アパレル業界は、環境問題と労働問題という大きな2つの課題を抱えています。
スウェーデンの企業が開発したPaperTaleは、アパレル業界が抱える環境問題と労働問題をブロックチェーン技術を用いて解決しています。地球にやさしい持続可能な環境作りに貢献するブロックチェーンプロジェクトです。
PaperTaleにより、消費者は服に付けられたスマートタグを読み込むだけで、服の生産工程に関する情報や環境への影響を数値化した情報、労働情報など様々なデータを簡単に確認することができます。
この記事では、アパレル業界が抱える問題点とその解決策として活用されるブロックチェーン技術について紹介していきます。
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アパレル業界が抱える問題点とは?
華やかな印象のアパレル業界ですが、大きな問題点を抱えています。その問題点とは、
- 環境問題
- 労働問題
の2つです。
それぞれを解説していきます。
アパレル業界の環境に関する問題
アパレル業界が抱える1つ目の問題は、環境に関する問題です。
Tシャツ1着を作るためには、2720リットルと膨大な水が必要とされています。他にも染色をする際に使用される水の量なども含め、有限な資源である水を大量に消費して洋服は作られています。
服を染色するときに発生する重金属や環境ホルモン等の化学物質が海へ放流され、海や川を汚染しているというレポートがUnited Nations Global Compact※により2015年発表されています。
海に関する汚染はこれだけではありません。洋服を洗濯するごとに細かくなった化学繊維は、5mm以下のマイクロプラスチックと呼ばれる細かい粒子となり、海へ放出され続けています。
そして激しく移り変わる流行により、洋服は毎年大量に製造され、大量に廃棄されています。
このようにアパレル業界は様々な環境問題を抱えています。
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アパレル業界の労働に関する問題
アパレル業界が抱える2つ目の問題は、労働に関する問題です。
世界中には、推定で3600万人が『現代の奴隷制』と言える状態に置かれています。また、強制労働をさせられているのは大人だけではなく、世界中で多くの児童も強制的な労働を強いられています。
こうした『労働力』は綿栽培などに向けられています。生産された綿の供給先は、世界中のアパレル業界なのです。アパレル業界による労働力の搾取が行われていると言っても過言ではない状況だったのです。
長時間労働で低賃金という現状があり、染色のために危険な薬品を扱う場合もあります。
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アパレル業界の課題解決事例
環境や労働に関するアパレル業界の課題に、様々な企業が解決に取り組んでいます。
ユニクロなど日本人に馴染み深いブランドを展開するファーストリテイリングでは、環境負荷低減への取り組みとして、製造する素材工場が昼用とする水やエネルギーの使用料に対し削減目標を掲げ、目標の達成を着実に実現しようとしています。
ブロックチェーン技術を利用して環境・雇用問題を解決したPaperTale
アパレル業界が抱える課題の解決事例は、他にも様々なものがあります。しかし、こうした企業の課題への取り組みを商品から知るすべは今までありませんでした。
PaperTaleなら、服を作る企業が環境問題や雇用問題に対して正しく取り組んでいるのかどうか、消費者が簡単に確認できるようになります。
PaperTaleは、服につけられたスマートタグをスマートフォンで読み込むことで、服に関するあらゆる情報を確認できるスウェーデン発のブロックチェーンプラットフォームです。
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服を作る工程がすべてブロックチェーンに記録される
PaperTaleプラットフォームは、工場とサプライヤー、労働者、消費者のそれぞれをブロックチェーンプラットフォームで繋ぎます。
すべてのトランザクションと、検証済みのデータ情報をブロックチェーンに蓄積していきます。
PaperTaleプラットフォームには服の製造に関する工程が記録され、管理の透明化が実現されています。
ブロックチェーンプラットフォーム内に記録される製造工程内容
- 綿や竹や材料などすべての注文はスマートコントラクトを通じて注文、受注、支払いまで行われる
- 縫製工場に到着するまでの素材の経路や製品の開発も、スマートコントラクトにより処理される
- 生地が衣服工場に到着後、最初にPaperTaleタグを衣服に縫い付けられる
PaperTaleタグが縫い付けられてからは、その服に関する情報が継続的に記録され続け、1着ごと工場内での正確なデータが記録されていきます。
PaperTaleは製品を作る過程でどれくらい環境に配慮ができているのか確認ができる独自の環境計算器技術を有しています。そのため、サプライチェーン内の下請業者で使われている材料や節水の実施状況などの生産過程も記録。一般的な生産手法と比較して、どれだけ水とCO2排出が削減されているのかを計算し、数値化したものもブロックチェーン上に記録しています。
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労働者情報が確認されてから服が出荷される
服を出荷する際には、工場で働いている従業員が不正に雇われていないか、雇用契約がきちんと行われているのか、などの労働に関する条件がチェックされます。適正な労働条件を満たしていないと、スマートコントラクトにより出荷ができない仕組みになっています。
雇用に関する出荷時の条件一覧
- 各衣服の労働者の給与は法律に従って支払われている
- 各衣服のすべての労働者は雇用契約を結んでいる
- すべての労働者は給与明細を受け取っている
従業員の労働に関する情報をブロックチェーンのスマートコントラクトに組み込みます。ブロックチェーンによって管理することで、作られた服が奴隷制度や児童労働によるものではなく、雇用契約の安全が確保できていることを消費者に証明できます。
PaperTaleはこれだけではなく、労働する人にスポットをあてたサービスを提供しています。PaperTaleプラットフォームには消費者が商品が良いと感じた気持ちを、商品を作った労働者にチップやスマイリーとして送信することができます。
PaperTale教育クラウドファンディングプラットフォームでは、労働者をサポートするプログラムへの支援ができる機能も備わっています。
PaperTale を開発したスウェーデンのPaperTale ABは、大規模なサプライチェーンでの実装を通じてPOC(概念実証)をするためにパキスタンの衣料品工場と提携して実装をしました。
PaperTaleプラットフォームは、すべての業界の工場が生産プロセスの中で実装できるように開発されています。
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まとめ ブロックチェーンがアパレル業界の問題を解決
今回は、アパレル業界が抱える環境や労働に関する問題をブロックチェーンが解決する事例を紹介しました。
資源を大量に消費し商品を安く提供し続ける企業よりも、環境や労働問題に配慮している企業のほうが人々の支持を集める時代になってきています。
世界の資源を消費するだけではなく、限られた資源の中でどのように持続的な活動につながるパフォーマンスを行うかを考えることが重要です。情報の透明性の高さ、スマートコントラクトなどの機能を持つブロックチェーンテクノロジーは、新しい時代に対応するためのソリューションとして非常に有効です。
(※Raybin, A (2009), Water pollution and textiles industry as cited in The Sustainable Academy (SFA) and The Global Leadership Award in Sustainable Apparel (GLASA) (2015), The State of the Apparel Sector – 2015 Special Report: Water)
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