(またはオプションで紡績時)に埋め込まれた特許取得済みの発光顔料です。繊維、糸、布地、完成品の顔料を識別し定量化し、暗号化されたデータをブロックチェーンと繊維とアパレルのサプライチェーンのために設計されたソフトウェアに送信することができる独自の片手で持てるサイズのFibretrace Bluetoothスキャナを使用して、サプライチェーンの各ステップでリアルタイムで追跡、検証、監査することが可能です。

FIMが注目される理由

これは業界を巻き込んだ世界初の試みであり、ブランド企業やサプライヤーが原材料中のGHG排出量を正確に把握し、検証し、追跡することを可能にすることで、企業のファッション部門や繊維部門の担当者が繊維素材を調達する際、GHG排出量を削減し、環境に優しいサプラチェーンスキームを構築することができると同社は付け加えています。

FIMは、持続可能な繊維業界を実現する手段であり、業界の今後のシナリオを変えるものと当社は位置づけています。FIMを活用することで、自社で取り組んでいる繊維サプライチェーンがカーボンニュートラル・ポジティブ・ネガティブの3パターンで評価することができるようになるからです。

※カーボンポジティブ(ネガティブ)とは環境化学で用いられる用語で、人によって行われる一連の活動を通して温室効果ガス(特に二酸化炭素)を削減した際、排出される量より多く吸収することを指す。つまり、二酸化炭素の排出量<二酸化炭素の吸収量の状態のこと。温室効果ガスの排出量>温室効果ガスの吸収量の場合はカーボンネガティブと表現される。エコ意識のある企業がカーボンネガティブな環境創出のために、宣言を行っている場合が多く欧米企業に宣言している会社が多い。

目指す未来

Fibretrace社は、オーストラリアを拠点とするコンサルタント会社であり、炭素農業のパイオニアでもあるClimate Friendly社と提携し、FIMを開発しました。そして、世界中の農家に環境へ配慮したポジティブな未来の実現に向けて直接働きかけています。

今回開発したFIMのメソッドは、絶対的な基準として、世界に承認されることを目指しており、高水準の環境保全性と持続可能な開発効果を検証しています。すべてのインパクトデータは、国際的に認められた認証機関によって第三者検証され、本メソッドの適用の有用性と、評価を実施する際の一貫性が確認されたと同社は述べています。このツールは、原料繊維の供給源から世界の繊維産業のために透明性を確保し、実際に検証されたデータに基づいて時間をかけて継続的な改善を行うためのステージを設定することが可能となります。

オーストラリア初のカーボン・ポジティブコットンファームであるGood Earth Cotton社のDanielle Statham氏は「いち農家として、私たちの農場をカーボン・ポジティブにするために多くの時間とエネルギーを投資してきましたが、Fibretrace社とFIMによって、それを世界と共有することができます」と太鼓判を押しています。

最後に

Fibretrace社は、インターネットに接続されたどのデバイスからでも安全にアクセスできるFibretraceプラットフォームに格納され、エンドツーエンドのトレーサビリティとリアルタイムの結果とデータを提供するとしています。同社の使命は「繊維サプライチェーンのすべてのメンバーが、グローバル産業の環境への悪影響を削減するための直接的な説明責任を果たす能力を持つこと」を保証することです。そうすることで、最終的には消費者が透明性を持った持続可能なサプライチェーンを選択して購入する機会を提供していく未来を実現することを目指しています。

同社の取組は、世界の繊維業界の課題解決に向けた取組です。この取組が普及することで食品のトレーサビリティのように繊維のトレーサビリティが新たな価値として商品に付加される上に、環境に配慮できない企業はサプライチェーン上から淘汰される可能性がでてきます。環境のクリーン化、業界のクリーン化、ユーザーへの新たな価値提供と様々な効果が期待される本取組には今後も注目です。

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