シンガポール、ブロックチェーンによる食品安全システムに挑戦
2020年8月27日にシンガポールのveriTAGは、シンガポールの食品庁(SAF)と航空宇宙、電子機器等広い分野のサービスを行うST Engineeringとの提携を発表しました。
今回の提携により、東南アジアの食品安全危機に取り組むためのブロックチェーンベースの食品安全システムが構築される予定です。
シンガポールが食品にブロックチェーンを使う理由
シンガポール食品庁は、食品の90%以上を他国から輸入していることを踏まえて、食品の製造から販売時点までを追跡するためのブロックチェーンベースのシステムを開発するために、veriTAGおよびSTエンジニアリングと提携しました。
2020年7月11日Food Safety Newsによると、シンガポール食品庁は2019年4月から12月の間だけでも3,825個の果物や野菜を検査した結果、そのうちの約13%にあたる、491個が科学的な理由や、農薬の残留物質が許容数値を超てえたいたことが原因で出荷の規準を満たすことができず、不適合となっていました。
今回不適合が多かった果物や野菜は消費者自身がお店から買い、直接口する機会が多いカテゴリーとなり、検査結果でも数値の割合が高いことから、同カテゴリーの食品には危険なものが多く含まれていることが明らかになりました。このことを踏まえ、シンガポール食品庁はブロックチェーンによる食の安全性の確保を重要視することとなりました。
veriTAGのブロックチェーンプラットフォーム
veriTAGはNFCやQRコード技術を使ったクラウドサービスに特化している開発会社であり、NULSの ブロックチェーンと TradeTrustを使用して開発された食品輸入プラットフォームのVeriHUBを有しています。
NULSの ブロックチェーンは、オープンソースのエンタープライズ向けの適応型ブロックチェーンプラットフォームです。NULSは分散型取引所と支払い処理業者にとって合理的なプラットフォームであり、クロスチェーンコンセンサス
方式を使うことで、NULSのエコシステムを、外部エコシステムや他のブロックチェーンと接続し、情報と資産の流動的な環境を提供することができます。そのため、BTCやETHなどの外部のブロックチェーンからNULSチェーンに資産を転送することが容易にできます。
TradeTrust
TradeTrustは、シンガポールのInfoComm Media Development Authorityの支部であるSG Digitalによって作成された、国際規格のガバナンスと法的な枠組みに基づいてフレームワーク等が定められた貿易プロセスプラットフォームです。分散型台帳技術を使用して作られており、貿易におけるやり取りを電子文書化させ、グローバルな貿易取引を効率化することが期待されています。
veriTAGは、NULSのブロックチェーンと、TradeTrustを融合させ、VeriHUB食品輸入プラットフォームを開発しました。
veriHUBは食品の製造から、販売までを追跡することができるプラットフォームです。
製品のサプライチェーン情報、リソース情報、製品の認証に関する情報をブロックチェーン上に記録し、追跡することができます。蓄積された情報はQRコードから確認することができます。さらに、veriTAGは、QRコードが二枚重ねになっており、上に重なっているQRコードを剥がすと販売済みまたは使用済みと見なされる機能を備えています。また、製品の売上情報も管理することができ、顧客管理までも販売者側が管理できるよう設計されています。
NULSのコア開発者であるMario Blacutt(Berzeck)は、次のように述べています。「このパートナーシップは、ブロックチェーン技術が本当に社会的利益となり得ることを示し、企業の幅広いユースケースを実証しています。」
昨今はWalmartやDoleなどの企業を始めとしてグローバル企業が続々とブロックチェーンを取り入れ、食の安全性を確保しています。シンガポールのように食の安全性に懸念がある国、輸入品に頼っている国や島が、ブロックチェーンを大々的に取り入れるケースは今後増えていくかもしれません。
日本国内も食料自給率が減少傾向にあるため、今後輸入品の安全性の確保のためにブロックチェーンを取り入れる可能性はあるかもしれません。
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